- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582834451
作品紹介・あらすじ
スターンの小説に由来する秘密結社シャンディ。作品は軽量でトランクに収まり、高度な狂気を持ち合わせ、独身者の機械として機能する-特異な三条件をクリアし、謎の結社に集ったモダニストたちの奇妙な生態。
感想・レビュー・書評
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カタルーニャ地方(スペイン語もスペイン本国も嫌い)出身とのことで、なんかギスギスというかパンチ効いたというか、要するに「たまげたい気持ち」を求めて手にとってみたが、ふんわり南米系でした。ポータブル(アタッシュケース的な)な文学史について書かれてるような、そうでもないような。あとがきにも記載されていますが、翻訳向きの作品ではない、とのことで。読みやすくはない、共感するのが難しい本だそうです。でもなんかなー、「木のぼり男爵」とかよりは好きかなー。
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11/28 読了。
「ポータブル文学」という新たなジャンルを掲げて立ち上がった秘密結社シャンディの波乱万丈活劇。に見せかけたシュルレアリスム周辺の面白エピソード集。みたいな小説?
ジョルジュ・ペレックの「美術愛好家の陳列室」を思い出した。 -
デュシャン、ベンヤミン、オキーフ、セリーヌ、ニーチェら芸術家から架空の人物まで大勢が登場し、あちこち移動しての大騒ぎ。虚実が入り交じった、それこそ「軽い」語り口で一気に読ませてしまう。『バートルビーと仲間たち』と同じ系譜に連なる作品だが、ここでも「ポータブル」というメンタリティに共感できるかどうかで評価は分かれるかも。ところで、私は『バートルビーと仲間たち』の方が好きです。
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「バートルビーと仲間たち」のエンリケ・ビラ=マタス。
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いわゆる文学史の掌編のようなものを想像して手に取ると、まるでお手上げ。けれどもほんの少し、この本の高度な狂気と波長を合わせることができさえすれば、無限の魅力が広がる。
登場するのは、マルセル・デュシャン、ジャック・リゴー、パウル・クレー、ジョージア・オキーフら二十世紀前半の前衛主義運動のスターたちだ。陽気で気紛れで冗談好きな彼らは、シャンディという秘密結社につどう。独身の身軽さをつらぬき、無責任な子供のように振る舞い、既成の重苦しい芸術を破壊し、たとえば軽くてトランクに楽に収まるような、新たな価値観の創造を目指した。そんな彼らの生きざまを著者は「ポータブル」と呼ぶ。
突拍子のない逸話ぞろいでフィクションかと思いきや、引用文の出典が明記されている。野心家たちのエネルギーの結束から拡散までは、文字どおり、「文学小史」なのだ。
(週刊朝日 2011/3/11 西條博子) -
不思議なタイトルで手に取りました。黄みがかったピンクの装丁がきれいで、厚みもなくてすっきりした本。
ポータブルを愛する秘密結社、シャンディのお話…とはいうものの、「ポータブルって?しかもシャンディって?」と、わからん設定だらけ!ニーチェにヴァレーズ、デュシャン…もう、登場人物に詳しくないし!と、ぽかんとしながら読み進めました。
それでも、慣れてくると、20世紀前半を生きた作家・アーティストがポータブルというつながりを持ちながら、ヨーロッパのあちこちを飛び回る様子がじんわりと面白くなってきます。同時代に脚光を浴びた著名人のオールスターキャストで物語が動く様子は、「ウルトラ兄弟総出演」「歴代仮面ライダー総出演」の映画のようでもあり、ファンタジックなところはクラフト・エヴィング商會の作品のようでもあるし。浅学なので、書かれたエピソードのどこまでが史実かフィクションかわからないのが悲しいところですが、「どれも当たらずとも遠からずだろう」と割り切って楽しみました。個人的には、「オドラデクの迷路」と「バンホフ・ズー」の章が好きかな。
もうただ、著者の博覧強記(というか文学オタク)っぷりが発揮されていて、じんわり濃ゆいお味の一冊。訳者の木村栄一さんが解説で正直に「この作品はあまり一般的といえず、…」とカミングアウトしてらっしゃるとおり、変化球的な作品ではあるんですが、文学のお遊びがしっかり味わえる本だと思います。で、この☆の数。 -
Historia abreviada de la literatura portátil (Anagrama, 1985)