歴史と民族の発見: 歴史学の課題と方法 (平凡社ライブラリー い 25-1)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582764581

作品紹介・あらすじ

本書は一九五〇年代、「国民的歴史学運動」のバイブルであったが、その後「忘却」され続けてきた、戦後歴史学の記念碑的作品。ナショナル・ヒストリーが問われるいま、歴史と民族の問題が再びよみがえる。

感想・レビュー・書評

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  • 解説:藤間生大

  • 国民的歴史学運動にかかわる部分で著名な本書だけど、個人的には実証主義とマルクス主義歴史学の関係についての叙述が気になった。以下、関連で気になったところを覚え書きとして引用しておきたい。

    「マルクス主義の歴史学がいわゆる実証的歴史家から非難され、あるいはきらわれる理由の一つは、それが史的唯物論という方法論をもっているということであります」(「歴史学の方法についての感想」p.221)

    「歴史学の方法としての史的唯物論は、学問のたんなる形式や論理でないところに特質があるということであります。史的唯物論はたんに「方法」であるばかりでなく、それ自身具体的な理論の内容をもっていることは周知のとおりでありますが、それはここの主観によって構成されてくるものでなく、歴史学の対象自体、客観的歴史的存在そのものが必然なものとするところの方法であり、したがって歴史およびその認識としての歴史学の内容と歴史の方法が方法のあかにふくまれておらなければならないのであります」(同、pp.222-223)

    「いわゆる実証主義は歴史と現実にたいして謙虚なように見えて事実はおそるべき暴力を現実世界に加える力をその機能としている。それは、歴史の中にひそんでいるかくれた連関や内面的秩序に従って歴史をきずき上げてゆこうとするのではなく、反対に歴史を素材としてばらばらにし、安易な社会や人間に対する意識を以てそれをつなぎ合せて行く。歴史の現実を単なる素材としか見ない貧困な学問が、その現実から独立性や自立について多弁にならざるを得ないのは当然である。学問の形式性に生命を与えるには客観的な歴史そのもののうちにある生命をその法則に従って蘇らせるより以外に方法がない」(「政治史の課題」pp.305-306)

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著者プロフィール

1912年札幌に生まれる。37年東京大学文学部国史学科卒業。冨山房・朝日新聞社を経て、戦後法政大学で教鞭をとる。民主主義科学者協会、日本文化人会議、歴史学研究会で活躍。法政大学名誉教授。1986年死去。著書:『中世的世界の形成』、『古代末期政治史序説』、『歴史と民族の発見』(正続)、『歴史の遺産』、『平家物語』、『日本の古代国家』、『日本古代国家論』(全2冊)、『日本史概説』Ⅰ(共著)など。

「1977年 『戦後歴史学の思想』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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