和解のために 教科書、慰安婦、靖国、独島

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 55
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582702651

作品紹介・あらすじ

日韓の不信が生む悪循環を脱し、自省と寛容による和解をさぐる。韓国からの呼びかけ。

感想・レビュー・書評

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  • 解説に書かれているとおり、著者は確かに火中のクリを拾っている。
    それだけで、労作といえる。

  • 2008年のわたしが一番体調の悪いときに、新聞を読んで知った本。そのときほとんど読んでいたのだが、最後までは読んでいなくて、今回、最初から全部読み直した。

    書いてあることについてはまさにその通りで、でもこんなに論理的に、そして明解に書いてある本はなかなか見たことがなくて、そこの部分には「すごいな」と感じるんだけれど、果たしてこれ、日本人が読んでよかったものなのかと思いつつ読んだ。その点は上野千鶴子がピシッと最後に書いてるんだけどね(笑)

    ただ一つ反面教師にしたいのは「強者としての被害者」についてで、結局当事者が強いとわたし自身も思っているけれど、その当時者性は振り回してはならない、ということ。そのことは強く感じた。

    あともう一つ。戦争で国のために死んでいった人たちには感謝の気持ちではなく謝罪の気持を持つ、それは広島の慰霊碑に書いてある「過ちは繰り返しませんから」これと共通しているんだなということを感じた。

  • 日本にも韓国にも論点となるべき所を的確についている。韓国側で評価されないのが、著書の内容と照らし合わせても、非常に残念である。感情に流されやすい両国関係を知る上で必読の一冊。

  • 久々に小説以外を。私の友人で、朝鮮学校出身の在日コリアンなのに在日コミュニティの閉鎖性を批判する妙なヤツがいて、その人が「重要なのは、双方が妥協することなんだ」と言っていたのを本書を読んでいて思い出した。たぶん、その彼に言わせると朴裕河氏は相当に「中立的」な人だという風になるのかもしれないのだけれども、それはあくまで彼の微妙な発話の位置に影響される部分もあって、少なくとも自分自身が“純粋な”日本人であると認識する私たちは、間違っても本書を「中立」的な意見であると捉えてはいけないだろう、という話は巻末で上野千鶴子が述べている通りだと思うので、興味のある人は是非読んでいただきたい。とりあえず、細部の歴史認識に関しては流石に認識を異にする部分もあったけれども(私の知り合いの研究者はそれを「大問題」と言っていたけれど)、全体的に日本人にとってすごく耳障りのいい本だと思う。やっぱり元々韓国国内の読者に向けて書かれた本なので、若干韓国における従来の認識を否定する傾向が強い(というところが上記の上野千鶴子氏の解説に繋がってくる)。今月の『論座』(2008年3月号)に筆者のインタビューが出ていて、それを読む限り韓国国内での評判は予想に反して概ね良好なものだったようである。ただ、筆者曰く「それって、要するに本当に読んで欲しかった人は読んでないって事ですよね。苦笑」ということで、確かにまぁ本書の性格上その指摘は正しいだろうなぁと思うと、問題解決の難しさを酷く痛感させられる。でもまぁ、理想がどういう状態かということはさておくとして、恐らくはこういう努力を双方がしていくことが、「解決」というゴールに届く近道になるのかなぁ・・・という漠然とした期待は抱かせるものはある。まぁ、それに対する批判というのも、当然にあるわけだがね(ちなみに、筆者は大江健三郎をハングルに訳したりしているようで、微妙に1個前の書評から続いてたりもする。ただ、大江の翻訳をする人なら、もっと戦後日本社会論に明るくてもよかったんじゃないかなぁと思った)

  • 2007年度の大佛次郎論壇賞作品であり、日韓関係は日中関係と同じような問題を抱えているということで読んでみた。一方的な日本批判のみならず、自国批判も行っており非常に公平性があると感じた。

    以下印象に残った言葉を引用する。
    「いわば不信と誤解が問題を実際以上に大きくし、それだけ解決を困難にしているのである」

    「被害を強調しようという被害者の欲望と、被害を縮小しようとする加害者の欲望は、常に比例する。重要なのは、そのような事実を直視することである。」

    ほかにも本質をついた意見が多く見られ、多くの人にお勧めしたい一冊。

  • 「日本のいわゆる「良心的知識人」と韓国との連帯は、共通の価値をめざしているかのようにみえながら、韓国からの批判が民族主義にもとづく本質主義的なものであり、日本の側は自らの問題を問おうとする脱民族主義的批判であった点では、アイロニーに満ちた連帯であった。その反面、日本の右翼は、韓国の問題をことさらに誇張し、みずからが語りたいことを補完する材料としてのみ利用してきた」という間隙を埋めるように教科書、慰安婦、靖国、独島・竹島について日韓双方の主要な見解とその背景、衝突の原因(つきつめれば双方が見たいものしか見ないというところにだいたい収まる)をよく解説している。韓国については日本に対する教条的な批判を諌め、韓国自身が、あるいは韓国の体制側が加害者になったケースの教科書の叙述をどうするのかということ、植民地の朝鮮人間での力関係で最も弱く貧しかった女性が?強いられる?ことになった慰安婦、韓国は靖国批判の一環として日本の軍国主義化を持ち出すが、韓国の方が北朝鮮との対峙により日本よりもよほど軍国主義的思考様式に日常まで染まっているという点、ウリタン独島の最初の証拠としている新羅の干山征伐はそもそも異民族を征服する?植民地化?であったということなどを指摘している。一方日本に対しては、韓国では植民地時代が過去ではない現在となって、社会的な分裂をいわば後遺症のように生み出し続けていて、その原因は日本でもあったということを強調し、近代化を絶対の価値観として看做す一部言説を批判している。

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著者プロフィール

1957年ソウル生まれ。韓国・世宗大学国際学部教授。慶應義塾大学文学部卒業、早稲田大学大学院で博士号取得。専門は日本近代文学。ナショナリズムを超えての対話の場「日韓連帯21」に続き「東アジアの和解と平和の声」を立ち上げ、市民対話の場づくりに取り組んでいる。著書に『反日ナショナリズムを超えて―韓国人の反日感情を読み解く』『和解のために』『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』『引揚げ文学論序説 新たなポストコロニアルへ』など。夏目漱石、大江健三郎、柄谷行人などの韓国語翻訳も出版している。

「2017年 『日韓メモリー・ウォーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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