不思議な羅針盤

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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784579304349

感想・レビュー・書評

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  • 雑誌「ミセス」に連載されていたエッセイ。
    梨木さんらしい草花への愛情溢れる感じはとても良かったし憧れる。私も庭にミントを植えてみようか…。
    刺激的な出来事や日常の波などはないので、一気に読むには多少辛さを感じる。前にも梨木さんのエッセイを読んで思ったが、1日に少しずつ読むのが良い本だなと。文庫になったら買おうと思う。
    カラス好きな友達にもプレゼントしたいな。

  • 梨木香歩さんのエッセイです。
    梨木さんの文章を読むと、いつも胸の中に清い風が吹きこんできます。
    そのとき自分の抱えている決して綺麗とは言えない種類の感情に目を向けて、自ずから反省するよう促してくれる。
    そんな自己浄化を助けてくれる風が吹くのです。
    植物や動物を愛しむ。一期一会の交流に喜びを感じる。
    慎ましやかで、それでいて凛として。

    読み終えたあと、心がすっきり。視界がクリアになったような。デトックス効果大です。

  • 実は梨木さんのエッセイを読むのは初めて。
    この前に読んだ『僕は、そして僕たちはどう生きるか』のテーマにも通じる内容もあり、梨木さんの考えや、何を大切にしているのかという価値観が、心に響きました。

    印象に残った文をいくつか引用します。

    “大好きな場所をいくつか持っていることはいい”

    “できるなら風通しの良い、おおらかな群れを作るための努力をしたい。個性的であることを柔らかく受け容れられるゆるやかな絆で結ばれた群れを”


    梨木さんのように、自分の価値観を信じて、世の中のものごとを見ていきたいと感じました。

  • 梨木香歩さんといえば有名な作品は『西の魔女が死んだ』。
    私も大好きな作品で、そこからいくつか彼女の本は読んでいるのだけれどもエッセイは初。
    ちょうどジュンク堂で彼女の本が飾ってあるセクションがあって
    (彼女は鹿児島出身だったのね。というのもこのエッセイで知って、納得)
    そこでなんとなくこのタイトルと、青い空と草という帯に惹かれて手に取った。
    立ち読みしてみると「あ、これはゆっくりと読みたいな」と思ってさっそく購入。

    このエッセイは雑誌『ミセス』に連載されていたものをまとめたもの。
    (年齢的にはうちのママ年代の方たちかな)
    同年代の人とおしゃべりするような気持ちで書いた、とあったけれど
    梨木さんの丁寧な生活が垣間見れて、とても心穏やかに読むことができた。
    草花のこととか、鳥のことだったり、彼女が小さい頃の話だったり。
    ひとつひとつのエッセイを読みながら、
    なるほどこういう人だからあんな風な作品が生まれるのか、
    と、妙に勝手に納得してしまうエッセイ集だった。

    距離を移動する、それだけで我知らず疲労してゆく何かが必ずあるのだ。このマクロにもミクロにもどんどん膨張している世界を、客観的にわかろうとすることは、どこか決定的に不毛だ。世界で起こっていることに関心をもつことは大切だけれど、そこに等身大の痛みを共有するための想像力を涸らさないために、私たちは私たちの「スケールをもっと小さく」する必要があるのではないだろうか。スケールを小さくする、つまり世界を測る升目を小さくし、より細やかに世界を見つめる。―― 9.「スケール」を小さくする より


    確かにグローバル化している現代、色んな情報が溢れていて
    FacebookやらTwitterやら色んなツールですぐに世界に発信できる。
    その面白さはもちろん感じているけれど、同時にそこに頼りすぎている部分もある。
    まずは自分の手の届く範囲に気配りを。
    梨木さんの言葉を借りるなら"より細やかに世界を見つめる"ということも大事だ。

    15章に特別編として"「魔女」はきっと、直感を正しくつかう"という章があるのだけど
    この章が私的にはなんだか好きだった。

    もう、だめだ、と思ったら逃げること。そして「自分の好きな場所」を探す。ちょっとがんばれば、そこが自分の好きな場所になりそう、というときは、骨身を惜しまず努力する。逃げることは恥ではない。津波が襲って来るとき、全力を尽くして逃げたからといって、誰がそれを卑怯とののしるだろうか。逃げ足の速さは生きる力である。津波の大きさを直感するのも、生きる本能の強さである。いつか自分の全力を出して立ち向かえる津波の大きさが、正しくつかめるときが来るだろう。そのときは、逃げない。―― 15.「魔女」はきっと、直感を正しく使う より


    梨木さんが人間関係にがんじがらめになっている子供たちにいってあげたい言葉
    というのに「シロクマはハワイで生きる必要はない」というのがあった。
    そこでどうしても生きていけなかったら、逃げてもいいのだよ、ということ。
    でも、それだけじゃない。
    いつか自分できちんと見極められるようになった時は、逃げない、ということ。
    優しさとともに、たくましさを感じる言葉に、なんだか私も慰められた。


