全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】

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  • / ISBN・EAN: 9784584139066

感想・レビュー・書評

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  • 基礎編の続編。
    戦略とあるが、前回の基礎知識の補完をしながら、日本の政治と行政のストーリーに沿って話が展開される。
    平成の施策の事実が整理され、新しい時代ピボットを予感させるん。
    ただ、現実はとなるので難しい舵取りを迫られているので楽観視はしづらい。
    言っていることは概ね正しいだろうが、これも論理の枠組み。
    結局は相手は人なので感情として国民が財務省が政治家が選択できるのかにかかっている。
    この感情を汲み取れる人が出てこない限りは、将来悲観的だろう。

  • コペルニクス的転回とはまさにこの本のためにある。

  • 分冊してあるが、下巻に上巻の内容がまとめてある。「戦略編」と題した下巻だが、実際には基礎編で書いた経済の基本とMMTを昨今の緊縮財政および新自由主義ネタにあてはめて論じ、各界の失策、迷言をMMTの立場から正すというもの。

    著者の主張は明解でデフレ脱却に必要なのは、貨幣供給量増加と大規模な財政政策(アベノミクスでは財政政策が民主党時代とかわらずこれでは不充分)。これだけ。
    下巻にはデフレを進行させる悪手がいろいろ書いてある
    技能実習制度による低賃金労働、TPPでの低価格競争と貯蓄加速、構造改革を謳うレントシーカー増加。
    わけても巷間はびこる財政再建は徒労の道である。税収は税率×国民所得だから、増税で不景気になれば税収を増やせず財政再建は叶わず、悪循環に陥る。

    上巻ではおもに従来経済学の主流「商品貨幣論」の誤りとそれにかわる「信用貨幣論」の視点からデフレ下の財政政策を論じている。
    主流派経済学における理論・一般均衡理論とは
    ・セーの法則に基づき、供給は常に需要を生むとされる。リフレ政策での流動性の罠に陥る
    ・信用貨幣のない物々交換の世界モデル、銀行制度も想定なし。これが金融危機を予測できない理由

    ほかにもリフレ政策下での経済学者たち(黒田、岩田、浜田)を批判している
    ・リカードの定理に基づくTPP擁護論。輸入品の安物買いで残った金は、デフレゆえ貯蓄にまわる。
    デフレ下でのグローバル化自由貿易路線は悪手。
    歴史的にみて日本は貿易立国ではなく、内需大国である。大局的には、19世紀末からすすんでいたグローバリズムは戦争で一旦途絶し、GATT主導のマイルドな保護貿易へと移行。80年代以降再びグローバリゼーションへむかい今に至る。結果経済成長が鈍化し、格差が拡大した。このへんはピケティ本に詳しい

    ■下巻・戦略編
    ○MMT解説がコラムのように小刻みに挿入されている。まとめておくと
    ・貨幣=負債(クルーソーとフライデー)
    ・税は財源ではない。税金は物価調整、格差是正、政策ターゲット(炭素税など)に使われる。
    ・通貨の価値を保証するのは徴税権力(これが従来経済学との大きな違いか)
    ・自国通貨建て国債は破綻しない
    ・MMTが登場する背景に、従来経済学で説明できない事象が増えた事が挙げられる。
    80年代以降、組合弱体化、自由化による競争激化、グローバリゼーションによる低賃金労働流入、金融規制緩和、投資家優遇コーポレートガバナンス改革により金融市場が発達すると、労働分配率が低下した。政策的にマネーを増やしても金融に流れて実体経済にまわらない(需要不足。「紐では引けるけれど押せない」)。
    ・MMT拒否論の背景にあるのは「赤字」「負債」への心理的拒否反応、変化を嫌うセンメルヴェイス反射
    ・いまのとこノーベル賞級の経済学者からの批判も殺到している

    下巻の主眼である過去30年の財政政策の失敗を説明するため、成長の2つのモデルを紹介している(アメ型とムチ型)。要約すると、デフレ下でムチ型政策を行うと、互いに限られた利益を食い合う(ゼロサム)インセンティブが働き(レントシーキング)、それは個別に見れば合理的だが政府が金をばらまかなければ縮小していく一方(合成の誤謬)。こうした政策を取るに至った背景には、民主運動を背景に大規模な財政出動がもたらした赤字国債への懸念(ハンチントンの議論)、70年代インフレ下で行われた財政再建の経験、金融街・保守との接近、官僚の弱体化などがある。
    以外各論メモを残しておく

