しろい虹

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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784584130490

感想・レビュー・書評

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  • 短歌を詠んでいるような、石田千さんの文章。私の好きなひらがなで語られる話し言葉。優しくて、柔らかくて、それでいてしなやかで透明。

    最初に短歌づくりを教えていただいた牛さんが、まずなんでも良いから小説の冒頭を書いてください、次にその中からここぞと思う箇所があるなら、力まずにグーっと31文字に凝縮してください。

    そうなんです、最初の文章が、この石田千さんみたいな言葉でつづれたら、どんなに短歌が広がるか・・・羨ましい限り、憧れますな。

    この本、図書館の本ですが、是非手元に置いときたくなりましたな。

  • 『傘を持って出ると、振らないことになっている。大雨強風注意報が出ています、一時間に30ミリです。ラジオにおどかされ、こうもり傘をひきずって、電車を降りたら、夕空は色つき綿あめのように明るかった』ー『アワ』

    『そんなときに、だれかが作ったものを見ると、よくわかる。そのものに向きあっていられない。なんでも言葉にしたくなるときが、あぶない』ー『タビ』

    石田千の言葉は捉えどころがない。文字の並びから言葉を立ち上げ、それを繋げて文章として追いかける。そのひとつづきの流れのどこかでいつも、何かが逃げてゆく。意味を読み取ることもなく、音を追いかけるでもなく、いつの間にか、ぼんやりと頁をめくっている自分がいる。あわてて頁を元に戻して既に「見た」筈の言葉を捜す。確かここにこんな言葉があった筈だ、と自分の意識は訴える。けれど、お目当ての言葉は見つからない。目隠しに会ったような気分になる。

    何度も何度もそんなことをくり返しながら、少しずつ読み進んでゆく。掬い上げる。捉えどころのない文章の中に、静かに佇んでいるかのような、感情のわずかな動きを察知して捉えようとする。そうしてそうやって得たものを抜き出して脇へ置いてみると、そこに実は随分と大きな気持ちの揺らぎがあることを知る。

    どうしてそんなことにすら気付かずに、通り過ぎてしまいそうになったのだろう。しかし今度こそ大丈夫。これで解った。この流れの行き先を見定めたようなつもりになって、再び読み始める。すると、やはり再び迷子になる。

    友人や知人や近所の人々が登場しても、ここにあるのは圧倒的な一人という存在。それだからといって、この少しばかりさみしい気持ちが滲んでくるような文章から、孤独、というイメージが立ち上がるかといえば、そんなことはない。むしろ、世はなべて一人、という清々しい宣言のような声さえ聞こえてくる。

    その宣言は、自分が「その」世界の中心にいることを意味している。ならば、もっと自分の周りに存在するものや、そこに生きている人々、鮮やかに咲く花々に見を配ろう。自分が中心にいる世界においてそれらに輝きを与えることができるのは、自分だけなのだから。それは潔く、明るい。といっても目を向けられないような眩しさではなく、暖かな明るさだ。石田千の文章にはそんなものがあるように思えてくるのである。

    『すべて手ばなしたように見えるただずまいにも、呼吸だけはかならずひそんでいる。そういう、ひとりという鳥と会い、足をとめる。いまの世の軸はここではないかと思うほど、くっきりとそばにいる。……しょせん、さいごはひとりなんだから』ー『トリ』

  • こんな暮らしいいなあ、と思う。
    でも心があせあせしているときには読めない。
    余裕があるときにまた、じっくり時間をかけて読みたい。

  • 自分に余裕がないと読めない本だなぁと思う。購入から半年近く経ってようやくじっくり文字を追えるようになった。
    ふわっとしたとらえどころのない表現が目立つけれど、著者の身の丈に沿った生活をしみじみと感じられるところはやっぱり好き。自分にとってみれば特筆すべきことのない日常も、観察力を養えばこんな風に見えたりするのかしらとこっそり思っている、今日この頃。

  • 冷蔵庫や台所、窓辺、布団。そんなのが見える。
    石田千さんの生活感にぶわっと包まれて、最後の方にはもうお部屋に訪問したことがあるような気分に。
    翌日のポテトサラダのサンドウィッチ。こんな生活がしたい。

  • やさしい文章で日々の暮らしを切り取ったエッセイ。
    日常でありながら現実味が薄く、どこか夢の世界をふわふわと漂うような気持ちがする。
    一篇ずつ、ていねいにゆっくり読み進めるのがちょうどいい。
    美しい情景が目に浮かび、そこから哀愁のようなものを感じられるのが心地よかった。
    お気に入りは『クモ』。

  • ただ文字を追っているだけで内容が全然入ってこなかった。読み終えるまでに時間がかかった。
    他の方が書かれてるように、ゆったりと読める心境の時じゃなきゃダメなんだと思った。

  • 2013 5/14

  • 接続詞などが少ない不思議な文体。
    何気ない日常を切り取ったエッセイだけれど、読むのに少々苦労し、読み進めるのが困難だった。

    ちょっとだけ、私とは毛色が違ったみたいだ。

  • 2012/04/28
    自宅

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著者プロフィール

石田千(いしだ・せん)
福島県生まれ、東京都育ち。國學院大學文学部卒業。2001年、『大踏切書店のこと』で第1回古本小説大賞を受賞。「あめりかむら」、「きなりの雲」、「家へ」の各作品で、芥川賞候補。16年、『家へ』(講談社)にて第3回鉄犬ヘテロトピア文学賞受賞。16年より東海大学文学部文芸創作学科教授。著書に『月と菓子パン』(新潮文庫)、『唄めぐり』(新潮社)、『ヲトメノイノリ』(筑摩書房)、『屋上がえり』(ちくま文庫)、『バスを待って』(小学館文庫)、『夜明けのラジオ』(講談社)、『からだとはなす、ことばとおどる』(白水社)、『窓辺のこと』(港の人)他多数があり、牧野伊三夫氏との共著に『月金帳』(港の人)がある。

「2022年 『箸もてば』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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