(P[あ]5-1)天のシーソー (ポプラ文庫ピュアフル)

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591130773

作品紹介・あらすじ

忘れかけていた何かを、きっと思い出す――
『頭のうちどころが悪かった熊の話』著者による
少女たちの日常に潜む小さな奇跡の物語。

「それとは気づかぬまま、
自らの倫理の譲れぬ一線を守り抜こうとする少女たちの、
なんと一心不乱でけなげで強靭でうつくしいことか。」
――梨木香歩(解説より)


小学五年生のミオと妹ヒナコの毎日は、小さな驚きに満ちている。
目かくし道で連れて行かれる別世界、町に住むマチンバとの攻防、
転校してきた少年が抱えるほろ苦い秘密……
不安と幸福、不思議と現実が隣り合わせるあわいの中で、少女たちはゆっくりと成長してゆく。
一篇一篇が抱きしめたくなるような切なさとユーモアに満ちた珠玉の連作短編集。
書き下ろし短編「明日への改札」を収録。     
【解説/梨木香歩】

感想・レビュー・書評

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  • 小学生の姉妹・ミオとヒナコ。
    この二人の容赦のない口喧嘩の内容は、うちの娘達(姉妹)のものとそっくりで笑ってしまう。
    常に意地を張り「ああ言えばこういう」ことばかり。おやつなんて遠慮のない早い者勝ち。

    私は一人っ子なので、幼い頃から兄弟姉妹のいる友達は勿論、うちの姉妹にも羨ましがられている。
    確かに一人っ子だと家の中で好き勝手できそうに思えるでしょう。
    でもね、私は兄弟姉妹がいる人が羨ましい。
    だっていざという時、姉の後ろをついて来てくれる妹。
    妹が高熱を出した夜、心配して付き添ってくれる姉。
    雨降りの中一つの傘の中に入って、狭いと文句を言いながらも妹をそっと引き寄せてくれる姉。
    日常の、当たり前で何でもないことのように思えるその一つ一つが、一人っ子の私にはとてつもなく羨ましい。
    「姉妹」でいられることの幸せを、いつかうちの姉妹にも気づいてほしい。

    安東みきえさんが描く、ちょっぴり寂しくて頼りなくて、緊張感の漂う子供達の狭くてちっぽけな世界はとても懐かしく切なくなる。
    そして表紙:酒井駒子さん、解説:梨木香歩さんと、なんとも贅沢な文庫本だった。

  • レースのカーテン越しから、ドアの隙間から、オレンジ色に光る溢れんばかりの温もりを覚えている。音の賑やかさ、笑い声、ご飯の炊きたての香り、今日も一日辛く苦しかったことなどしまい込み、灯りの魔法が消えるまで涙を堪えたのでした。結局、子供の頃から泣くのはひとりなのです。
    何が正しいことなのか、ちゃんとわかっていました。花を美しいと感じれること、それを壊されたら悲しむ人がいるということ。他人の気持ちを考え行動出来る心は、チョコレートの苦味にまたひとつ大人になったと顔を顰めたのでした。
    カタン、コトン。君の罪と私の罪、ねぇどちらのが重いのか教えてよ。昨日感じた鉄の味は、血の味に似てる気がした。上がれば空が広い、落ちれば地が深い。そんな感じで君と私の重さも変わらない。忘れないのでしょう、分け合った鉄の傷を。忘れてしまうのでしょうか、君のことを想った日々を。天のシーソーが上下する。光と影、風と桜吹雪。目まぐるしく、彩やかに、美しく。いつか君とここへ来ても笑い話に出来るでしょうか。カタン、コトン。私達はこのまま何処までも上がっていける気がした。

  • 私には3つ、年の離れた妹がいます。人生で初めて意識した同性でした。これがなんともまあ、可愛げがなくて。取っ組み合いこそありませんでしたが、何かと言い合ってばかり。両親が共働きだった事もあり、それこそ毎日、学校が終わればノーレフェリー・時間・ラウンド無制限で言葉のボクシングをするような関係でした。それでも、そのすぐ後には一緒にぬり絵をしたり、手を繋いで外に遊びに行ったりで、遠慮はないけど後腐れもない。もしかしたら、私にとって生まれて初めての親友は妹だったのかもしれない。そんな事を思い出させてくれる本でした。

  • 児童文学として。
    姉妹がいる人には、同じような気持ちになったことが1度や2度はあるのではないかしら?
    幼い頃の、無条件に憎たらしく愛おしい妹との出来事を、懐かしく思いながら読み進めました。

