代読裁判: 声をなくした議員の闘い

  • 法律文化社
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784589036063

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  • 岐阜県中津川市議会で、2002年に声を失った議員が代読による発言を求めるも拒否された。
    はじめは「肉声以外認められない」として。小松さんはPCが使えないにもかかわらず、「PCによる読み上げなら認める」とする。
    その結果、“1期4年間の本会議で400回近く発言する熱心な市議だった小池さんが、2期目の4年間は1度も発言できずにいる……。(p53)”事態になる。
    声を出せない人の代替手段を封じることは、発言を封じることに等しい。
    つまりこれは障害者の人権(参政権・自己決定権)を侵害する行為であるとして闘われた裁判の記録。
    本人の話、家族や支援者の話、障害者からの声、弁護団の理論、などによって、どこがなぜ問題だったのかが説明される。

    小松さんは議員だった時に病気をして声帯をとる。
    その後、任期が終って代読による選挙活動でもう一期務める。
    てことは、声があっても無くても「この人を」支持した有権者がいっぱいいるってことだ。
    この人に発言させないことは、この人に投票した人の権利も踏みにじる。

    病後に最初に登壇した時のエピソードが辛かった。
    病気見舞いへの礼状を代読してもらうはずだったが礼状は配られただけで読み上げられず、その間ただ壇上に無言で立っていた。
    それから、話し合いを一方的に打ち切られても文字通り何も言えなかった話。
    で、『指先で紡ぐ愛』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4062113597と『音のない世界と音のある世界をつなぐ』http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4005007767にあったエピソードを思い出した。
    夫婦喧嘩をしても通訳はする、聴者の友人と喧嘩してもノートは見せてくれた。
    障害を利用してコミュニケーションを断ち切ることはしない、というのはもう人として守らなきゃいけない部分だと思う。
    そこをあっさり破る人が、それもいい大人が議員をやっているというのは、驚かないけど衝撃的だ。

    投げかけられた言葉、「(病気を治す・PCを使うなど)努力をしろ」「障害者として選挙に出たのだからこうなることはわかっていたはず」なども、差別の典型で胸が痛い。
    ※これはたとえば眼鏡使用者にコンタクトをしろと強要するようなもので、努力とかそれ以前にそもそもなぜ本人以外がそれを決めるのか、という問題。
    何時代の話よ?って思ったら今世紀だった。でもセクハラ野次も今世紀だった。そういえば日本はこういう国だった。

    複数の著者がそれぞれ論じてたものをまとめてあるので語られる筋自体は重複がある。
    理論部分は裁判言葉に慣れていないとすごく読みづらいのでちょっと読み飛ばし。
    一文が五行とか長すぎるよ…付録の判決文に至っては一文が一頁を占領しているよ…句点の存在を思い出そうよ…

    でも知るべき事件だから読んで良かった。
    視覚障害者の梅尾朱美さんの話をもっと知りたい。

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著者プロフィール

川崎和代(大阪夕陽丘学園短期大学教授)

「2014年 『代読裁判 声をなくした議員の闘い』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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