物欲なき世界

著者 :
  • 平凡社
3.40
  • (17)
  • (45)
  • (60)
  • (15)
  • (4)
本棚登録 : 676
感想 : 48
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582824810

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 青山ブックセンターに立ち寄って新しい本を物色していた際に目に留まった。ちょうど今お金を極力使わずに楽しめる工夫を模索していたこともあり、資本主義的な快楽・物欲との付き合い方について考えるきっかけを得たいと思い読み始めた。

    冒頭はライフスタイルというキーワードを軸に物欲を中心にした従来型の豊かさからの変化について様々な識者の意見をまとめ、現代はただ物欲が無くなっただけでなく、個々人が持つ本当の趣味嗜好の追求や社会貢献から得られる充足感のような、経済成長とは反対の方向に豊かさの質が変わっている事が説明されている。
    経済的には貧しさに繋がるのかもしれないが、長い歴史の中で経済成長が無かった時代に華開いた文化も沢山あったという事例が興味深く、現代の減速感が停滞ではなく成熟だとすればポジティブに受け止められると感じた。
    また、働いている身としてはそのような価値基準の変化に逆らわずに、それでも世の中で必要とされているものを提供し、急成長はしなくても緩やかに事業を紡いでいく事が大切になるので、物欲・豊かさに関する新しい考え方をインストールできて良かった。

  • 2015年の本。ライフスタイル消費から入りキンフォークやポートランドがすごいという話でなんだか懐かしい古い話と一瞬思うが、読み進めるほどにそんなことはなく。最後の2章は、資本主義の行き詰まりと次なる低成長時代は日本にとってチャンスである(なぜならいち早く低成長時代でやってきてるから)という話などは、2021〜2022年辺りで議論されてるアメリカの分断だとかGAFAMの隆盛だとかと繋がるし、ラストの「果たして自分は何が欲しいんだろうか?」という問いに答えられるようになることがこの新資本主義(あるいは新民主主義。要は今の経済成長路線ではないなにか)を生きるための指針になるという点は、2023年の今でも変わらない論点だ。

    にしても、脱成長と日本は確かに相性良い気もする。
    みんなで手を取り合ってて勝てないのが日本と思ってるが、勝つ(成長)のを是とせず不条理な格差を生まずにみんなまあまあ幸せ("攻めない"最大多数の最大幸福みたいなもの)を狙うという感じは、確かに相性良さそうだし。

    --
    ファッションから経済への接続。つまり自分の仕事から社会や世界への接続。栗野さんのモード後の世界で感じたそれとはまた違った、客観から捉えて編集し切る感じもまた良い。
    --
    菅付雅信、編集の巧さ、マジで好き。2013年に見た講演でドギモ抜かれて以来。

  • ライフスタイル
    ファッションからライフスタイル自体がファッション化している
    ライフスタイルは切り売りではなく、時間をかけて自分たちのものにしていく。
    ノームコア
    カスタマイズにより、ゴミは無くなる
    需要から供給へつなげる
    お金の支払いにありがとうを載せる
    SNSにより、自慢がしにくくなった。周りが見えすぎるせいで。
    →だからモノの方がどんどん下がっていった。

  • いかに世界から、特に若者から物欲がなくなっているか極めて冷静に教えてくれる本。
    資本主義の終焉も示唆されている。今、読んでおくべき本。

  • 「果たして自分は何がほしいのか」の答えを用意しよう。

  • 日本の若者が物を買わない、から始まるファッション業界から世界のライフスタイル。
    アメリカと中国の消費行動の変化。
    若い世代のシェア。
    ピケティやケインズなどの資本主義の経済学まで幅広く網羅して、今後の超資本主義予想まで。
    別に物を買わないのは日本の若い世代特有の行動ではなくて、物が飽和した世界のライフスタイルそのものだよ、と言った話。

  • 大量生産・大量消費の経済が崩壊つつある現代の世の中をどう生き抜くか。
    DIY・シェア・リサイクルなど、ムダな消費を控え今あるものを有効に活用することがそのヒントになる。

  • 「ライフスタイルと欲求の変化」から始まり、「オープン化」「シェアリング・エコノミー」「格差」といったトピックは様々。
    「○○離れ」は悪いことでもなんでもなく、次なる社会や体制に脱皮するためのサインではないかという、なかなか興味深い一冊でした。

  • 2016.07.29 マーケティング、広告を生業にしているものとして多くの示唆をもらった。この本の中で紹介される本のいくつかはすでに読んだが、著者の視点が加わることで改めて今後のあり方を考える良いきっかけになった。次の時代の構想をしなければならないと再認識した。経済の時代から○○の時代へ、その中で経営やマーケティングは、教育はどうあるべきか?難しい課題だ。

  • 最近流行りの、モノをほとんど持たない、いわゆる「ミニマリスト」的な生活についての書籍、という訳ではなく、資本主義社会によって産み出された大量消費・物欲社会の行き詰まりという現状認識から、既に先進国で始まりつつある物欲なき社会という近い未来社会への移行について論じている、経済社会に関する内容。後半からかなり興味深い内容だった。まぁ、前半は、アメリカのポートランドの様子、モノでは無くライフスタイルが売り物になりつつある状況、先進国の若者の間の消費離れ状況などのレポートが中心。大量生産された既製品の大量消費社会というのは実にこの50年ぐらいの短い歴史であることや、近年の自分でモノを作ることを楽しみながら最低限の消費、量から質への転換を見つつ、後半は貨幣経済や現代の電子マネー、ビットコイン、信用取引などの根源について論じていて示唆に富んでいた。既に誰もが感じている種々の資本主義社会の行き詰まりは、このシステムではもはや解決できない転換点に達しているのかもしれない。次の社会へのソフトランディングは無理なのかも。本書を読むと、アベノミクスがやっていることは、完全に前近代的な、終わりつつあるマネー資本主義の論理の枠組み内におけるその場しのぎで、手段の目的化に過ぎないなぁ、と感じた。だからと言って、次の社会を目指して世界をリードする度胸と知恵がなければ、「この道しかない」のかもしれないけど。

著者プロフィール

編集者/株式会社グーテンベルクオーケストラ代表取締役。1964年生。法政大学経済学部中退。角川書店『月刊カドカワ』、ロッキング・オン『カット』、UPU『エスクァイア日本版』編集部を経て独立。『コンポジット』『インビテーション』『エココロ』の編集長を務め、出版物の編集から、内外のクライアントのプランニングやコンサルティングまでを手掛ける。著書に『東京の編集』『中身化する社会』『物欲なき世界』、対談集『これからの教養』等がある。またアートブック出版社ユナイテッドヴァガボンズの代表も務める。『コマーシャル・フォト』『WIRED JAPAN』WEBで連載中。下北沢の本屋B&Bで「編集スパルタ塾」を主宰。NYADC銀賞受賞。

「2019年 『新装版 はじめての編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

菅付雅信の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ベン・ホロウィッ...
スティーヴン・ワ...
リンダ グラット...
三谷 宏治
都築 響一
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×