- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784585215158
感想・レビュー・書評
-
・武士の精神、即ち士魂というものはいかなる逆境下においても烈々たるものでなければならぬとされている。武士道自体が死を前提にして成立しているから、本来的に武士は死を恐れる必要がなく、死の恐怖がなければ世に不可能ということはない、とするのが武士の行動原理の根本となる。
・武士道とは倫理である以上に美学。
・人は誰でも我が身が可愛いもの。しかし武士と生まれたからには、世のため人のために可愛い我が身でさえも捨てなければならぬ時がある。己れを愛していては、とても世のため人のためにその身を捧げることはできない。いわば克己とな、利己主義に基く自己愛というものをきれいさっぱりと断ち切ることに他ならない。
・益と無益をはっきりと分別して、無益な出費を抑えて、有益なことには適切に対処するのが武家の倹約の真意。倹約とはただ出費を抑えるのではなく、無益な出費を抑え、そこで浮いた分を有益な事には惜しみなく使えということ。
・己れの功を誇らず、常にへり下って相手を気づかい敬う時、武士道美はもっとも鮮やかに花開く。自己顕示とは無縁の所で己れの実力を涵養し、一朝事あらば万人に先がけてひとり起きあがり、己れの力の限りを尽くして戦い、尚、戦い終わって生あらば、その奮戦を誇ることなく、また静かな日常に戻り、ひたすらに己れの士魂を磨き続けることに武士の生きざまの真の美しさがある。謙譲の誠とは、相手がたとえ無礼をおかしても、己れは礼譲を守り通すところに至高の価値がある。相手がいかなる無礼非礼を働いても、己れはへり下って礼譲を尽くすところに侍ごころのたとえようもない美しさがあり、この美を感得できれば、武家美、武士道美の根幹を知り得たことになる。謙譲は向上心を養う。
・現代では衆に抜きん出て、人に目立つ人間をもてはやす風潮が強いようだが、武家社会では、目立ちたがり屋の軽薄者は日和見士、滅金士と呼ばれて軽蔑の対象でしかなかった。そもそも向上心とは、相手の教えをよく聞くことが根本。その時には相手を敬い、へり下った態度をとることが礼譲、礼節。軽蔑の誠を失くした時、向上もまた止まる。
・武士道には終点がなく、一生が修行。武士たる者は一修行者として謙譲の誠を堅持しなければならぬとされた。
・惻隠の情・・・優しさは正しさに裏打ちされねばならない。この優しさこそが武士道でいう「仁」である。詳細をみるコメント0件をすべて表示