  • 小学生の姉妹ミオとヒナコ。悪意や嫉妬、時に見せる信頼関係や優しさがリアル。ふたりとも生意気で一筋縄ではいかない子どもだが芯は純粋でまっすぐで正直。いい子だなと思う。小学生の時期ならではのグレーなヒリヒリした経験には身に覚えがある。どの話にも幼い私がいる。ミオとヒナコが私のこともわかってくれた気持ちになった。読んでよかった。

  • ミオとヒナコの姉妹の仲の悪さ(というか、ケンカの仕方)がリアルでした。なんてことのない日常の、ちょっとした罪悪感みたいなものが丁寧に描かれています。

    マチンバ、正直に謝りに行ったことが素晴らしい。チョコレートは二人だけのもの。

    針せんぼん、嘘をついてしまった、あの二人にはもう会えない、罰を受けないと…みたいな気持ちが分かる。きっとこれからも関係は続いていくけれど、もう100%純粋な信頼じゃないよね、という感じ。

    ラッキーデイ、電話番号を言ってしまったことが気になって、本筋が何も入ってこなくなった。やめてくれ!

    明日への改札、タイトルがちょっとやりすぎだけど、ヒナコの「言わなかったけど笑ったなら同じ」という罪の意識はいい。その所属から離れると、もうあの時の空気感ではいられないんだよな。みんなが「せーの」でいなくなるならまた違うんだけど。

  • 下手をすると道徳の教科書読んでるみたいな気分になるけど、最後をウヤムヤにして考えさせられる道徳本よりは、あー良かった世の中そんなに悪くないな、って思わせる結末を持ってきているので、良くも悪くも安心して読める。
    子どもに読ませたい本ランキング上位なイメージだけど、娘に渡しても読まんなぁ。まぁそんなもんか。
    と言うわけで名簿業者が最悪だから死刑だな、あの人たち。子どもを騙すなんて酷い話ですよ。

  • ヒットしないので理論社の単行本の感想。
    所収されている話が文庫本より、少ないかもしれない。

    表題の「天のシーソー」を含めた6話の連作短編集。
    主人公は、小5ミオ。家族は、生意気で金魚のフンで小さい頃はよくひきつけをおこした妹と、見栄張りで、ちょくちょく小言も言うママと、物語にはあんまり登場しないお父さんの4人。

    「ひとしずくの海」は、母親と言い合いになって家を飛び出したヒ ミオが、近所のサチねえちゃん中3に会って、めかくし道で帰って来る話。

    「マチンバ」は、友達とローラーブレードを転がしながら、ピンポンダッシュを、動物も子どもも嫌いなマチンバにする話。

    「針せんぼん」ゼリー作りに凝っていたミオは、家の前で遊んでいた5歳の純一と3歳の翔の兄弟を家に入れて食べてもらい、それをきっかけに、二人は家に遊びに来るようになる。
    ある日、ミオは二人との約束を忘れてしまう。

    「天のシーソー」2月前に転校してきた佐野は、運動が得意で明るい。何となくミオに優しい。
    エリに誘われてミオは佐野を尾行して、佐野の家を突き止めることに。

    「ラッキーデイ」朝から学校でミオはついていない。雨にしおしおと濡れながら家に帰ってからもついていない。そこに、電話がかかってきて、クラスメイトの住所と電話番号を教えてくれと言う。最初は断ったミオだったが、脅されて教えてしまう。

    「毛ガニ」食料として貰った生きた毛ガニ。妹のヒナコは飼いたいと言う。具合が悪くなったヒナコと毛ガニを重なって見えるミオはー。

    私は、なかでも、天のシーソーとラッキーデイが良かった。2つとも、私も大人になった今でも同じような事が思い当たるからかな。天のは、自戒も込めて胸が痛くなるし。それと、ラッキーデイは
    クールでいく(そんな表現だった確か?)って軸をぶらさないで行動するから、世界が反転するんだと思うと、勇気な湧いてくる。

  • 小学生のミオとヒナコの姉妹の物語。
    一番最後の「明日への改札」は、ミオが高校生、ヒナコが中学生に成長した後のお話。

  • 等身大の女の子の話。
    2013/06/13

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著者プロフィール

山梨県甲府市生まれ。1994年に「ふゆのひだまり」で小さな童話大賞大賞、「いただきます」で同選者賞今江祥智賞、2001年に『天のシーソー』で椋鳩十児童文学賞、2018年に『満月の娘たち』で第56回野間児童文芸賞を受賞。主な作品に『頭のうちどころが悪かった熊の話』(新潮文庫)、『星につたえて』『ふゆのはなさいた』(アリス館)、『夜叉神川』(講談社)などがある。

「2021年 『メンドリと赤いてぶくろ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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