青年ヒトラ- (平凡社新書 455)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582854558

作品紹介・あらすじ

反ユダヤ主義を掲げ、その圧倒的な演説力で民衆を魅了しながら、破滅の道へと突き進んだアドルフ・ヒトラー。二〇〇九年四月二十日、人類史上稀に見る汚点を残したヒトラーの誕生百二十年目を機に、冷静かつ客観的に、その出生、恵まれた幼少期から、挫折と反ユダヤ主義に目覚めていく青年期、そしてナチ党入党までを検証する。いかにして狂気に満ちた独裁者になったのか。

感想・レビュー・書評

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  •  その題名の通り、青年期のヒトラーからナチ党党首になるまでのヒトラーの人生を中心に記述した本。伝記と言うには後半生がないがいくつか類似書を読んでいる中でも特にウィーン時代の住居や境遇の変遷、更に第一次世界大戦中の軍歴や参加した戦闘、もらった勲章やその推薦者などについて詳しく、新たな知見を得ることができた。ヒトラーの狂的な反ユダヤ主義はきっちり固まったのは第一次世界大戦敗北後のレーテ政権が反革命軍によって倒された後フェーダーらの政治講習会を受けてからだ、というのが筆者の結論だが私は少し疑問。読みやすさに評価できるものがある。
     リンツ〜ウィーン時代初期の唯一の親友、アウグスト・クビツェクの回想録に依拠する点も多く、私は既読であるが、ヒトラー理解にはこのクビツェクの回想録は今後は必読となるだろうと改めて示している書物でもある。
     それにしても、「永遠に許されない罪」(筆者記述)であるホロコーストの動機である、ヒトラー個人の反ユダヤ主義への目覚めについて、他者や当時のドイツ、古くからのキリスト教世界の反ユダヤ主義の風潮以外の個人的動機は「何もない」、恐るべき空洞、がらんどうであることがますます私にも確信が持ててきた。

  • ヒトラーの幼少期からNSDAP入党前後までに焦点を当てている。

    よく、「もしヒトラーが美術家や建築家となって、
    夢をかなえていたら悲劇は避けられた」というフレーズが本書ではよく見かける。
    しかし、仮にそうであったとしても、
    第二、第三のヒトラーが現れたのではないかと思う。

    それ程幼少~青年期のヒトラーの挫折、鬱屈が、
    他人と特別変わっていたとは思えないのである。
    (弁舌や扇動が天才的だったという点はあるが)

  • 強情、好き嫌いが激しく、気難しく、一辺倒でカッとなる性格。普段はおとなしく、家族思い、友人思いだが、ひとたび弁舌を振るいだすと人が変わったように攻撃的、熱血になる。かなり妄想家で、思い込みが激しい。一見関係がなさそうな基礎的なことを、地道にコツコツ回り道するのは苦手な癖に、自分がこうと思い込んだことに対しては、ものすごい集中力と根気を発して、努力し続ける。

    どうだろう。こんな人物、周りにいないとは言い切れないのでは? アドルフ・ヒトラーの性格は、程度や部分的な違いはあっても、結構いろんな人の中にあるキャラクターかもしれない。もちろん私自身も含めて。私が恐怖に感じたのは、誰でもが彼になり得る、ということ。

    彼の場合、周りの環境、そして歴史の流れも、結果にすごく影響はあったのだろうけど、単純にそのせいばかりには出来ない。それに、今だっていつ何が起こるか分からない流れの世の中だ。すでにどこかで第2第3の彼が、形を変えて育っていないだろうか。私達は、そんな彼を無意識のうちに周りに育てていないだろうか…。

    もちろんヒトラーがいなければ、あの事件はなかっただろう。でも、別の形で似たような事件が、起こらなかったとも限らない。現に、1人の独裁者に多数の人民が流されて事件や紛争になる、という形式は、世界中どこにでも転がっているではないか。

    被害者側から見たアウシュビッツ関連の話や、ホロコースト全般の話なども、問題意識を持つのにもちろん必要だとは思う。が、あまりの凄惨さに押されて、こちらの想像を絶することも多い。対してこの本は、凄惨さが極力抑えられて書かれているため、逆に他の本では浮かび得なかった恐怖と問題点が描かれているように思う。

    彼には、優しい友人もいたし、暖かい家族もいた。この普遍性が、私には一番恐ろしく感じられた。

    1人1人が擬似的にでも当事者意識を持ってあの悲惨な歴史をなぞるには、この本はうってつけかもしれない。

  • [ 内容 ]
    反ユダヤ主義を掲げ、その圧倒的な演説力で民衆を魅了しながら、破滅の道へと突き進んだアドルフ・ヒトラー。
    二〇〇九年四月二十日、人類史上稀に見る汚点を残したヒトラーの誕生百二十年目を機に、冷静かつ客観的に、その出生、恵まれた幼少期から、挫折と反ユダヤ主義に目覚めていく青年期、そしてナチ党入党までを検証する。
    いかにして狂気に満ちた独裁者になったのか。

    [ 目次 ]
    第1章 生いたちの記、気ままな少年時代(自信あふれる少年 夢見る少年アドルフ ほか)
    第2章 失意のウィーン時代(下宿生活 オペラの友 ほか)
    第3章 幸せなミュンヘンでの日々と戦場の勇士(画家としての幸せな日々 清楚な青年、定まらぬ将来 ほか)
    第4章 極右政治活動への突入と破滅への道(ミュンヘンの兵舎にて、活路の模索 革命体制への順応と傾倒 ほか)
    エピローグ―よみがえる友情(一九三八年四月九日午後、オーストリア・リンツ市のホテル、ヴァインツィンガーにて 一九三九年八月三日午後、バイロイト・ワーグナー家にて ほか)

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    [ 参考となる書評 ]

  • 人間ヒトラーがよくわかる好著。ただ、それでもやはり、どうしてあのような悲劇が生まれてしまったのかについては腑に落ちないところがあります。

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