    ○成長の2つのモデル・アメ型とムチ型
    ・アメ型。賃金主導型ともいう。労働者が不足していて賃金上昇圧力があると、コストカット以外の方法でのりきろうとする。この賃金上昇圧力が制約になり、高付加価値商品を生み出す。それが経済全体の底上げにつながり、労働者の賃金上昇に伴って消費も活発化し好景気、インフレ化する。

    ・ムチ型。利潤主導型ともいう。労働者を競争させて最低賃金で働かせ(底辺への競争)儲けを出す。グローバルに安い人材を求め、デフレ化を促す。技術開発のインセンティブもなく、新しい技術はほかから買ってきて済ませる。賃金は上がらず、経済全体は停滞する。デフレ化すると利潤は内部留保にまわり、利潤のおこぼれトリクルダウンは実際にはおきない。「小さな政府」「規制緩和」「自由化」「民営化」「グローバル化」「健全財政」などがこれに当たる。
    日本は30年間ムチ型で労働者をしばきまくっているが、本来必要なのはアメ型。ただし賃金上昇、インフレを嫌う富裕層、経営層は、ムチ型を好む。それが政策に取り入れられると、財政健全化、消費増税やむなし、法人税引き下げ(国際競争力強化に資するから)にむかう。ついでに移民政策でやすい労働力を手に入れようとする。
    デフレ下でムチ型をとると様々な弊害がある。

    ○レントシーキングrent seeking、ロビー活動
    デフレ下でたまるルサンチマンにたかる「改革派」の典型は、民営化政策。利益を受けられるのは一部だけ(ゼロサム)だが、あらゆる既得権益をターゲットにしてそのうち「日本人」という既得権まで切り崩されるのは時間の問題とも。そもそも日本の規制は国際的にみて比較的ゆるく、規制緩和が必要なかった。にもかからわずムチ型・新自由主義的改革路線をひた走ったのは、官僚機構やイデオロギーなど理由がある
    ○官僚
    そもそも55年体制以降政党優位で、与党審査で予測的対応を練って法案を通してきた。族議員と調整型官僚の連携で政治と行政の境界が曖昧になっていき、80年代以降改革派官僚が現れその筆頭・古賀が内閣人事局をつくり「執行するだけ」官僚をふやしていった。
    日本はもともと政治主導で政策決定してきたのに、「官僚主導」「官僚主義」といった仮想敵を掲げて官僚たたきをしてきた。
    ○財政破綻
    大規模な財政出動を議論する際必ず出てくるのが財政健全化。元をたどると、1970年代ハンチントン、ブキャナンが唱えた、財政赤字と民主制の暴走論。ただしこれはインフレ下の議論だったが、デフレ下の日本でも緊縮派に影響をもっている。
    財政法四条第一項にある均衡財政規定。これは赤字財政は戦争につながる、という論理から9条の戦争放棄を裏書きするため盛り込まれた。
    これは固定相場制では意味がある(経常収支が赤字になると外貨不足になる)。しかし73年変動相場制になってからは、経常収支が赤字でも調整すればいいだけ(円安になり輸出伸び)で、財政赤字懸念は必要なくなった。
    ただし列島改造論と石油危機でインフレ化した70年代、大蔵省は財政赤字削減に奔走し、インフレ化なのでこれは政策的にも間違っていなかった。問題はこの後。
    新自由主義経済政策が流行る80年代、金融街が発達しウォール街とワシントンの頻繁な人事交流「回転ドア」が行われ、政官財学エリーティズムの認識共同体が出来上がっていく。

