現代語訳 賤のおだまき (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582768589

感想・レビュー・書評

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  • 「まあ、女性が書いたんじゃない?しらんけど」
    冒頭の序文に薩摩の女性が機織りの合間をぬって書いたものと書かれています。後ろに本当にそうなのかと言う検証が書かれていて、それがとても面白かったです。内容よりそっちに興味があったかも。
    専門家でもないのでなんとも言えませんが、女性が書いたものっぽいかと言われれば確かにそうかもなと。主人公が両方美形なのもちょっとBLっぽい。
    女性が書いたものが手本として語り継がれるのかと言う疑問が出ていたんですが、萌え漫画の金字塔には「うる星やつら」と言う女性作家が書いたものがあるのでそれと一緒なんじゃない?とも思いました。女性が嫌悪するようなものだと世の中の半分は敵に回してしまうわけで、和を持って尊しとなす文化では才能豊かな女性の作品を取り上げて「女性もこう考えている(キリ)」みたいなのは必要だったんじゃないかなーと。
    それを否定するのは自由ですがそれって日本文化の否定のような気もするんですがどーなんでしょーねダイバーシティ。

  • 0083
    2018/12/11読了
    現代語訳が分かりやすくて面白かった。
    注釈も同じページに書いてあるのでよい。
    お話自体は短いので読みやすい。
    でもあっさり死んでしまってびっくり。
    本編ももちろんだけど、解説も面白かった。女性の表現活動の歴史についても興味を持った。

  • 原文未読、内容に関しては解説にある通り
    “「感傷的な美文」で『歯の浮くような恋歌』があり、「(作品自体は)まともに論ずるに足る作品とはいいにくい」(前田)とされたり、「「君思ふ枕の下の涙川」なんて甘ったるい文章の男色小説」(笹川臨風『明治環魂紙』)とあまり芳しくない。鹿児島出自の白洲正子にいたっては、『文章はけっして上手とはいえない。――少年の美貌を語ろうとしても――百人一首を引き合いにしなければ表現できないという未熟さだ。――大事なところでは決まって七五調に逃げるので、興を削がれること甚だしい」と手厳しい”
    ヰタ・セクスアリスに登場する本書だが、今の意味での同人誌的色合いの強い、エロシーンは行間を読む的なご想像におまかせっていう性癖の本だったんでは。
    解説が面白かった。日本の男色に関して、だから日本は同性愛にリベラルだったみたいな主張を耳にするにつけ、違うだろ、女はただの産む道具で人間でなかった女性蔑視の文化だろ、と思っていたのを学術的に語ってくれている。
    しかも本書では底本の序文より「此書西薩婦女の手より出づと聞く。嗚呼紡織之余を以て事此に及ぶ。薩の人を導くに素有りまた以て想ふべし」と、作者腐女子説を取り上げる。女が描いたら女性嫌悪時代に持て囃されることに矛盾するわけだが、そこは軽く触れるのみで当時の女性表現者や時代性へと論は移っていく。

    思うに、今の男女の恋愛小説テンプレートみたいなのが「賤のおだまき」でないだろうか。三五郎を女に入れ替えても今では何も不自然を感じない、だから面白みもなく目新しくもなくつまらないんだと思う。女なら嫉妬が見苦しいとされたその時代でも、三五郎のは「かわいい」のだ。それがスライドして現代の男女の恋愛にも影響を残しているように思った。となんかもしかしたら闇が深い腐女子の文化的精神性根源に暗澹とした気持ちになりました。

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著者プロフィール

立教大学文学部教授。専門は日本中世文学。
主な著書・論文に『平家物語の展開と中世社会』(汲古書院、2006年)、『いくさと物語の中世』(共編著、汲古書院、2015年)、『島津重豪と薩摩の学問・文化――近世後期博物大名の視野と実践――』(共編著、勉誠出版、2015年)などがある。

「2023年 『文化権力と日本の近代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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