幕末 もう一つの鉄砲伝来 (平凡社新書)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582856552

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  • 和流砲術とは◆砲術継承と外圧による新流派の台頭◆藩政改革の立役者◆ちらつく西洋流の影◆第二次鉄砲伝来の衝撃◆ロシア軍艦デアナ号の大坂来航◆維新の変革と和洋砲術の顛末

    著者:宇田川武久(1943-、東京都、国史学者)

  • 日本史上、鉄砲伝来は二度あった。1543年の第一次鉄砲伝来は戦国時代の戦法を一変させ、織田、豊臣、徳川へと続く天下統一を加速させた。そして幕末の第二次鉄砲伝来は西南雄藩の急速な軍制改革を実現させ、ついには幕府の軍事力を凌駕して明治政府を樹立するに至る。故に幕末史となると、第二次鉄砲伝来による西洋流砲術を取り上げることが多い。しかし、江戸開幕以来250年にわたって、日本で砲術といえば第一次鉄砲伝来の伝統を継ぐ和流(南蛮流)砲術であった。本書は、近年全容が明らかになった和流砲術の一流派関家の文書を通じて、幕末の和流砲術家たちの動向を克明に描く。異国船襲来に備え海防に奔走し、強力な西洋流砲術への対応に追われ、幕末の動乱を経て明治二年の和流砲術廃止を迎える。天下泰平の時代にお家芸と化した日本の砲術と、戦争に明け暮れ飛躍的に発展したヨーロッパの砲術。そして後者を採用した明治日本は、そのまま戦争の時代へと突入していくのである。

  • 和流砲術家の関家に伝わる史料を読み解き、幕末の軍事史に新たな光を当てた労作。従来、新式西洋銃が輸入され国内の軍事バランスが大きく変わる過程については膨大な研究があるが、その一方では、和流砲術も盛行が続いていたのだという指摘がとても面白い。火縄銃を西洋式に改造し使おうとする努力もあり、和流がすぐに廃れたわけではなかったのだという。こうした努力が新しい軍事技術導入の遅れをもたらすという皮肉な結果になったという点が、大いに興味をひいた。

    ところで、砲術は幕府・藩とは独立に家塾の形をとって、秘伝として継承された。別々の藩の者が同じ流派の門下生となるわけで、特異なコミュニケーションを作られたようだ。このあたりも幕末史を読み解く上で、重要な部分だということがわかった。

  • 第一次鉄炮伝来は天文12(1543)年以降であるが、第二次鉄炮伝来を著者は、嘉永6(1853)年のアメリカのペリー艦隊の浦賀への来航ととらえている。
    「火薬をもちいた鉄砲による武芸を砲術とい」い、江戸時代を通じて盛んであった和流が、西洋流が普及し下火となり、明治2(1869)年の古流武芸の停止令により終焉を迎える。
    幕末を生きた和流砲術師範の関流宗家、三代の事績を資料に基づき丹念に追うことで、西洋流と和流からなる「幕末の砲術社会の全体像」を明らかにする。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。國學院大學大学院博士課程修了。国立歴史民俗博物館教授を経て、現在、同名誉教授。日本銃砲史学会理事長。
主な著書に、『瀬戸内水軍』『日本の海賊』『東アジア兵器交流史の研究』『鉄炮と石火矢』『江戸の炮術』『鉄砲と戦国合戦』『真説 鉄砲伝来』『江戸の砲術師たち』『幕末 もう一つの鉄砲伝来』『鉄炮伝来』ほか。

「2022年 『日本銃砲の歴史と技術 第二版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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