    とにかく素敵なエッセイの集まりで、ひとつひとつじっくりと読ませてもらった。

  • 近づき過ぎず、取り込まれない。
    ゆるやかにつながる。
    近づき過ぎず遠ざからない。
    スケールを小さくする。

    各省のエピソードもさることながら、つけられたタイトルも味わい深い一冊でした。

  • 「西の魔女が死んだ」「家守綺譚」などで知られる梨木香歩のエッセイ集。彼女の視点が垣間見えました。
     私はとくに「見知らぬ人に声をかける」が良いなと思いました。この作品はわたしたちが日々感じている日本人的な社会との距離感の取り方を、彼女なりの視点で爽やかにまとめています。時々知らない人から道を聞かれたり、逆に困っている人を見つけて話しかけること。それを著者は「賭け事」だと表現しているのが面白いと思いました。
    「見知らぬ人に声をかけるのには勇気がいる。声をかける人を選ぶときはひとつの賭けでもある。たまに負けたって、また賭けよう。相手が賭けてきたら、勝たせてあげよう。話しかけてきた見知らぬ人と、一瞬でも楽しい会話が交わせたら、それは二人の勝利である。」
    「二人の勝利」(この場合はきっと、知らない人と共有したちょっと秘密で満ち足りた時間)を、前向きに捕まえていこうという考え方。積極的ではないけれど社会に対して前向きに心を開いていて、この考え方で日々を過ごせたら素敵だろうなと感じました。

  •  梨木さんのエッセイは静かに深く染みる。
     話題としてはいつものごとく、植物や鳥をはじめ、生き物の話が多い。生きるということ。生きてゆく中で自分や他人とどう向き合ってゆくかということ。自分の生きる社会を、あるいはこの世界を、どうとらえ、どんなふうにつきあってゆくかということ。
     ひとが豊かに生きるというのはどういうことなのか、というのを考えさせられる。日々を生きる中で度々感じる息苦しさ、生きづらさを、的確に、けれど柔らかく言葉に落とし込まれている。梨木さんが書かれる「こういう風に生きられたらいい」という理想(理想という言葉が強すぎるなら、願いといってもいい)には、切実な共感を覚える。
     人混みの中で無意識に自分をガードするためにつくる壁、遮断のことを「プラスチックの膜」と表現されていて、なんだかものすごく納得してしまった。知らない人に話しかける、ということの敷居の高さ。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「梨木さんのエッセイは静かに深く染みる。」
      素晴しいですよね!
      先日「エストニア紀行」を読んで、梨木香歩に惚れました。次は「鳥と雲と薬草袋」...
      「梨木さんのエッセイは静かに深く染みる。」
      素晴しいですよね!
      先日「エストニア紀行」を読んで、梨木香歩に惚れました。次は「鳥と雲と薬草袋」を読む予定。その次は此の本しようかな、、、
      2013/06/20
    • HAL.Aさん
      いいですよね~。何回でも読み返したくなります。挙げておられる三作とも大好きです。あと「水辺にて」も、とてもよかったですよ!
      いいですよね~。何回でも読み返したくなります。挙げておられる三作とも大好きです。あと「水辺にて」も、とてもよかったですよ!
      2013/06/20
  • 梨木香歩さんのエッセイは、いつも自分では言葉にならないのだけど、何となく感じている違和感を、美しく冷静な文章にして示してくれる感じです。

    竹が同じ地下茎から生えてくるクローンなのは知っていたけど、それをみんなが同じ方向を向き、一つの方向へ深化していくとは考えたことがなかった。竹林が怖くなりました。

    世界は多様性があるからこそ、豊穣である。みんなが同じ価値観で同じ考えで進んでいく群れは、選択肢が少なく、迷った時には答えがすぐに出るのだが、きっととても居心地が悪い。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「美しく冷静な文章にして示してくれる」
      優しい感じがするけど、通さなきゃならない筋は通すって感じが好き。この本も良さそうだなぁ、、、
      「美しく冷静な文章にして示してくれる」
      優しい感じがするけど、通さなきゃならない筋は通すって感じが好き。この本も良さそうだなぁ、、、
      2013/07/12
  • 日常にちょっとした刺激が欲しい時はミステリとかホラーとかを読むけれど、それを読むのすら辛い時は女性作家さんのエッセイが読みたくなる。
    この本はまさに「考えるの疲れちゃったなあ」と言う時にぴったりの本。
    「ちょっと考えるのをやめて、見て、聞いて、感じてごらん」と言ってくれているような感じが、最近の気分にぴったりだった。
    普段の生活が少し色づいて見える、そんなエッセイ。

  • 著者の真骨頂である草木、鳥に関してのエッセイは三分の一くらい。
    残りは彼女の感性の源が判るようなエッセイが続きました。
    自身の作品について、感銘をうけた本についてなどアカデミックな分野から
    日常生活を送る上でのこだわりや、物事の捉え方など
    彼女を少し身近に感じられるエッセイも多く、興味深くあっという間に
    読んでしまいました。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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