- Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582767674
作品紹介・あらすじ
文学史に埋もれた伊達男兼殺人文筆家に光を当て、アヘンが文学に与えた影響をあざやかにひもとく。ターナー晩年の絵画のすばらしさを再評価し、詩人哲学者・コールリッジとユートピアを夢見る。ワーズワースとゴヤの奇妙な同時代的交差を論じ、イギリスの恐怖伝奇小説の系譜をたどる。そして、ロマン派の音楽家たちをお祭り男と賞賛する。澁澤龍彦、種村季弘と並び称される「脱領域」の知性が遺した最初の著作、待望の再刊。
感想・レビュー・書評
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由良さんといえば、私が十代のころでも澁澤さんほどガッと前に出る感じのタイプではなかったけれど所謂青二才の年代が愉しむツボを書く人の印象が強かった。今の「ユリイカ」や「現代思想」は私個人は興味ないが若い頃は必ず皆読んでいたまだ学生も知的?好奇心に貪欲でした。そして中学高校のころは、どんどんくすぐる書物も出ていました。 音楽のところは正直ハテナもありますが、やはり由良さんのような 切り口の本は善し悪しは別として、品切れなどにならず 若者の定番として置かれるべきと大人な私は思います。そのためには、読者は購入しないと!オクタピオ・パスなんかは大人でも読まれるべきで。前に再刊されほっとしたり。てことで 今更また購入。あとがきには 彼に影響を受けた高山宏さんの言葉もあり。
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由良君美という方はこの世界ではけっこう有名な方なんですね…
不勉強なことにおととし頃に四方田犬彦さんの『先生とわたし』を読んで初めて知りまし...由良君美という方はこの世界ではけっこう有名な方なんですね…
不勉強なことにおととし頃に四方田犬彦さんの『先生とわたし』を読んで初めて知りました。(イギリス文学好きなのに…)
面白そうと思って文庫になったばかりの『みみずく偏書記』をこの前買ったところなんです。中の顔写真を拝見してマンガにでも出てきそうなものすごく雰囲気のある方なので(パイプとかもってはる…)ちょっと楽しくなっています。2012/07/10 -
「マンガにでも出てきそうな」
如何にもって感じですよね。
由良君美は、平井呈一 とともの学生の頃耽読した幻想文学系の本で、専らお世話?にな...「マンガにでも出てきそうな」
如何にもって感じですよね。
由良君美は、平井呈一 とともの学生の頃耽読した幻想文学系の本で、専らお世話?になりました、、、異色なのが「セルロイド・ロマンティシズム」(ダニエル・シュミット「ラ・パロマ」の1シーンが表紙になっています)。これはイギリス文学とは別の映画の話。お薦めです。。。2012/07/13
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再読。前回(2012/8/28)に比べ、固有名詞がわかるようになっている自分に感動(笑)。あれほどまで何回に感じていた由良節も、高山先生と同じくらいの気持ちで読めるようになった。
ヤーコプ・ベーメ、〈ランターズ〉、スウェーデンボリ、ウィリアム・ブレイク、そしてサミュエル・コールリッジに至るロマン派の魂の系譜を引きながら、その核にあったのは〈自然状態の神話〉、つまり未開の人びとは文明人より"純真"で優れているという思想であり、産業革命や資本主義化の進むなか、私有財産を棄て共和制のユートピアを築こうとしたのがロマン派だったと説いていく。ナポレオンに反発したゴヤとワーズワースもここに連なるのである。
ロマン派の懐古趣味や、自然風景を尊び、廃墟を描いてアジアやアフリカに恐れと憧れを抱くという特徴は、単に理想主義だったのではなく、同時代のイギリス社会に対するアンチテーゼであり、コールリッジはユートピストでありアナキストでもあった。それと同時に、彼らもまたコロニアリズムとオリエンタリズムを増長させる一端を担った。
固有名詞に見当がつくようになってみると、由良先生の論旨は意外にすっきりしている。高山先生からイギリス文化史に興味を持った私には、このロマン派観が当時が学閥に受け入れられなかったのが驚き。敵が多い人だったのはわかるけど(笑)。
ゴシック・ロマンスの三代古典、『ケイレブ・ウィリアムス』、『マンク』、『さまよえるメルモス』のあらすじを紹介している「伝奇と狂気」は、要約がとてもわかりやすくありがたかった!〈社会派〉の恐怖は「時代や社会のなかに潜む〈からくり〉の怖ろしさ」、〈ロマネスク派〉の恐怖は「綺想がえぐりだす人間性の深層の恐怖」という対比は今の娯楽作品を分類するのにも使えそう。 -
ロマン主義時代の英国文学から美術、思想、歴史について、恐ろしいまでの知識を駆使し、精密に組み上げられたまさに「地図」。
その膨大な知識の洪水と、コールリッジにブレイク、さらにワーズワースなどまでを総括する視点の独自性は溜め息ものであり、実に「面白い」のです。聞いたこともない単語や難解な言い回しを何気にポンッと連ねられる文章の妙に、知識欲をかき立てられます。
「すこしイギリス文学を面白いものにしてみよう」という序文から挑発的であるが、辛辣な物言いさえ洒落た雰囲気で包んでしまうセンスもまた好いなぁ。