カイロ大学 (ベスト新書)

著者 :
  • ベストセラーズ
3.80
  • (2)
  • (4)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 50
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584125694

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • カイロ大学が話の中心とはいえ大学の内容よりも、エジプト人の近代化へと進む過程にぶつかるアイデンティティーの模索(自身をアラブ人を軸として考えるかイスラム教を軸として考えるか)が、日本の近代化の時の苦しみ(欧米人の自我と日本人の自我の違いなど)と同じと勝手に解釈しながら興味深く読みました。
    エジプトではカイロ大学の理念の揺れ動きによって(時代によって支持する思想が変わっていくので)時の政権と軍事衝突を起こしているようです。
    そうした流れでアルカイダやISが生まれたらしいが、それを踏まえて考えると彼らには国の概念が無いのも頷けました。
    人間を国や民族ごとに分けて考えるのではなく、信仰している宗教によってまとめあげようとしているのかと。かつてのイエズス会を思い出して怖くなってしまいました。

  • ベスト新書らしからぬテーマなのだが、持ち込み企画ではないらしい。編集は小池百合子の話をメインにしようと思ったのだろうが、とんでもなく濃厚な作品に仕上がってしまった。それでもベスト新書の色が出ているのは著者が研究畑ではなく、ネタ系の国際本を多く手がけているからか。元在校生として中田孝をリスペクトしているが、小池をぞんざいに扱っている訳でもない。著者と小池は入学の経緯は直談判ということで共通しているらしい。在校生27万というのは世界最大規模なのかどうか分からんが、UNAMやブエノアイレス大はそれ以上だったかな。日大は10万と言われていたけど、7万程度なのか。カイロ大のウィキでも有名人ザクザクが分かるが、中東プロパーの人たちにとっては、別格になるんかな。アズハル大、カイロ・アメリカン大という両極とは違って、全てを包容するのがカイロ大ということになるんだろうが、著者が在籍したアメリカン大の記述はあるが、アズハル大は何で詳しく言及されていないんだろう。逮捕勾留の武勇伝は何とも言えんけど、大学と出身者の記述は素晴らしい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/690052

  • エジプトは、日本人の私をそのままで受け入れてくれるなど、多様性の高さを感じた。その根底がわかるような内容であった。様々な時代を様々な考えをぶつけ合いながら乗り越えてきたエジプトは奥が深い。他の中東国のように一辺倒ではない。
    カイロ大学出身の友人が「日本を嫌いになることはないですよ。」と穏やかに言うその言葉も、この本を読んでみるととても深い言葉に思える。
    また、今世界中で起きているイスラムにまつわる事件に、カイロ大出身者がからんでいることもわかった。よくあることだけど、最初に考えをもって行動した人と、それに影響されて行動した人では、どんどん考えがずれていってしまい、混乱につながる。

  • Kindle

  • 文春20180308掲載

  • 【混沌に学んで】ヤセル・アラファトやサダム・フセインが在学したこともあるエジプトのカイロ大学。実際に留学経験を持つ著者が,何故に同大学が「世界最強」であるかを熱狂的に語り記した作品です。著者は,『日本は世界5位の農業大国』等の著書でも知られる浅川芳裕。

    留学記としての面白さはもちろんのこと,一味違った中東近現代史の紹介本としてもオススメ。特に,カイロ大学の興りとエジプトのアイデンティティをめぐる問題の記述は非常に勉強になりました。

    〜カイロ大学とは自分を信じる若者にとって,底知れない漆黒の海のようなものかもしれません。〜

    「著者は,読者が本作品により実際に留学したことに伴う諸々の責任を負うものではありません」という但し書きは必要な気がしますが☆5つ

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

1974年山口県生まれ。作家、翻訳家、ジャーナリスト

「2017年 『これからの地域再生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

浅川芳裕の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×