疫病短編小説集 (915;915) (平凡社ライブラリー き 15-1)

  • 平凡社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582769159

作品紹介・あらすじ

天然痘、コレラ、インフルエンザ、そして「疫病の後」──繰り返し襲いくる見えない恐怖を描いた作品7編。コロナ・パンデミックとその後の時代を生きるための指針となる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 7つの短編ー
    ・赤い死の仮面/エドガー・アラン・ポー
    ・レディ・エレノアのマント/ナサニエル・ホーソーン
    ・見えざる巨人/ブラム・ストーカー
    ・モロウビー・ジュークスの奇妙な騎馬旅行
    ・一介の少尉/ラドヤード・キプリング
    ・蒼ざめた馬 蒼ざめた騎手/キャサリン・アン・ポーター
    ・集中ケアユニット/J・G・バラード

    どれも粒ぞろいで読み応えがあり、石塚氏による解説でさらに理解を深めることができる。ポーの赤い死の仮面は最初読んだとき一体何が起きたんだ?と少し混乱したけど、解説を読んでなるほどそんな意味がと面白かった。集中ケアユニットはSFぽくて最初疫病と関係ある?と思ってしまったが、読み進めていくとまるでコロナ禍の隔離生活が進化したらこのようになるのでは…と予言された気分。そして衝撃のラスト。一番好きなのは見えざる巨人(挿絵が解説に載っている)。
    一つ一つ印象深く、他にももっと思いを馳せる部分はあるが、全部に詳しく感想を言うとこれから読む人の楽しみを奪うような気がして。ぜひ7つのお話をすべて読んでから解説を読んで物語の含意を楽しみ、パンデミックに対する意識の風化(今まさに)について一考してみてほしい。

  • 『病短編小説集』
     https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4582768466
    『医療短編小説集』
     https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4582769098
    に続く第三弾、新型コロナ禍を生きる読書家のための(?)
    流行り病をテーマとするアンソロジー、全7編。
    戦争に比べると文学に取り込まれにくい趣きのある疫病。
    身近な人を理不尽に奪われる苦しみは共通していても、
    戦争には介在する英雄的行為が存在しないからか、
    あるいは、症状がもたらす身体的な惨たらしさから
    目を背けたくなってしまうせいなのか……。

    ■E.A.ポー「赤い死の仮面」
    (The Mask of the Red Death,1842)
     疫病から身を躱そうと、
     臣下と共に城に閉じ籠もったプロスペロ公。
     新しい訳になっても絢爛さと不気味さは変わらない。
     死の種は籠城の際、誰にも知られずに紛れ込み、
     時間をかけて発芽し、
     最後に弾けて消し飛んだのかもしれない。

    ■ナサニエル・ホーソーン「レディ・エレノアのマント」
    (Lady Eleanore's Mantle,1838)
     18世紀初頭、独立前のアメリカ。
     マサチューセッツ湾植民地の総督シュート大佐に招かれて
     英国からやって来た遠縁の美女、
     高慢なレディ・エレノアが
     自身の美貌を引き立てるために纏っていたマントには……。

    ■ブラム・ストーカー「見えざる巨人」
    (The Invisible Giant,1881)
     『吸血鬼ドラキュラ』の作者による
     児童向けファンタジー『黄泉の下』中の一編。
     勇敢で優しい少女ザヤと老賢人ノールの献身によって
     街が疫病の猖獗から解放される。

    ■ラドヤード・キプリング
     「モロウビー・ジュークスの奇妙な騎馬旅行」
     (The Strange Ride of Morrowbie Jukes,1885)
      イギリス人モロウビー・ジュークスは
      愛馬を駆ってインドの砂漠へ。
      体調を崩し、斜面を滑り落ちると……。
     「一介の少尉」(Only a Subaltern,1888)
      王立士官学校の卒業試験に合格し、
      意気揚々と在インド、テイルツイスターズ連隊に
      入隊した青年ボビー・ウィック少尉は
      面倒見がよく、人気者になったが……。

    ■キャサリン・アン・ポーター「蒼ざめた馬、蒼ざめた騎手」
    (Pale Horse,Pale Rider,1938)
     第一次世界大戦下、新聞社に勤める24歳のミランダは
     体調不良を感じながらも仕事し、
     工兵隊の少尉である同い年の恋人アダムとデートしていた。
     流行りのインフルエンザに感染したらしいミランダを、
     アダムは甲斐甲斐しく世話してくれたが……。
     タイトルは二人が口ずさむ歌の一節だが、
     「蒼ざめた馬」とはヨハネ黙示録に由来する死の象徴。

    ■J.G.バラード「集中ケアユニット」
    (The Intensive Care Unit,1977)
     家族でさえ衛生と安全のため、
     別々に引き籠もって暮らすのが当たり前の世の中。
     あらゆるコミュニケーションが
     モニター越しの遠隔操作で交わされる社会で、
     掟を破った一家を襲った惨劇とは……。

  • 読了2021.05.02
    文学が感染症をどのように扱ってきたか。
    あるいは「どのように扱わなかったか」という点も、非常に示唆に富んでいた。
    外から齎される災厄として描かれることが多いが、共同体内部の善意と友愛の証であるかのようにセンチメンタルな面を強調した作品も。
    J.G.バラード「集中ケアユニット」の予言性に驚いた。
    石塚氏による解説は、まるで探偵による謎解きのようで非常にスリリングかつ、今こうして新型コロナのパンデミックに右往左往している中で読むとたくさんの学びを得られた。
    E.M.フォースター「機械が止まる」も読みたい。

  • 2021年7月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00594863

  • 2021.05.12 図書館

  • 姉妹集の『病短編集』を読みたいリストに入れていたんだけど、まさか最新刊の方を先に読むとは。
    感想は、うーん、消化不良。疫病をメインに据えた話じゃなかったり、そも幻想小説だったり。編者が「疫病を扱った短編は少ない」と書いているけれど、ほんとにそうなんだろうなと思わされる。

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