マイ・バック・ページ - ある60年代の物語

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 321
感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582834840

感想・レビュー・書評

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  • もちろんキモとなる著者が逮捕される事件も読み応えがある。だが、私が惹かれるのは「それ以外」の名もなき人たちの肖像だった。彼らは紛れもなくこのエッセイにして痛切な自伝が描く「60年代」を生きていた。沢木耕太郎のスケッチや、村上春樹や中上健次、村上龍が描く青春を連想してしまう(おかしな話だ。龍は「遅れてきた」世代のはずなのに)。ということはこの書物は著者が一皮剥けて一流のエッセイストになる、その「一皮剥ける」ために何物かを葬らなければならなかった鎮魂の書物であり、同時に哀切な文学を綴った1冊どいうことになろう

  •  記憶のかなたに消えていた60年代がセピアからフル・カラーになって甦ってくるような一冊。
     あとがきに綴られた <あの時代に青春を生きた人間が好きなのだ> という川本氏の真情は、あの時代をさまざまに生きた人たちへのオマージュでもあるのだろう。

  • 記者としてのあり方,モラル,そして時代の空気.

  • 先日、小学校のときの友人と再会してお酒を飲んだ。話題は学生運動になった。
    戦争につながるのでは?と不安になるような法案が国会で争点になっている。市民グループや学生のグループがデモを行っている。彼らをいまから40年くらい前の学生たちと重ねたのだ。
    戦うものがあって羨ましい。自分の意見を主張する場所があって、いまの学生よりも政治のことを考えている。1970年ごろには精子にも卵にもなっていなかった自分たちが当時の学生を褒めるのは滑稽な姿であったと思うが、お酒の力は偉大だった。自分が学生運動が盛んであった頃に生きていたなら参加したかった、とまで思うほどであった。

    前置きが長くなったが、この本は朝日新聞社に入社した川本氏が学生運動の新たなリーダーになりそうな男に出会い、殺人を犯した彼をジャーナリズム精神でかばってしまい、逮捕されるまでの話だ。
    寝苦しい真夏の夜のような、戦後からの復興を遂げて熱量が溢れかえる、とにかく熱い時代だったんだなと感じた。
    就職して社会人になれば大人なのか。大学生たちは青臭い子どもなのか。自分の思想を確立した人間こそが大人と呼ばれるべきではないのか。揺さぶられる自尊心。
    そういった青臭い熱さがあったからこそ、つけ込まれたのだろう。結局は逮捕されて川本は自供するが、そこでやっと真夏の熱帯夜が終わったように思えた。

    自分はこの時代に生きていたらここまで熱くなれただろうか。ヒッピーくずれのようになってそうだなと思う。
    こういう熱い時代があったことを忘れてはならない。

    My Back Pages
    https://www.youtube.com/watch?v=ML97CDYUYVc

  • 一雑誌記者の60年代末~70年代の思い出。

    取材する側にどれだけコミットしていいものか、悩みに悩んだ様子が端々から読み取れる。
    活動家たちに心情的に寄り添う部分がありながら、取材記者としての立場で彼らを見て、記事を書く。
    自分自身の立場に、何かしら消化しきれないものを抱えながら、やがて記者生活の終わりを迎えるきっかけとなる「ある事件」にかかわっていくことになる。

  • 「日本でも革命が起きると信じていた。」と、青春時代に、デモ参加などの、当時の一般的な若者程度の市民運動をしていた私の母は言っていました。
    この本から、そういう時代の雰囲気が伝わってきます。
    しかし、当時から、地道に市民運動をしたい人たちは、過激派の人たちのことを、わざわざ事を揉めさせる、足を引っ張るような存在と感じていたようです。
    本を読んでも、私には自衛官を殺害したKの動機がわかりません。
    そして、この事件が、著者がジャーナリスト生命をかけてまで犯人であるKを秘匿しなくてはならないような、大義のある事件には思えないのです。(過激派の活動家が政府機関のスパイを行ったとか、政府の要人を殺害したとか言うならともかく・・・。)
    でも、分かれ道で間違った選択をした人を、後から俯瞰で批判するのはたやすいですが、その渦中にいる人には、その時はそうするしかなかったのかもしれません。読後感は、ヒリヒリ痛いです。

  • 生まれる何年も前の話。
    眉間に皺が寄りっぱなし。何だか鼻の奥がツンとする。
    不思議な読後感。
    悲しい、のとはちゃうな。なんやろ。
    映画も観たいが、止めた方がええやろか。むう。

  • 「ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて:安田浩一」という本を読んで、今は在特会のような組織があるけど、その本に出てくるような60年代や全共闘というものが何なのか、どうして若者が死んだり闘争しなければならなかったのかを知るきっかけの一つとして、読んでみた。

    概要を理解するには適していない本だったけど、「川本三郎」という人を通じて当時の一面を知ることはできた。

    あとがきP212の「ミーイズムではなくウィーイズムの時代だった。誰もが他者のことを考えようとした。~」なんだなーと…

  • 2013/1/5購入
    2013/1/9読了

  • 激動の60年代末から70年代をジャーナリストとして、駆け抜けた著者の回顧録の本著。

    映画を観てから、原作を読みました。

    近年60~70年代を総括する本が多々出版されていると思うが、これはジャーナリストとしてどうあるべきかという葛藤を含めて、どう全共闘と向き合ったのかと赤裸裸に綴られている。

    その他にも、カルチャーに強い著者だけにあって。映画、音楽などについても触れられているため、その時代の空気感が感じられ易くなっていた。

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著者プロフィール

川本 三郎(かわもと・さぶろう):1944年東京生まれ。「週刊朝日」「朝日ジャーナル」記者を経て、評論活動に入る。訳書にカポーティ『夜の樹』『叶えられた祈り』、著書に『映画の木漏れ日』『ひとり遊びぞ我はまされる』などがある。

「2024年 『ザ・ロード アメリカ放浪記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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