(039)10万人を超す命を救った沖縄県知事・島田叡 (ポプラ新書 て 1-1)
- ポプラ社 (2014年8月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
- / ISBN・EAN: 9784591141250
感想・レビュー・書評
-
太平洋戦争における沖縄戦を扱った書籍は多数あるが、当時の軍部、県民が主体で書かれたものが多いように思う。本書は県知事にスポットを当てて描かれており、県政の面からも非常な選択を迫られた知事の心境などに迫るものとなっている。
軍部との狭間で苦しんだ状況がよく伝わってきて内容は非常に興味を持てた。知事の経歴や性格を理解した上で、一つ一つの選択と行動の理由がわかる。何より県民を守りたい、一人でも多く救いたいという島田知事の行動には感動を覚える。忘れてはならないのは、多くの軍部、県民に死者が出たと言う表面上の惨禍として捉えるだけでなく、一人一人生きるために必死であったことを忘れてはならない。物語は全ての個人に存在する、この事を改めて強く認識させられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
当時だと非国民とされる『生きろ』という言葉とともに、沢山の民間人を助けたのは素晴らしい。
生き残った部下の証言があれば良かったけれど、取材班の調査が物足りなく憶測で書いてるところが残念。
牛島司令官とのやりとりは悪人仕立てなテレビ向けな気がした。
言葉を削って事実と違うほうに持っていくのは危険なこと。
もちろん、牛島司令官が多くの民間人を巻き込み自決し兵隊への伝達がなされなかったのは卑怯だとは思っています。ただ、島田知事と同じような民間人との寄り添い方をした温厚な面もあったはず。
時間稼ぎのために地上戦に持ち込んだ大本営が一番悪い。
-
良書です。このように疎開を進め、戦の最中県民と行動を共にし亡くなった沖縄県知事がいたことは、沖縄県民の私も不明にして知らなかった。沖縄戦時に鉄血勤王隊の隊員だった太田昌秀元沖縄県知事が尊敬するというのも納得である。
-
島田叡は、戦中最後の沖縄県知事である。昭和20年1月に前任知事が病気などと言って逃げ出したので後任として送り込まれた。すでに、米軍上陸間近と目されていたときである。
高官が逃げ出し、組織の体をなしていなかった県政をまとめ、台湾から米を取り寄せ、県民と共に戦争に巻き込まれていった島田叡の経歴、エピソード、知事としての行動などを、生き残った人や同級生などにも話を聞いてまとめたものである。
世間にはあまり知られていない人で、確かに立派な人だったようである。だが、テレビの報道ドラマを作った人たちが書いただけに、表現が過剰で、思いこみが多く、イメージ先にありきのドキュメンタリーになっている。かえって本当の姿が見えないのではないかと思う。いい素材だけに、その点が残念である。