形而上学入門 (平凡社ライブラリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582760705

感想・レビュー・書評

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  •  再読。1935年の講義草稿を元として手を入れ、1953年に出版されたもの。とても一度の講義でここまで話したとは思えないような、何十ページにもわたる長い章があったりして、読むのに結構苦労した。
     パルメニデスやヘラクレイトスの言葉を掘り下げていく辺りなどが興味深かった。
     意味が掴みがたい部分も多く、ハイデッガーのあまりにも独特な言葉遣いでどうしてもつまずきがちなのだが、『存在と時間』も数回読み返すことで理解が進んだのだから、本書も再読を繰り返せば、また新たな地平を見いだせるかも知れない。
     以前から感じていて気になっていたのだが、ハイデッガーの思想には文学性と呼ぶべきカラーが色濃いのではないか。徹底的にクールな『イデーン』のフッサールに対し、ハイデッガーのスタンスは文学的で、何かしらの情動も籠められているようにも見える。
     本書の中では、「ヨーロッパの文明史におけるドイツの役割」のようなことに熱弁を振るっている箇所もあり、その辺は少々「酔っ払い」っぽいような気もする。こういう妙な使命感やら歴史意識におのれの血圧を上昇させる傾向が、どうも近代のドイツの著作家にしばしば見られるし(ニーチェなんか四六時中酔っ払っているイメージだ)、思うにヒトラーの演説とはこうした酔っ払いを鼓舞するテクノロジーだったのではないか。
     そんな思いも秘めつつ、もう少しハイデッガー哲学を探索してみる。

  • p88.精神とは存在の本質への根源的に気分付けられた知的決意性である。
    CGJung同様に精神の道具化が、精神の知性化という矮小化を生んだ。
    p90.存在という語の虚しさ、その呼称力の減退は、、、存在への関連が破壊されているということ、これが言葉への我々の間違った関係全体の本来の原因である。(一部訳変更)
    こうして存在という語の発生、歴史的解体が始まります。
    この解体の過程でphysisについて分析します。
    そして、彼は言います。
    p109. 存在は存在者から退いてしまった。

  • 原書名:Einführung in die Metaphysik

    1 形而上学の根本の問い
    2 「ある」という語の文法と語原学とによせて
    3 存在の本質についての問い
    4 存在の限定
    付・シュピーゲル対談

    著者:マルティン・ハイデッガー(Heidegger, Martin, 1889-1976、ドイツ、哲学)
    訳者:川原栄峰(1921-2007、徳島県、哲学)

  • 講義録だがよほど集中してないと読めない。頭がすっきりしている時間帯に、時速15ページぐらいで3週間程かけて読み切った。ハイデガーについては木田元の本を何冊か読んでいたので、そのイメージでもって何とか読み切れた感じ。いきなりだったらとても読み通せなかったと思う。結構なボリュームだが、構成はしっかりしているし、彼が言わんとしていることは一つ(「存在」と名付けられている出来事が、名付けられたというそのことによって、それそのものの本来性を失ってしまっている、というようなことだと思う)なので、後半の特にまとめに入ったあたりからは、「おもしろい」というか、その内容をその語り口も含めて「かっこいい」と思えるぐらいに理解できるようになっていた。さらに、巻末につけられた「シュピーゲル対談」が本当におもしろくて、彼が俗世での己の行動と自らの思想をどのようにとらえていたかがよくわかる。(ギリシア語とラテン語、フランス語とドイツ語をハイデガーこう捉えていたのか!とか、もちろんナチスとの関係についての説明も一筋縄ではいかない感じで、こう来たか!と思ったりなど堪能しました)。この「対談」をおもしろく読めたのも、本編の講義録の内容をそれなりにきちんと読んだからで、そうした意味でも本編をちゃんと読んでよかったと思った。

  • 難しいの一言。形而上学とは何かを学ぼうと思ったが、結局のところ言葉遊び以外の何ものでもないという話。ギリシャ語もドイツ語も知らない私にはなんのことかさっぱり分からなかった。哲学とは所詮、人間が作った言葉に人間が振り回されるという意味のない学問なのだろうか?

  • 現代思想の核心を呪縛しつづける20世紀最大の哲学者による重要講義の改訳新版。ナチズムとの関わりにも言及した「シュピーゲル対談(弁明)」(死後公表)を併載。解説=木田元

  • 「なぜ一体、存在者があるのか、そして、むしろ無があるのではないのか?」ライプニッツにより定式化され、多くの哲学者が問いてきた命題についてハイデガーはこの講演録で雄弁に問いかける。「なぜ一体、存在者があるのか、むしろ無があるのではないのか?」幾度もこの問いに返りながら、アレントをも虜にしたその高揚感のある語り口で存在と思考を対比し、古代ギリシャ語を参照しつつ考察を深めながらも、問いに対する回答を出すことはない。絶えず問い続ける姿勢、それこそが存在の生起であることを指し示している。「なぜ一体…」ほら、そこだ!

  • 1935年フライブルク大学で行われた「形而上学」についての講義録。「入門」と銘打つだけあって、「なぜ一体、存在者があるのか、そして、むしろ無があるのでないのか?」というライプニッツ以来の形而上学の根本的な問を提示することから講義が始まる。しかし、ハイデガーの「形而上学」は、この問いをさらに問うことから始まる。そもそも、存在はどうなっているのか?これがハイデガーが突きつけるより根源的な問である。この根源的な問を展開するために、ハイデガーはパルメニデスやヘラクレイトスなど、プラトン・アリストテレス以前の思惟を再現する。これによって、古代ギリシア以来連綿として隠され続けた「存在」を再び明るみに出すことが可能になる―これがハイデガーによる「形而上学入門」である。また巻末には、死の直前に行われたシュピーゲル誌によるインタビューも収録されており、ハイデガーがナチズムにいかなる哲学的問題を読み取ったかについてのハイデガー自身によって解説されている。ハイデガー哲学とナチズムのスキャンダラスな関係について考察するためにも必須の一冊。

  • 存在と対立する四つの概念の西洋思想史をギリシャから紐解く。「存在と思考」の章が難しかった。まだよくわかってない気もするけど、今はこれくらいにしといたる…

  • 学生時代から30年付き合っている本が何冊かある。この本もその一冊だが、繰り返し読んでも新しい発見がある。一方で、ナチズムの陰をそこにどうしても感じ取ってしまう。それで読む進む気が失せてしまうのも、この本を読み切れない理由の一つ。

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