ドキュメント自衛隊と東日本大震災

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591126936

感想・レビュー・書評

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  • 壮絶な内容だった。自衛隊がいる日本に生まれたことをもっと感謝すべきであると感じた。自衛隊がここまで考え、あるいは考えずに未曾有の災害の中を活動していたのかを知ることができた。

    以下、印象的なフレーズ
    ・陸上自衛隊という組織は、現場における被災者からの心ない無理難題や罵詈雑言にも「耐えろ」と指導している。それが「心の災害派遣」なのだと。
    ・苦しんでいる人、困っている人がそこにいるなら、力の限り全力で手を差し出すのが当然だろう、と。そこに何の疑問も衒いもない。

  • 圧巻だった。
    自衛隊の献身的な活動に素直に心打たれた。
    出来ることなら311以降の日本に住む人々全員に一読してもらいたい、と思える本だ。


    正直、これまで自衛隊にそこまでの関心はなかった。
    この文章は防大卒の毎日新聞編集委員によるモノだということも、多少頭に入れて読まなくてならないかもしれない。


    <blockquote>「もし治安出動も何もかかっていない段階なら、残念ですが、自衛隊は出動できません。根拠となるほうがありませんから」(P.55)</blockquote>
    憲法第9条で日本は軍力を持たないことを宣言している。自衛隊は軍なのか、軍ではないのか? 自衛隊は苦悩しながらも「日本国民を守る」という意思の元、任務に就く。


    <blockquote>「自分は親も死んでいるし、彼女もいない。天涯孤独です。だから、私はここに来ました」と言った。そしてこう続けた。「どうせ死ぬなら、私のような人間が死ねば言いと思ってきました」(P.68)</blockquote>
    自分と同世代の人間がこんな覚悟を出来るとは。ただただ頭を垂れるしかない。


    <blockquote>「自衛隊何をやってるんだ」「出ていけ」等言葉の暴力をぶつけられたり、「何で○○してくれないんだ」等不満や怒りの捌け口となってしまうことがあるかもしれません。そのような怒りを”ぶつけさせてあげること”も被災者にとっての「心の災害派遣」であることを覚えて置いてください。(P.129)</blockquote>
    こう部隊長は部下に命じたという。

    <blockquote>東日本大震災の実相は、遺体の写真なしに伝えることが可能なのだろうか。私の新聞社でも実は部内で何度か健闘したが結論は出なかった。(中略)一つだけ確信を持ったのは、遺体と直面した自衛官らの思いは伝えなければならないということだ。(P.143)</blockquote>


    <blockquote自衛隊は今回、災害は件活動に全力を尽くしながら、無意識のうちに国民の「承認」を得ようとしていたのだ。特に陸自はその気持ちが強かった。
    (P.224)</blockquote>

  • 本書の幕は原発対応から開いた。読み始めた瞬間、何か違和感を感じた。それは、被災地での生存者救出・行方不明者捜索・遺体回収・瓦礫撤去に関する項目から始まるものだという先入観があったからだ。しかし読み進むうち、至極当然という感じに変っていった。原発対応が、自衛隊組織が動く必要性のあったことだと思えた。もちろん被災者支援の内容にも触れられており、特に自分の家族を二の次にせねばならなかった郷土部隊の話は身につまされた。著者は防衛大出身ということもあり、自衛隊の内側を理解した上での著作である点が良いと思う。

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