装飾する魂: 日本の文様芸術

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 67
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582206616

作品紹介・あらすじ

世界文様と日本の魂。極西のケルトから、極東の日本へ。気鋭の美術史学者が初めて挑む日本の表層=装飾世界。

感想・レビュー・書評

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  • 写真を見ているだけで楽しい。
    文章自体は硬派だけど、いたずらに難解なわけではなく、具体例も豊富でわかりやすい。

  • 彼女の話をきいているうちに、数年前に買って読みかけのまま放ってある本のことを思い出して、また、読みはじめた。<br><br>「<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4582206611/sixapart-vox1-22">装飾する魂</a>」鶴岡真弓(平凡社・1997)<br><br>いきなり、イントロが三島の定義する「装飾」の話で、彼が丹念に意識的に構築した自宅のインテリアを例に、表象と内実のdichotomy、それをカラダという表面と精神という内面の関係として体現しようとした彼の美学という切り口から、大きなテーマに入っていく。<br><br><font color=#cd5c5c><br>世間の常識は、「装飾」には「内面の反映がない」、「装飾」は「意味を伝えない」、「装飾」には「精神の奥行きがない」という・・・略・・・肉体という「表面(仮面)」から存在に向うことによって・・・近代人の「主体」への信仰の脆弱、近代人の内面や精神といったものの無意味さが、装飾の主張によって、逆に照らし出されるのである</font><br><br>・・・略・・・<br><br><font color=#cd5c5c>「装飾」に魅了されるという事態は、「奥行き」や「中身」に真実が隠れているという信仰を斬り捨てて、ものの「表面」や「表層」から世界の秘密を解きあかそうという態度であるに違いない。・・・略・・・われわれはこの世界を、単一の意味に包摂された不動の実体としてつかまえることなどできはしない・・・世界は、表象の質感から類推されるものにすぎないはずだった。</font><br><br>長い引用になってしまったが、この部分を読んで、このあいだからひっかかっていたことの輪郭が少しはっきりとしてきたように思う。<br><br>先日、ある写真集に編集者として関わった人が、被写体である役者の「内面をひきだす」ことに写真家が成功したことに、大きな達成感を感じているというように話すのをきいた。<br><br>実際に写真集を見ていて、役者が「ガードをおろした瞬間」の前と後の写真を見分けることは、私にはできなかった。それ以上に、自分の肉体を表現の媒体とする役者にとって、舞台に立つ自分のカラダに表現されるもの以外になにがあるのだろう、という疑問の方が強く残った。<br><br>アーティストにとって、自分の作り出した作品である表象以外の、「生活」なり「内面」なりという部分があるとして、それを他者が記録することに、それが「ドキュメンタリーである」という以上にどういう価値があるのだろう。<br><br>カラダに刻み込まれている装飾(あるいは表象)そのものがあらわす、なにか。<br><br>目下私はそちらの方に強く惹かれている状態だと思う。

  • 2011/5/6 使用図書

  • 非常にレトリカルな文章。しかし、それは文章テクニクをひけらかすためではなく、筆者の描く装飾とパラレルな関係にある。引用した部分の「装飾」を「レトリック」に置き換えることによって筆者のレトリカルな文章の根拠が見える。図像を貫く古今東西の幅広く深い知見によって、一つの主題が時間的空間的に大きく捉えられる。すばらしい。

  • 未読

  • 『ケルト 装飾的思考』の著者による日本の文様についての考察。図版が美しいです。
    「ケルズの書」などケルト文化の生んだ豊穣な装飾にも圧倒されますが、省略や抽象化で研ぎ澄まされた日本の装飾も素晴らしい。
    「飾」という字は人が布でぬぐって清めるという成り立ちを持つ、というくだりが印象に残っています。

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著者プロフィール

多摩美術大学教授・同芸術人類学研究所所長。専門はケルト芸術文化とユーロ=アジア装飾デザイン史研究。早稲田大学大学院修了。アイルランド・ダブリン大学留学。処女作『ケルト/装飾的思考』でケルト文化・芸術理解の火付け役に。著書に『装飾する魂』『ジョイスとケルト世界』『図説 ケルトの歴史』『京都異国遺産』『阿修羅のジュエリー』『すぐわかるヨーロッパの装飾文様』など多数。映画『地球交響曲第一番』でアイルランドの歌姫エンヤと共演。火曜日生まれ。

「2019年 『鶴岡真弓対談集 ケルトの魂』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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