    ○保守と新自由主義の親和性
    自由化を極限まで推し進める新自由主義と保守は本来折り合いが悪いはず。雇用の流動化は労働者どうしの絆、地域共同体をもろくさせ、財政再建は失業を増やし格差助長、グローバル化は文化や伝統を破壊する。それなのになぜこの30年保守=新自由主義的政策がおこなわれてきたのか。
    ハンチントン議論があった時代を改めて確認する。ベビーブーム世代が権威を否定、政治参加や福祉を要求して財政赤字拡大、労働組合が強く賃上げ好調だった。インフレ圧力で増税が必要になるも民主政が拡大中で抑えがきかない。こうした背景から民主政治は抑え込み必要という結論に至る。これは反体制運動を嫌う保守派にも影響を与える。
    そもそもインフレ要因が民主政と関係なく当時の戦費拡大、石油危機、変動相場制移行が原因?だったかともかく、インフレ=民主政治の過剰という通念がつくられていく。
    80年代にはいり、インフレを抑制したい、という懸念から新自由主義と保守と結びついて保守政権の新自由主義政策が流行り始める(サッチャー、レーガン、中曽根)。これがインフレを嫌がる経済界、富裕層にうけてやめられなくなる。とくに平成日本ではデフレになり経済政策としてはアメ型の大きな政府による民主社会主義が必要だったのに、左右イデオロギーが邪魔をして転向を見誤った。
    こうした対立と混乱はリベラルにもみられる。リベラルは労働問題からアイデンティティへ、連帯、平等より個人の解放へとその関心をうつしてきた。既得権益、権威主義を攻撃するため規制緩和に与し、グローバル化にも積極的などムチ型支持。結果国内労働者を守れなかった。
    保守・革新どちらにおいても支持された新自由主義経済下の政策論争は、対立軸をなくしてどんどん似かよっていく。各国グローバリズム対応、トランプ、ボリス、マクロンにも似たような構造がみられる

  • 九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
    https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1335505

  • 基礎編では日本が陥ってしまった現状とその解決策が紹介されていた。この様な解決策があるなら何故実行に移さないのか、またその様に考える人は少ないのかと疑問に思った。
    戦略編では思想的な側面から、何故日本をデフレ→適度なインフレへと向かわせることが難しいのかということが解説されていてわかりやすかった。

  • 基礎知識編と同じ内容が書いてあります。

    異なるのは下記の4つの要素によって認識が歪められていると主張しています。
    「レント・シーキング活動」、「認識共同体」、「センメルヴェイス反射」、「経路依存性」
    これらによって、これまでの日本の経済政策に誤りがあるのに転換させることができていないと主張しています。
    (海外諸国に関してもですが)

    人間の脳はとても不合理である。
    その一言に尽きる書籍です。

    最終的に、ではどうすれば著者の指摘の通り日本人の経済政策に関する考えを切り替えて、デフレ脱却に向けた行動に移すことができるのか、
    著者は「新時代へのピボット戦略」=行き詰まった際の方針転換 こそが必要だと主張します。
    代表例として「令和の政策ピボット」や「薔薇マークキャンペーン」を挙げています。

    これはとても弱い主張に感じます。
    基礎編、戦略編、500ページ程を使って日本政府の政策の誤りに対して、どのように今後対応すればデフレが脱却できるのか、に対しての回答があります。

    しかしながら答えがわかっているのに実行するのがとても難しいと戦略編の200ページあまりを使い説明したのにも関わらず、どう考えをピボットさせて実践すれば良いのかがありません。
    そんなんこっちのが正しいんだから考えればわかるっしょ!的なニュアンスなので。

    著者の言うように人間の脳はとても不合理だからそうなってるわけですよね?
    それじゃあ誰も変われないじゃないですか。

    著者の主張するところの、レント・シーキング活動及び認識共同体によってつくられた常識が経路依存性によって形つくられ、センメルヴェイス反射によって拒絶反応を示す現段階においてどう解決するのかが弱すぎます。
    結論が「ピボット」です。
    で何か変わるわけがないでしょう。

    デフレ対策に関しては、経済学者ではなく、心理学者や行動経済学者の領域かと感じます。
    ぜひタッグを組んでもらいたいと感じました。

    行動経済学者が語るMMTに関する書籍も漁ってみようと思います。

  • 『経済政策というものは、どうやって決まっていくのか?おおざっぱに言って、二つの説がある』
    ・「思想決定説」
    発想の元となっている思想が、経済政策を決めている。経済政策が180度間違っているのは、経済思想が180度間違っているから。したがって経済政策を改める戦略とは、思想を改める戦略である。
    ・「政治決定説」
    背後に、政策を動かしている勢力がいる。その勢力が、自分たちの得になるように政策を決めている。180度間違った経済政策が実行されるのは、一部の間違った政策によって甘い汁を吸うことができる勢力が政治を動かしているからだ。したがって経済政策を改める戦略とは、政治を改革する戦略である。

