- Amazon.co.jp ・本 (541ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582760958
作品紹介・あらすじ
日常的な飢え、虐げられる女や老人、掠奪やもの乞いの生涯、山や海辺の窮民…ここに集められた「残酷」な物語は、かつての日本のありふれた光景の記録、ついこの間まで、長く貧しさの底を生き継いできた人々の様々な肖像である。
感想・レビュー・書評
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日本社会の残酷な過去を振り返ることは大切なことである。
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難破船を糧としている海辺の人びとがいたことは、現在ではほとんど語られなくなっている。
福山のそばで日本住血吸虫による被害があったことは現在では場所が特定されないように書かれている。
からゆくさん、についても書かれているが、これは他書のほうがより詳しい。
1959年版は、活字が細くて薄く、厚いのが欠点である。 -
歴史
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昔のか弱き庶民の悲惨な物語集
1960年ごろに初版が発刊された書籍の第2版を再編集した書籍。1800年から1900年半ば頃までの昔の日本を舞台に繰り広げられた庶民の日々の生活について,インタビューや伝記,文献などをもとに綴られた伝聞記となっている。
乞食,老人,赤子,女といった世の中で弱い立場の人々がどのように過ごしてきたか,生死に関わる日々の営みについて,強奪,捨老,間引きなど今となっては残酷な内容も惜しげもなしに語られている。ただひたすら,そうした物語が綴られている。
冒頭1/3が乞食や飢餓に関する物語,1/3が老人に関する物語,最後の1/3が赤子と女の物語という流れになっていた。基本的には一つの物語は8ページくらいのぶつ切りで,一部ある登場人物に焦点があたった数十ページの話があったりする。
一部哀愁を感じるようなものがあった。例えば,棄老(弱った老人を山に捨てること)の場面で,実の子に捨てられようとしている老人が,自分の子が自分を捨てた後にちゃんと家に帰られるように,道中に印を残したという,子を思う気持ちを歌った以下の短歌など
p. 332「奥山に しおる栞は 誰のため 身をかき分けて 生める子の為」
個人的にはいまいちだった。というのも,ただの昔の物語がひたすら書かれており,先につながったり役に立つような内容と思わなかったからだ。単純にページ数も500ページと量が多く他人に勧めようとも思わなかった。面白かったら全7巻を一気に読んでもいいかなと思ったが,断念した。
昔の日本について知ったり,歴史や民俗に興味のある人はよいかもしれない。 -
「もはや戦後ではない」と言われるようになる頃、山の民、海の民、病人、子ども、老人、女…歴史の本流には記されることのない民衆の暮らし(というかサバイバル)をとどめようとした書。宮本常一の「土佐源氏」も所収。
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日本人は礼儀正しく、道徳的である。
というのは、ごく最近のことであり
中世ぐらいまでは魑魅魍魎で、けっこう野蛮な
民族だった、ということが明らかになる一冊。
読んで気分が好くなるものではないし
どちらかといえば、げんなりするものだけど
自国の歴史、その歴史からこぼれ落ちて
しまった人たちの記述は、知っておかなければ
ならないと思う。
必読かつ保存マスト。 -
以前から気になりつつ、ようやく読めました。
日本、というものが、分かるようで分からない。
この本を読めば、一端でも掴めるかと思ったけれど、余計に混乱してしまったかもしれない。
読み終わったばかりで、頭の中で処理されるのに時間がかかりそうです。
ただ、読む価値はある。と、自信を持って言える一冊でもありました。 -
松浦弥太郎氏のお勧め本と言うことで、タイトルに尻込みしながらも手に取る。
「生死の堺にある人が、どうしても生き抜こうとする場合、自分の仲間達以外のものを略奪するか、ひそかに盗む以外に方法はなかった。」からはじまる昔の日本の話。
飢饉、貧困、子減らし、人権なく扱われる人々等、主に明治以前の人々の暮らし。日本の民俗学と言うことでは興味深く読めるところも有るが、なかなか読みづらい。
【心に残る部分】
貧しい島の人は、その漂流物を目当てに船の難破を願う
享保の大飢饉 1732年
ひどい例だと村の20%以上の人々が餓死した
一般にこの時代の飢えた人々が、家畜の肉を食うことと人肉を食うこととの間に、犯すことのできぬ境界線をそれほどはっきりとはおいていないふうにみえることは、今日の常識からすれば少なからず野蛮で、戦慄すべきことかもしれない。 -
「逝きし世の面影」へのカウンターとして。
炭鉱と女衒、後半のこの二つが印象深い。前者は人を人とも思わない労働環境に逞しく生きる女性が、後者はこれまでとは逆に人を使う側のある意味立志伝的な面白さがあった。
読むのに時間がかかりすぎたが、その分考えることも多く得るものもあった。