「中国模式」の衝撃―チャイニーズ・スタンダードを読み解く (平凡社新書)
- 平凡社 (2012年1月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582856248
作品紹介・あらすじ
「中国模式」-その意味するところは、中国独自の発展モデル、発展基準、発展方式。中国ではいま、この言葉が流行し、政治指導者も発言のなかで頻繁に用いている。アメリカを急追するアジアの覇権国家の内実を知るには、この「中国模式」について知る必要がある。生活、ビジネス、経済、政治、外交に関して、中国模式-その等身大の姿を伝える。
感想・レビュー・書評
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興味深かった。中国の行動論理が良く分かる。中国は日中関係の向こうにアメリカを見ている。これは、本当に日本の政治家に力が無さすぎる。任期も短い。やはりそれも構造の問題だ。
・30年以上中国問題に携わってきた日本政府高官に対中交渉の極意を尋ねると「中国はパチンコだよ。私はいつも、パチンコ台の前に座っている感覚で中国と対峙してきた」と述べた。
パチンコ屋に入って、まず大事なのは、玉の出そうな台を見極めることだ。そして台を決めたら一定の資金を投入して打ち始める。最初はある程度入らなくても、ジッと我慢していると、ある時、中央のチューリップが、パッと開く。その瞬間に一発でも多く、チューリップめがけて玉を打ち続ける。「相手の門が開いた瞬間に打ち込めるだけ打ち込む。なぜなら門はすぐに閉まるから」というところがミソだ。
中国はトップダウンだ。トップの心さえ掴めば、五合目までは征服したに等しい。何故山頂では無いのかというと、トップの気移りが激しい事と、下がスムーズにトップの意向を遂行するとは限らないからだ。だからトップの了解を取ったら、電光石火で契約書を作り、トップにサインしてもらうことが肝要だ。そして契約書を翳して部下たちを焚きつけて一刻も早く遂行してもらう。
・江沢民→曽慶紅→習近平・薄煕来
胡耀邦→胡錦濤→李克強・胡春華
毛沢東はソ連からの援助をバックに政治基盤を確立させた。第二世代の鄧小平は香港、広東省。第三世代の江沢民は古巣の上海に浦東地区というもう一つの上海を作り、証券取引所をオープンさせ、世界の金融機関を誘致した。第四世代の胡錦濤は北京・天津から東北振興、内モンゴルの石炭。
第五世代の習近平は台湾を挟んだ福建省がバックボーン。北京・上海・天津に続く第四の直轄地重慶のトップだった薄煕来と長年の盟友だったが、薄煕来は失脚した。
胡錦濤は2006年江沢民を中心とする上海閥で「江沢民の忠犬」と言われた陳良宇を汚職疑惑で葬った。その代わり、空席になった上海市のトップに習近平が据えられ、出世競争で李国強に習近平が競り勝った。
・QE2でFRBが6000億ドルの米国債券を米国内の銀行から買い取るということは、世界最大の米国債保有国である中国にとってみれば、米国債の価格下落による大幅な損失の他に、アメリカからのホットマネー流入で国内にハイパーインフレを引き起こす懸念すらあった。
・ASEAN問題の専門家、李文研究員曰く「中国を取り巻く東アジア諸国に米軍が駐留し、軍事的に中国包囲網が敷かれたとしても、それは致し方ないと思っている。何せアメリカの軍事費(6980億ドル)は、その下の第二位から第十五位までの『軍事大国』の軍事費の総和より多額なのだ。…だから中国は、軍事力ではなく、周辺諸国・地域に『経済包囲網』を敷いて対抗する。…この先、東アジア諸国で戦争が勃発しない限り、軍事的プレゼンスよりも経済的プレゼンスの方が勝るはずだ。」
・「アメリカはわが国の『新旧二つの生命線』を断とうと目論んでいる。一つは南シナ海の延長線上にあるマラッカ海峡で、このわずか幅2.4kmの海域をわが国に輸入される原油の8割が通っている。アメリカ軍のオーストラリア駐留は、このマラッカ海峡を威圧しようという狙いだ。わが国のもう一つの生命線が、新たなミャンマーラインだ。リスクのあるマラッカ海峡を通らずに中東からの原油を運べるよう、わが国は2013年に、ミャンマーから直接、雲南省へ原油と天然ガスのパイプラインを通すべく、工事を開始している。今回のクリントン国務長官のミャンマー訪問は、これに楔を打ち込もうという意図なのだ。」
・中国マクロ経済学会の王建事務局長。
「アメリカは製造業を放棄し、新たな資本主義の形態、すなわち金融商品依存型の社会を築いた。それで大量の国債を発行し、それを世界に買わせる事で生命を維持している。つまり国債発行を拡大していかなければ生き残れないので、今後も国債を増発しまくる。