    『合成の誤謬(ごびゅう)』
    ミクロ(個々の企業や個人)の視点では正しい行動でも、それが積み重なった結果、マクロ(経済全体)の世界では、好ましくない事態がもたらされてしまう現象。
    デフレ下での支出の切り詰めという正しい行動が、さらなる需要縮小を招き、デフレが続く。
    このデフレという合成の誤謬を回避するためには、誰かがデフレなのに支出を拡大するという経済非合理的な行動を起こさなければならない。
    それは誰か?それは、『政府』にほかない。

    『一国の成長戦略には、二つのタイプがある』
    ・「賃金主導型」(アメ型)
    賃金の上昇を労働者に対するアメにして、国民経済全体を成長させようとするもの。積極財政。
    ・「利潤主導型」(ムチ型)
    解雇や賃下げの脅しを労働者に対するムチにして人件費を抑制し、企業がより稼げるようにし、経済を成長させようとするもの。緊縮財政。
    平成からのデフレ日本にはアメ型の政策が必要なのにムチ型の政策を進めてきた。
    なぜか?ムチ型で利益を得る人がどこかにいる…


    デフレ脱却には財政支出を拡大して、アメ型の成長戦略を実施し、緊縮財政から積極財政へ転じる。
    そして議論を通じて人々の考え方『思想』を動かし、そして『政治』を動かし、経済政策を動かす。
    民主政治とは、本来、そういうものであるべきである。


    「基礎知識」の続編。内容はぐっと本格的になり専門用語もいくつか出てきて難解になり、
    付箋だらけに。
    中〜後半にかけて、実名で経済学者をバッサリしているのは、基礎知識と同様。
    MMTがよくわかる付録付き!これが凄くわかりやすく、たくさん出発されているMMT関連本を読むよりオススメ。

  • 基礎知識編の補足説明のようであまり発見感はなかった。確かに膨大な財政赤字を考えずにインフレになるまで積極財政を行ってみるというのは革新的でおもしろい。問題はこれまでの発想を大胆に転換させて実行できるかどうか。円の価値が暴落するリスクも大いにあると思う。いずれにせよ賃金主導型の労働者保護を重視した社会への転換が求められていると改めて思った。

  • 干されている。先生のご経歴はつまりそういうことなのだろうか。

    ところで新自由主義や主流経済学の問題は赤ん坊である我ら人類を神のごときに見誤っている点にある。別にそれ自体が普遍性を持つ反民主というわけではない。己が誰かも知らず隣人とすらコミュニケーションの難しい私たちが貨幣という強大なエネルギー体とどうにも渡り合える訳がないだろうという話だ。

    自己が確立できた上でのグローバリゼーションは理想に違いない。だがそれは己を完全に理解した人類がようやく神のシステム、エネルギーを操れるという段階に達したことを示す。

    現代貨幣理論は主流経済学に、まだ赤ん坊の私たちが不用意に外の世界に出たら死ぬよと言っているのである。ただ私たちにはあらゆることが早すぎる。
    ・・・という方向にしたら多少マシなのではないだろうか。全力で干されるよりは。

    ついでに、根本原因と解決すべきは何かということまで考えてみよう。

    太古の昔、人類は蟻や蜂などの社会性昆虫のようなメス運営型社会で、オスの仕事は昆虫同様に生殖と少しの力仕事のみであったという。

    ある日、神様に取り付けてもらった脳みそを悪用したオス、いわゆるカーストの下位に位置するモテないオスが「お前らはメスに騙されている」とその他のオスたちにそそのかしを吹き込んだ。安定した生活に誰も相手にしなかったがモテないオスの執念は凄まじく、吹き込みは何世代にも渡って続けられたそうだ。

