アナタノキモチ (文研じゅべにーるYA)

著者 :
  • 文研出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784580825727

作品紹介・あらすじ

ある夏の日、母親に置き去りにされた5歳のハルくん。わたしの家に引き取られた彼には、障がいがあった。空気を読めない。人の気持ちもわからない。でも、わたしはどうだろう。本当に、人の気持ちがわかっているのだろうか―。

感想・レビュー・書評

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  • YA向けなのでとても読みやすく、発達障害の気持ちや関わる家族についてのことが丁寧に描かれている。

    人の心の中は、どうしてこう見えにくいんだろう。
    友だちでも。
    家族でさえも。
    ーーー人の気持ちがわからないのはハルくんだけだろうか?


    二世帯住宅に住むひよりは両親と弟と2階で暮らし、1階には祖父母がいる。
    ひよりが5歳のときに同じ歳のハルくんが来た。
    ハルくんのママは、ひよりのママの妹らしくて私はいとこになるようだ。
    ハルくんは、なにも話さず、白いご飯と卵焼きしか食べないし、3歳の弟より赤ちゃんだった。

    プロローグとエピローグは、ハルの気持ち。
    ハルくんが来てからの出来事をひよりとおじいちゃんが交互に語っている。

    この2人の気持ちがとてもよく表現できていて、場面が目に浮かんでくるようだった。
    小学高学年から中学になるひよりの揺れ動く気持ちもとても伝わってくる。
    おじいちゃんの言動を見ては、何年か後には夫がこんな感じになるのかな…などと思うとやりきれない寂しい気持ちにもなる。

    あの歌の歌詞がわかったとき…
    ハルくんがパニックを起こして泣いて繰り返していた謎の言葉。
    「セッツー、セッツー、セッツー、」

    「たいせつ」だと。


    エピローグで語るハルの気持ちはとても素直だ。
    そして、あの人のことを思い出している。
    そのひとことひとことが心に沁みた。



    あの人は今、どこにいるのでしょう。
    なにを考え、どんな気持ちでいるのでしょう。
    わかりません。けれど
    頬に当たるセーターのちくちく。
    低くかすれた声。
    いつまでも寝ないぼくのそばで、よんでくれた絵本。それはちゃんと覚えているのです。
    あれもぼくの「あんしん」でした。
    くりかえし聞いた、あの歌も。



    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

    ミア ポサダ/藤田千枝訳
    『たまごのなかにいるのはだあれ?』

    たかどのほうこ
    『紳士とオバケ氏』

    FANKY MONKEY BABYS
    「大切」

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

















  • ある日突然会ったこともない、存在すら知らなかった叔母の子ども、つまりいとこのハルくんが家にやって来る。しかもハルくんは自閉症で、家族はなかなかに大変なことになる。
    がみがみ言うだけ、典型的昭和男の祖父の存在もなかなかに厳しい。
    幼い頃から奔放な妹と、厳しい父親の板挟みになってきた母親、家の事を何もかもこなすスーパー祖母も心のなかに屈託がなかったわけではない。
    みながそれぞれに複雑な思いを抱え、そしてどこまで「相手の気持ち」になれるのか。
    それは"自閉症"で"人の気持ちが分からない"ハルくんの"障碍"とどれほどの差があるのか。
    いろんな事を問いかけてくる作品だった。

  • ひよりはお父さん、お母さん、弟、おじいちゃん、おばあちゃんの6人で暮らしていたが、ある日、母親に捨てられた、いとこのハルくんと一緒に暮らすことに。障害のあるハルくんは人の気持ちがわからない。でも、障害がない人はみんな人の気持ちをちゃんとわかっているのだろうか。
    家族であっても、なかなかわからないが故に気持ちがすれ違う。大切に思っているのに伝わらない。自分は相手や家族の気持ちをわかっているのかわかろうとしているのか、考え直すきっかけになった。

  • タイトルも表紙のデザインも、切り取り方も視点も、フックもいい。
    ちょっときれいにまとまりすぎの感があるけど、こんな風にセンス良くかかれたこの手のお話は、なかなかないなあ。

  • こうした内容の本は、児童書というポジションを取るととたんに道徳本みたいになると感じてきたけど、ハルくん本人のことばから始まり、ひより、おじいちゃんが代わる代わる語るそのキモチは手に取るようにわかるホンモノだった。
    人の心は覗くことができないけれど「わからない」から始めることは自分を変えると素直にそう思える良書だった。

  • 母に捨てられた自閉症の少年がいとこ家族に引き取られてからの話。周りの様々な人物の視点からつづられる。高学年~YA向け。

  •  ひよりの家には、いとこのハルくんが同居している。面倒をみているおばあちゃんが言うには、ハルくんは人の感情が分らないらしい。ハルくんのお母さんはハルくんを捨てて行ったとおじいちゃんが怒って言っていた。

     ハルくんの気持ち、ひよりの思い、おじいちゃんの思いが三人の視線から綴られる。

  • 最強おばあちゃんとハル君。ホントの家族。

  • 両親、弟、祖父母と二世帯住宅に暮らすひより
    いとこで同い年のハルくんが母に捨てられ、家にやって来たのが5歳のときだった

    ハルくんは人と気持ちを通じ合わせてコミュニケーションをとるのが苦手な男の子

    世話をするのはもっぱら祖母で、頑固者の祖父はハルくんが理解できず怒鳴ってばかりいる

    人の気持ちが読めないハルくんが巻き起こす騒動に家族が翻弄され……

      人の心の中は、どうしてこう見えにくいんだろう。
      友だちでも。
      家族でさえも。

    微妙なバランスで成り立っていたところに“ハルくん”という異分子が投げ込まれた家族

    お互いの気持ちに向き合い、見つめ直し、理解し合っていく姿がひよりと祖父の視点で交互に語られる

    “コミュニケーションの根幹を正面から捉えた著者渾身の1冊”──出版社サイト「編集者より」

    『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞(2019年度)を受賞した安田夏菜の最新書き下ろし

    このところ元気な「文研じゅべにーる」に続く「文研じゅべにーるYA」レーベルから、2023年10月刊

    発達障害の子の描写にリアリティ

    Cコード8393で“YA”分類だが、どの年代の読者にも響く物語──年配の男性は祖父の言動に共感できるにちがいない

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著者プロフィール

兵庫県西宮市生まれ。大阪教育大学卒業。『あしたも、さんかく』で第54回講談社児童文学新人賞に佳作入選(出版にあたり『あしたも、さんかく 毎日が落語日和』と改題)。第5回上方落語台本募集で入賞した創作落語が、天満天神繁昌亭にて口演される。『むこう岸』で第59回日本児童文学者協会賞、貧困ジャーナリズム大賞2019特別賞を受賞。国際推薦児童図書目録「ホワイト・レイブンズ」選定。ほかの著書に、『ケロニャンヌ』『レイさんといた夏』『おしごとのおはなし お笑い芸人 なんでやねーん!』(以上、講談社)、『あの日とおなじ空』(文研出版)などがある。日本児童文学者協会会員。

「2021年 『セカイを科学せよ!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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