- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784588350054
作品紹介・あらすじ
近年における歴史研究のさまざまな方法・アプローチを概観し、個々の研究者の提起する方法を内在的に理解し批判しつつ、歴史学の未来のために、それをいかに活かすべきかを検討する。歴史学における人文学的研究の多大な影響、歴史の主体の地球的広がりがもたらしたポストコロニアル的な観点など、E. H.カー『歴史とは何か』(岩波新書)以降半世紀の変化と発展をふまえて展開する史学方法論の好入門書。
感想・レビュー・書評
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日本外の史学史を知るに現状で適切な一冊なのだと思う。ただ原題「History in crisis?」と邦題「歴史学の未来へ」はなんかちょっと距離感があるような気も。
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現在の歴史理論が簡潔にまとめられていて、まさに「教科書」的と言える本。そういった点で、歴史学の読書案内としても非常に便利な本。逆に言うと、著者自身の歴史観を主張することは抑えられていて、この本自身を考察の対象とするのは難しいかもしれない。ただし、ポストコロニアリズムに対する可能性についてを強調している部分もある。
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確認先:府中市立中央図書館
19世紀のランケ歴史学がいまだに信じられている東アジアの歴史現場で一刻も早く学部学生のテキストブックとして活用することが望ましい一冊。ウィルソン自身、歴史学の方法論の現代史(と呼ぶべきかは私の中にも疑念が燻ったままである)と方法論のアウトライン記述の少なさを痛感しているようであり、これを他人事といって見落とすことは少なくとも評者にはできない。なぜなら、これは歴史学だけの問題ではなく、人文社会科学全体が意識しなくてはならない「伝え方」の問題なのだから。
歴史学の方法論を「荷物をまとめていなくなったルームメイト」の行方や背景を探ろうとする学生にたとえて説明する様は、比喩能力が以外に乏しい社会科学や一部の人文科学の研究者は盗み見してもまだお釣りがくるほど秀逸である。目の前の現象や一般社会の流行に戯れるだけの研究がなぜ貧しいと批判されるのか、その答えの一例を見たような気がする。