    ある時、食糧難か災害の発生による社会の危機が訪れた。不安にかられたその他のオスたちは神様に取り付けたもらった脳みそを使えないままに、吹き込まれるように吹き込まれ陥落した。

    つまり彼らはアノミーに乗じた下剋上を狙っていた。これが今の社会の始まり。

    と神様が言っていた。(人間をそんな風に作ってないしうまくいくわけないだろう的な。たぶん神との対話3)
    ※原文だと神様も自分で何を言いたいのか分からないご様子だったので私の超訳

    この歴史はこの社会の組み立てられ方、私たちが今信じているものを見てもわかることだ。そして人類に活動というものが「あるとすれば」復讐の主体と客体による三文芝居。ほぼそれのみである。

    つまりレントシーキングは人類の発生から繰り返されているこのモテないオスの執念によるもので、人間という生命存在の根源に関わる根深い問題ということだ。

    神様がなんでそんなことをするのかは分からないが(分からないフリをするが)、私たち人類が直面している唯一にして最大のミッションがこれ。脳(騙せる能力)を取り付ければ畢竟こうなる。

    騙された果ては魂まで酷く傷つけられた死体の山と種の消滅。そして最悪なのがモテないオス達が最も傷ついていて、人を貶す事で自らを傷つけていることだ。はっきり言って他の問題は全て派生。本質ではない。私たちに問われているのはこの人類存続の審問のみなのだ。私から見れば。


    ついでに。
    不換通貨はいつかの時点では大衆心理によって担保されていただろう。信用創造の性質と人間の習性に鑑みればおそらくその時代はあった。たぶん徴税権力による担保に置き換えることができたのは「偶然」(ということにしておくが)の可能性が高い。

    つまり商品貨幣論は間違いというよりも理想論から現実的な在り方にシフトできるシステム或いはアイデアが誕生した。
    ・・という方向にしたら多少マシなのではないだろうか。全力で干されるよりは。

