- Amazon.co.jp ・本 (153ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591121795
感想・レビュー・書評
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朴とは素朴の朴なのか?新美南吉の『嘘』ではまさに素朴の正反対のような少年が主人公である。本書のタイトルは意味深、というかよくわからない。61/100
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「耳かき抄」
妻とのやりとりなど、おかしい。
思わず笑ってしまう。
どうということもない日常の描写の様で、その中には不可解さや滑稽さが潜んでいる。
それが、物語の核となり、優しく明るい熱を発している。
そんな風に感じた。
どうこういう話ではない、かもしれない。
しかし、人間の生活を愛おしみたくなるような、心が和むような、素直さを感じる言葉運びだった。
「嘘」
少し前に、青空文庫で読んだ作品。
その時は、嘘をついてしまう太郎左衛門に注目して読んだ。
今回は、彼を見つめる久助の視線と心の揺れ、観察力、真っ直ぐな心にひかれた。
嘘を言う太郎左衛門すら、ありのまま理解しようとする視線。
そして、その立場から太郎左衛門を見ると、確かに彼はわけのわからぬ奴だけれど、全くの嘘つきでは無いのではないか、と思えるような気分になってくる。
太郎左衛門はなぜだか嘘をつく。
しかし、そこにはなにか、彼なりの真実があるのかもしれない、と思えるような、「悪」と決めつけきれない、割り切れない思いがするのだ。
少なくとも、彼の言葉の一部分には、なにかしらの真実なり思いなりがあるのかもしれない、という、捉えられなさからくる、久助の不安と混乱を感じる。
だからこそ、久助が最後にたどり着いた真実は、この先、久助自身を大きく豊かに成長させる糧となるのだろう。
今回は、そんなふうに読めた。
「南方郵信」
村の人々の、素朴な生活。
それぞれのキャラクターが融合した世界。
それぞれの居場所がある世界。
最後に広がる村の景色は、そこに住むすべての人々とその営みを受け入れて、穏やかに続いていく、時の流れを思わせる。
本当に人に必要なものは、実はとてもシンプルなのだろう。
そういう思いがわきあがった。 -
木山捷平『耳かき抄』
新美南吉『嘘』
中村地平『南方郵信』 -
木山捷平つながりで、中村地平を読む。