太郎とさくら

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591152799

感想・レビュー・書評

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  • 異父姉弟を軸に、姉の実父との共同生活、ちょっと訳あり家族のほんわかハートフルな物語、さすが小野寺さん。と暖かな気持ちで寝入った翌日から考えこんでいる。

    「昭和の標準家庭」から外れた人達に、小野寺さんの視点はいつも優しい。と思う。離婚、再婚、母子家庭、未婚の母。令和の現代じゃ珍しくもないのに、どうかすると可哀想、苦労してそう、みたいなネガティブなレッテルを貼ってしまいそうな自分に、「あなたと彼らの何が違うっていうの?」と押し付けがましくなく、ほらね、と示してくれるのが小野寺さんだと思って安心して読んでた。けど、自分は清水のおばあちゃんだ、と気がついてしまった。分け隔てないつもりで、なのにぽろっと「ちゃんと血がつながってる」みたいな事を口走ってしまう人だ。
    田舎に残るのは長男、みたいな古い考えは、多分平成生まれのさくら姉さんにもあるけど、さくらさんはそれを不用意に口にしないし人に押しつけないし、bestじゃないならbetterにしなやかに切り替える賢さと強さを持ってる。おばあちゃんの思いを知った上で「おばあちゃん大好き」と言えてしまうさくら姉さんの大きさ。妻の連れ子のさくらさんをそのまま受け入れる、父春夫と照夫伯父の度量の深さ。
    なんか自分が情けない。 

    あ、ごめん。そんな深刻なお話じゃないから。私が深読みし過ぎてるだけで、安定の小野寺ほのぼのワールドなんで、安心して読んで下さい。

  • 太郎とさくらは異父姉弟。さくらの実父が突然結婚式に現れて………と、普通の展開ならそこからひと悶着ありそうなんだけど、太郎が、血の繋がらないさくらの実父を自分のアパートに住まわせたり、最後には、さくらの夫が就職を世話してくれたり、なんだかんだとほのぼのとした展開に………。優しい余韻が残るところが、小野寺史宜ワールドの好きなところです♡

  • 20231219

  • 小野寺さんの書く主人公は、無理をしていない、現実にいそう、そんな感じが好きです。考えていることが理想的すぎない、自然な感じ。スッと入っていけます。

    家族はどこまでいっても家族で、切り離すことができない。それは、いい意味でも悪い意味でも。「家族だからこうしなければならない」ということは実はない。でも、そう簡単にはいかない。所詮は他人、程よい距離を見つけなくてはいけないことに気づけないこともあるでしょう。

    さくらの聡明さ、太郎の鈍感さと優しさ、さくらの旦那さんの懐の深さ、さくらと太郎の父の思いやり。泣いてしまいました。

    太郎と彼女の価値観のズレが少しずつ生じていく(というか、浮き彫りになる)様がリアルでした。太郎、間違えてるよ、と教えてあげたい。でも、現実では気づかないうちに少しずつズレていくものですよね。

    「太郎」という名前なら、太郎と呼びたくなるのはよく分かります。山太郎、丸太郎、バカ太郎、思春期太郎。あと一つぐらいあったような。チャーハンがおふくろの味とか、そういう日常のちょっとしたことをとらえるのが好きです。
    「さくら」は名産の桜えびから来ているのかな?

    ラスト、二人でもう少し歩きたい、と行き先をコンビニからスーパーに変えるところ、お姉ちゃんから姉ちゃんへと変化するところ。また一つ家族の距離感が変わって好きな場面です。

  • ほのぼの

  • 異父姉弟の物語。

    太郎とさくらは異なる父を持つ姉弟で、静岡県の由比出身。

    姉は堅実で地元に就職し、同級生と結婚。

    太郎は誠実だけど、少し不器用で損をしがちな東京での社会人。

    そんな姉の結婚式で姉の実父・野口さんと出会い、東京で同居を始めることに。

    東京で暮らす太郎は、地元の同級生との交流によって故郷を感じ、彼女との破局を経て自分を戒め、姉と野口さんとの幸せの形を望む。

    人を思いやる心の大切さがにじむ一冊。


    ほんとに登場人物の微妙な距離感が心地よい。

    人間ちょっと欠陥があってもいいんだなと思わせてくれる。

  • 昭和49年のヒット曲「昭和枯れすすき」はさくらと一郎でしたw。今回読んだ本は、小野寺史宜さんの「太郎とさくら」、2017.1発行です。人生は出会いと別れ、人と人の出会いと別れ、そして再会を、異父姉弟のさくらと太郎の生き様を通して描いた作品です。お人好しの太郎が恋人紗由にふられるのは途中からそうなるかなとは想像しましたが、少し可哀想な気がしました。全体的にはハッピーエンドで概ね満足です(^-^) カツカツの生活をしてるさくらの実父を太郎が大切にするくだり、「頑張れっ」と声援を送りました!

著者プロフィール

一九六八年千葉県生まれ。二〇〇八年『ROCKER』で第三回ポプラ社小説大賞優秀賞を受賞し同作で単行本デビュー。著書に「みつばの郵便屋さん」シリーズ、『ひと』『ミニシアターの六人』『レジデンス』『タクジョ!』『銀座に住むのはまだ早い』『君に光射す』などがある。

「2023年 『片見里荒川コネクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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