    先生大変だったろうな。これ書くの。私が全力でまとめておきます。

    【まとめ】
    ■構造改革(失敗しかしていない米国からの戦略輸入)の実情
    アメ型成長戦略(賃金主導型:労働者保護)=人件費がカットできないため高付加価値製品の開発促進。インフレ圧力(貨幣価値低)=格差縮小=ポジティブサム
    ↓シフト
    ムチ型成長戦略(利潤主導型:労働者非保護)=人件費削減、労働組合潰し、数量投入(高齢者女性移民)で賃金の上昇防ぐ。技術開発の投資なしに海外移転や買収で利益追求。デフレ圧力(貨幣価値高)=格差拡大=ゼロサム
    ■失敗戦略を輸入、続行する理由
    ・PFI(民営化PrivateFinanceInitiative「低廉かつ良質な公共サービス」と「民間の事業機会の創出による経済の活性化」by内閣府。はそもそも両立しない)→レントシーカーの既得権益(ex国営)を利用した庶民へのルサンチマン煽り
    ・吏員型官僚=改革派(AI的に楽に仕事したい:ムチ型採用)の台頭による調整型官僚(面倒な利害調整をする:アメ型採用)の駆逐
    ・内閣人事局(改革派官僚による創設)による官僚無力化(調整型官僚と族議員の関係から生じた官僚主導の誤解を利用)。→改革派(を装ったレントシーカー)による庶民へのルサンチマン煽り
    ・国家公務員の年功序列に対する改革派の庶民へのルサンチマン煽り→官への民間登用による回転ドア:政府部内の主要ポストにウォール街出身者を送り込み政府要人をウォール街に迎え入れるところから名付けられている
    ・財政健全化、法人税減消費税増税=貨幣価値高=レントシーキング
    ■勤勉なバカの理由(学べないエリート、経済に道徳や精神論(国民の品格)を持ち出す人格者≒民主政治制限論者)
    認識共同体≒洗脳はアップデートができない=古いやり方や集団の認識に固執するex主流派経済学→新自由主義に異を唱える者を消す
    メタファーが思考に影響を及ぼす脊髄反射(MMTのメタファー:財政「赤字」を拡大して良い、政府「債務」は増やしても問題ない)
    センメルヴェイス反射:少数意見を潰す反射。特に日本人に顕著
    ■保守が新自由主義と結びつく理由=インフレ恐怖
    ・米国から「インフレ=民主主義の過剰」の論理が流入(実際はベトナム戦争の軍需、石油危機の原油高、変動相場制へのドル安が原因)←フランス革命の反省から(民主主義に対する慎重な態度)
    ・60年代若者たちの反体制運動の過激化による社会秩序危機の記憶
    ■リベラルと新自由主義が結びつく理由
    ・1970年代:ソ連中国の体制に絶望→政治を分断する対象を階級からアイデンティティ(マイノリティの解放)に移行
    ・1990年代:連帯、平等から多様性、差異、個人の解放、エンパワーメント(新自由主義と親和性)
    ・サッチャー「社会なんてものは存在しない」
    ■イデオロギーの四元構造
    ・2016米大統領選挙:親グローバル右(共和党主流)/左(ヒラリー)/反グローバル右(トランプ)/左(サンダース)
    ・EUプレグジット:親グローバル右(保守党残留)/左(労働党残留)/反グローバル右(保守党離脱ジェレミーコービン)/左(労働党離脱ボリス)
    ■ポピュリズム台頭の責任:フェイクだらけのトランプ勝利の理由
    ・勤勉なバカ或いはレントシーカーエリートへのカウンター(世界的にポピュリズムは反グローバル運動)
    ■グローバル化による国家主権の制限(民主政治への優越)
    ・民主国家における国家主権は国民主権→グローバル化の深化=民主政治の後退
    ・フランス黄色いベスト運動、ヨーロッパ極右勢力の台頭→グローバル(反民主)vsポピュリズム(本来の意味では人民=民主主義)
    ■英EU離脱について
    ・マーストリヒト条約(財政赤字GDP3%以下政府債務GDP60%以下)は財政主権の放棄→ユーロの貨幣価値下げないため=デフレ
    ・2008年世界金融危機でマーストリヒト条約のため財政出動ができない結果、失業率の増大
    ■マーストリヒト,WTO,NAFTA,TPP等は立憲主義の発想を国際条約に応用したものと考えることもできる
    ・憲法=民主政治に制限をかける法規範=反民主的性格を帯びる=民主政治を無視、均衡財政の強制(貿易資本移動労働移動の自由等も制限できる)
    ・日本で言えば国際条約については衆議院だけで決められる→レントシーキング利用が可能
    ■主流経済学者のインフレ恐怖症の(MMTを受け入れられない)理由
    ・不換通貨は大衆心理によって担保されているとの考えから=ハイパーインフレ
    ・不完全な民主政治でなく完璧な市場メカニズムが経済をきれいに調整してくれる世界が理想だから。(中央銀行の主導独立による民主政治の影響を受けない物価調整が理想)
    ・不換通貨は政府の徴税権力によって担保されていると考えるのがMMT→徴税権力=民主政治。に対して反民主主義=エリート主義(世界的に)だから
    ■歴史の問題:経路依存の問題
    ・システム面:今更労働者派遣法の禁止やEU離脱は難しい
    ・イデオロギー面:終戦後の財政赤字の抑制に成功した官僚が自分と同じ後輩を人事の評価基準にする→デフレや災害時にも同じことしかできない

    読み終えたのでカバーを外したら表紙カバーのそでに大きく「私はどうなってしまうのでしょう?」と書いてあった。

    むかし、私の理論をこっそり丸パクリして発表した学者がいた(無論彼の親切心からである。私が底辺ゆえに)。学会から戻ってくるなりキレた。ぜんぶお前のせいだ。よく考えたら大統領全員暗殺されてるじゃないか。などと喚いていた。

    そりゃ先生も無事では済まないんじゃないかな。

  • 基礎編よりやや熱が(笑)
    政治的なイデオロギーとインフレ・デフレの話はとても面白かった。幹になる考え方を物凄くシンプルに伝える本。

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著者プロフィール

中野剛志(なかの・たけし)
一九七一年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。九六年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。二〇〇〇年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。〇一年に同大学院にて優等修士号、〇五年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)、『目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】』『全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】』(ベストセラーズ)など多数。

「2021年 『あした、この国は崩壊する ポストコロナとMMT』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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