トップランナーの図書館活用術 才能を引き出した情報空間 (ライブラリーぶっくす)
- 勉誠社(勉誠出版) (2017年7月31日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (315ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585200550
作品紹介・あらすじ
メディアアーティストもスーパープログラマーも小説家もバッタ博士もAI研究者も
みんな、図書館で「読んで」きた!
各界のトップランナーたちはいかに図書館で鍛えられたか。
彼らは情報空間から何を引っ張り出し、どのようにキャリアを築いてきたのか。
彼らは今後、何を目指していくのか。
そして、そんな知のありかたを支える情報基盤は、果たしてどのようなものだろうか。
飛び交う学術用語。初心者であっても読めるように配置された過剰なまでの註。彼らの情報行動を丹念に辿ると同時に、利用者の姿から図書館の価値を描き出し、未来への展望を探る。これまでにない視座からの、全く新しい図書館論、読書論、情報活用論。
感想・レビュー・書評
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日本の知の第一線で活躍される12名の方々への、「これまで図書館をどのように使ってきたか」をメインテーマにしたインタビュー。
幼少期からこれまでどんな本を読んできたのかという話題は、その人がどのように育ち、今に至ったのかを辿ること。
子供時代や学生時代、そして現在も、興味関心を持ったことに対しての切り込み方がすごい!
図書館をこれでもかと使い倒している方もいれば、ほとんど使わなかったという方もいますが、各々が情報を集めて、使って、発信する能力の高さは天下一品です。
トップランナーと呼ばれる人々のさまざまなエピソードに、いちいち「ひょえ~」と情けないため息をつきながら、圧倒されっぱなしでした。
また、個人的に、インタビューは堅苦しい雰囲気がある…という先入観を持っていたのですが、本書ではいい意味で裏切られました。
(笑)がたくさん登場し、さぞかしインタビュー当日は盛り上がっていたのだろうな、と感じさせてくれます。
インタビュイーと語りながら、著者が感じたであろう現場のわくわく感が伝わってくるところも本書の魅力だと思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
現在、様々な分野で第一線にて活躍されている方、その方たちが「どのように図書館と関わってきたか」ということに焦点をおいて書かれており、大学図書館に勤務する私には興味深い内容であり、久し振りに「グイグイ読みたい本」であった。この本の中に「ゲームか嫌いだからゲーム屋になれた」というインタビューの記述があるが、私自身も実は読書好きでは無いからこそ図書館を続けていられるのだと思った。
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図書館をテーマにしたインタビュー集…のつもりで読んだが、図書館利用体験の話がそこまで出ない人も。どちらかというと「読書」がテーマか。
考えれば当然で、図書館をあまり使わなかった人にとっては「使わなかった」ということが本人の体験。図書館中心ではなく、誰かの人生において図書館がどのように立ち現れたかを知るには、聴くものの総体はそのひとのライフヒストリーたらざるを得ない。
・落合氏:子どもの頃、近隣の図書館はホームレスが多くて嫌だったそう。図書館の空間に魅力を感じなかった人が、後半で未来の図書館を語る時「スペース」を挙げるのが少し不思議。都心と有料化というキーワードが、イメージされている理想を理解するポイントなのかな。個人ログのアーカイブという役割はなるほど。
・清水氏:成長に従い、市立から技科大の図書館へ移行していく過程が興味深かった。技科大の先生の図書寄贈を受けることで市立図書館の本が「そっち寄り」になっていた背景があったのだろうか。誰も連携とは呼ぶまいがそれも連携かもしれない。
90年代コンピュータに夢があり、今は無いという指摘。「昔は、実質は何もできないのにこれがあったら何かできるんじゃないかと思ってたわけです。今はできることしかない。」(p53)至言。
・前野氏:図鑑ばかり眺める子だったというのはイメージ通り。そういえば図鑑は読書感想文の対象にされにくい、その文脈でいう「読書」のある種のバイアスにふと気づく。
論文入手度皆無というアフリカの研究所での体験談、それに対して現在の所属機関での文献入手の実態。情報入手ということを、もっとも基本から考えさせられる。
・三上氏:作家として図書館での自著貸し出しに反感は無しというコメント。「新刊書店と図書館は役割が違う」という認識は、古書店勤務の経験に裏付けられているのかもしれない。
・竹内氏:大学生は本を読むことがカッコいい時代があったのだな、と思う。専門の底辺が小さくなってしまっているという指摘。「作家でも文筆家でも学者でも理想的な書庫や書斎を作り上げるっていうことは衰退の証なんだ。」(p124)
・谷口氏:公共図書館ではなく、私立中高の学校図書館の蔵書が最初に印象深い読書体験だったそう。記号創発システムの説明。何故そういう専門の人がビブリオバトル?というのはかねがね不思議だったので、マルチエージェントシステムによる探索活動という説明で腑に落ちる。文春新書「ビブリオバトル」のラノベ章、ご本人は結構思い入れがあったようなのだが、実は自分はまったく受け付けなかったので申し訳ない気持になった。
・結城氏:図書館利用体験は高校図書室のイメージが強い。静かな場であってほしいという指向。三上氏もそうだが、図書館での貸出に寛容な作家は、図書館利用だけでなく自ら本を買う(買ってもらえる)体験に恵まれているように思う。
・荻上氏:データに基づく議論、ネットに無い情報をネットに上げること。誠実な上っ面、議論の土地勘。「読書環境へのアクセス権を拡大するという使命も図書館にはある」(p200)。
・大久保氏:幼時は祖父に連れられ滋賀県立図書館のヘビーユーザ。確かにあの立地は、誰かが連れていってくれない限り子どもはアクセスしにくそう。英語が苦手だったのに青空文庫で翻訳を始めた話、10歳以上離れた大人との付き合いが面白かった話など、90年代終わりごろのネットならではのコミュニティ。
・大場氏:SF・マンガ・コンピュータ・歴史・科学史・満州国図書館…と幅広い関心の遍歴。電子図書館系の話題が出てきて、これを活用して面白い素晴らしいという方向で終わるのかなと思ったら、最後でなにかもっと深い哲学がほのめいた気がする。公共とは、インフラとは、みたいな。
・花井氏:「読む時間はほとんどないです。時間があっても読むのは本ではなく資料です。」(p260)読書は思い入れの対象ではなく、図書館というのはこの人にとって手段なのだなぁと思う。テレビのお仕事を通して実現していた何かを、実現するための。
・原田氏:引き出しの多さに目を白黒。80年代の情報検索の話題等は、ぼつぼつ歴史といっていいだろう。 -
図書館ユーザだけでなく、図書館職員にもインタビューを重ねながら図書館がどのように人生に影響を及ぼしているかを照らし出している。
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九州産業大学図書館 蔵書検索(OPAC)へ↓
https://leaf.kyusan-u.ac.jp/opac/volume/1398545 -
図書館情報学の研究者である著者による、様々な専門分野で活躍している12人へのインタビューをまとめた対談本。
インタビュー内容は幼少期から小中高、大学、社会人に至るまでの本または図書館との付き合い方について、仕事や自身の哲学を絡めて語るというもの。
図書館学(情報サービス論)の現状を知りたくて勉強のために手に取った身としては、図書館活用術という点ではやや弱い印象で、タイトルと内容がミスマッチであると感じた。
ただ内容は非常におもしろく、トップランナーたちの深い知性や思考力や知識への飽くなき欲求に畏敬の念を覚え、自分がいかに学んでこなかったかを悔いる読書タイムとなった。
本が好きな人はおもしろい。 -
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https://libopac.kamakura-u.ac.jp/webopac/BB00288606 -
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