こうした方針のアメリカは2010年来、ドルの存在を脅かしつつあるユーロを叩いてきた。ユーロ危機を誘発し、ギリシャやイタリア経済に打撃を与えたのだ。その矛先は次に、中国に向かうはずだ。中国はまず、輸出産業が被害を被る。欧米向け輸出が減り、元高ドル安が加速し、それが景気減速の要因となるだろう。さらにインフレ圧力も強まる。
ドルの死はアメリカの死を意味する。だからアメリカはあらゆる金融政策を使ってドル防衛を図る。それでもダメなら戦争を起こすだろう。中国は一刻も早く体制改革を進め、このアメリカ発の危機に備えねばならない。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
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【要約】
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【ノート】
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【選書者コメント】中国人が読んで笑う中国の現実。スローガンだらけの本より百倍価値が高い。
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中国は、底なし沼のように、足元は不安定で、
掬われるところがある。
杜撰の上に、杜撰を積み重ねている。
そのために、住宅は ホーンテッドマンションとなる。
天井に照明は、突然落ちてくる。
なぜか、部屋が水浸しになる。
電気製品は、突然、火を吹いて壊れる。
まさに、ワンダーランドである。
一方で、そのような杜撰な、マンションでも、不動産として、
値あがっていく。
そのうえ、街は、工事現場ばかりで、交通渋滞。
動くにも動けないのだ。
そういう中で、日本人駐在員は、まさにノイローゼとなるしかない。
中国人のカネの執着は、周囲への不信の裏返しなのだ。
通訳は、 〈日本語〉がわかるということでなく、
自分のいうことを聞く人材が欲しいのだが、そういう人はいない。
一人、一人が、龍となっている。
アリババグループ馬雲董事長はいう。
就業規則は、『嫌なら辞めろ、いるなら従え』
中国で成功するには、トロイカ方式がいる。
日本本社に顔が利く人
中国事情に通じている人
企画立案と報告書ができる人。
習近平は、団派と太子党のバランスで、生まれたが。
アメリカと中国との覇権争い。
IMFを、めぐる攻防が、中国の戦略的な所以ですね。
日本は、ここまで考えていないことを痛感。 -
日本人の感覚から中国をみるときに
生活の話をする人は多い。
この人の生活の話の場合は
特に、各種騒動の「その後」や「背景」の分析が面白い。
私が中国にいた時は
ホテル暮らしの域を出なかったが
実際に住んでみるのはまた違うんだろうな。
この本のように社会階級のつくられ方まで、
日本人視点を貫いて突っ込んでいるものは
あまり無いように思う。
中国の新聞を久しぶりに読みたくなった。
しかし、この人の日中問わず凄すぎる人脈は
一体どうつくられたのか・・・
そちらのほうに興味がある -
中国外交とはすなわち対米外交である。あらゆる二国間外交や多国間外交は、対米外交に通じる。アメリカにどう挑むかが、今世紀のい中国外交の最大の課題である。
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著者は、講談社の中国子会社の経営をしている方で、最初の方は、中国のさまざまなでたらめな交通ルール、生活習慣、雇用況などが、軽いタッチで描かれている。
後半はうってかわって、中国とアメリカとのせめぎ合い、圧倒的に軍事的には米国が世界一だが、中国のプレステージが特に経済で高まってきており、人民元のレート、米国への中国投資の抑制、WTOの中国の位置づけの対立など、最近の中国の攻勢を記述している。
TPPについても、米国側につくかどうかという観点から、冷静な判断が必要。
米中との間合いの取り方が、日本の政治、経済の面からも微妙なさじ加減が大事。少しずつ、中国にシフトしつつ、米国の怒りも買わないという微妙で継続的かつ戦略的姿勢が重要。
今の政権でできるか。 -
これはお薦め。でも2012年前半に読まないと鮮度が落ちてしまうかも。
中国と米国の対峙について時系列で事実を示されると、なるほどと思ってしまいます。