ビオレタ (ポプラ文庫 て 3-1)

著者 :
  • ポプラ社
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感想 : 144
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591154359

感想・レビュー・書評

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  • ☆4

    可愛らしい手作りの小物が並ぶ雑貨屋さんに「棺桶」が置いてあるの!?と最初は驚いたのですが、読み進めていくうちに「ビオレタ」に菫さんが作った棺桶を見に行ってみたいと思えてきました!(ブックカバーも絶対可愛いだろうなぁ…)

    主人公・妙の周りの人たちが素敵な人たちばかりで(特に妙のお父さんが良かった!)読後はほっこり温かい気持ちになれるそんな物語でした❁⃘*.゚

  • 自分の心をちゃんと言葉にして互いにぶつけることの大切さ。
    寺地さんのデビュー作だけれども、この時から一貫してテーマになっているんだなと感じさせられた。

    最初から終盤まで、だいぶ曲があったり、悲観的だったり、面倒くさいなって人が出てきて、ムカムカしたけど、最後まで読んで良かった。


    「感情でも、記憶でもいいけど、そういうのを埋葬する必要のある人がいる。行き場のないものを引き受けてあげるぐらいのことはしてあげたい」

    という理念の雑貨屋ビオレタ。

    「棺桶」なる、埋葬のための小箱を売っているビオレタ店主の菫と、主人公の妙、周りの人たちの物語。

    菫の言葉もよかったが、お父さんの言葉もよかった。
    時々、考えさせられる言葉が落ちてくる。

    刺繍や、カレー、家族、「強い」「弱い」、「名前について」など、その後の寺地さん作品の要素もいろいろ出てきて面白かった。

    一番よかった言葉、印象に残っている言葉。

    ・「強い」は「弱い」の対極じゃないよ。自分の弱さから目を逸らさないのが強いってことだよ。

    ・話しているあいだに本人のなかで、
    『なんらかの劇的な変化』が起こることがある。


    ここからは、ネタバレあり考察です。ご注意をm(_ _)m













    はじめ、姉への印象がものすごく悪かったのに、最後ガラッと変わる。
    ここまで変わるのはなんでかなと思ったら、作中に別のシーンだけれど、「投影」という言葉が出てきて、それかと思うに至る。

    心理学的に「投影」とは、
    『自分が思っていることを、自分が思っているのではなくて、人が思っているのだろうというふうに思うこと。』

    『自分のなかにあるということを認めるわけにいかない欲動や感情を外に出してしまって、自分にあるのではなくて、外に、ほかの人のほうにあると思うという防衛の仕方。』
    「精神分析的人格理論の基礎」p85 馬場禮子より


    だから、勝手に思い込みで悲観的になっていた妙は、自分が姉に対して思っていたことを、姉が自分に対して思っていると、捉えていたのかなと。

    最終盤、お母さんに自分の気持ちを言葉にしたことで、ちゃんと、お母さんにもお姉さんにも向き合うことができるようになり、「投影」という防衛をしなくても、意思疎通ができるようになった。

    まさに、話すことで『なんらかの劇的な変化』が起きたのだと思う。

    それで姉に対する感情も変わり、前半とは比較にならないほどの、良い姉の描写になっているのかと思った。

    全然、違うかもしれないけど(笑)

    蓮太郎も大分変わった。最後の蓮太郎はよかった。妙に話を聞いてもらって、蓮太郎も変わったのかもしれないな。

    最後まで読んでよかった。
    【誰かに話すことの大切さ】

    ちなみに気軽な投影はしょっちゅう起こっていると、かるーく馬場さんも言っている。

    「勝手な思い込みといわれるのが投影です」と。

    だからこそ、もしかしたら勝手な思い込みかもしれないからこそ、不器用な言葉でも、勇気を振り絞って、言葉にして差しだすしかないんだなあ。

    聞き手がそれをちゃんと掬うのも大事だけれども。

    感想がここまで長くなるほど、いろいろ考えさせられる本だった。

    寺地さん恐るべし。

  • 寺地はるなさんを最近知って、立て続けに読んでます。
    あー、、、ってなるフレーズが散りばめられているのがいいなと思う作家さんです。

    「とりあえず田中さんは、相手の返答をいちいち予想するその鬱陶しい癖を直したら良いと思うのよ」
    こう言ったらこういう返事が来るに違いない、だから言うのはやめとこう、なんて先回りして黙り込んでいたらねえ、なにも伝わらないよ

    親は大切に。みんな言う。みんな、みんな、みんな同じことを言う。わかってることをみんなから言われるのはしんどい。正論はしんどい。

    あー、、、ってなります。
    そうだよねーって。
    反省でもあり、共感でもある。

    自分は誰からも必要とされてない、って思っていても、気づいてないだけで案外愛されているかもよ?案外周りの人は話せばわかってくれるかもよ?と、思わせてくれる小説でした。

  • 面白かった。何度も笑った。
    ちょっと泣けたところも。
    それでいて、人が持っている毒というか裏、奥のほうも見え隠れしていて、ただのいい話っぽくはない。でも、ドロドロはせず。そこが良い。

    自分のことを冷静に分析して指摘してくれる人がいて、主人公は幸せだな、と思う。



  • 久しぶりにミステリー以外✨
    全体感として、ユーモア満載。
    会話と会話の間などに心の中の気持ちやそれを言葉にした比喩みたいなものが散りばめられていてクスっと笑えるところが面白い。

    心に秘めた何かというのは、表からは見えず、人それぞれ何かしら抱えてたり、同じ事への感じ方や考え方もそれぞれ。
    自分の物差しで、何事も判断しない。しっかり思ってる事伝えてみるって大事な事。

    登場人物みんな素敵でした。
    叔父さん面白い!お父さん優しい!

    ビオレタ行ってみたくなる、たくさん買ってしまいそう笑

  • ユーモアとリズムが好み。妙、菫、千歳さん、蓮太郎の関係は、現実ではなかなかない関係性のはずなのに、なぜだかリアルさを感じました。

  • 寺地作品5作目。これがデビュー作か!人物設定も会話も随所にスパイスが効いてて、ファンタジーの様な素敵な小説です。

  • ビオレタがあれば行ってみたいと思いました。
    そして、棺桶に自分の過去を埋めたいと思いました。ちゃんと前に進むために…

  • 寺地はるなさん。
    ブクログのお友達のレビューを読んで、気になっていた作家さんのひとり。

    実は寺地さん、デビューされたのが2014年。
    ご自身のツイッターで

    今から読み始めたら近い将来「あ、寺地?私はブレイクする前から読んでたけどね、フッ」と言えるよ!まだ間に合うよ!でも、今年がラストチャンスだよ!言い切ってるけど、根拠はないよ!!

    と、つぶやかれています。
    私も滑り込みセーフかな(笑)

    まずはこの本から読もうと思っていました
    寺地さんのデビュー作【ビオレタ】

    本の紹介に書かれていたのは

    婚約者から突然別れを告げられた田中妙は、ひょんなことから雑貨屋「ビオレタ」で働くことになる。
    そこは「棺桶」なる美しい箱を売る、少々風変わりな店だった…。
    人生を自分の足で歩くことの豊かさをユーモラスに描き出す、心にしみる物語。

    棺桶?
    このフレーズが読みたい気持ちを一瞬ためらわせたのですが、”心にしみる物語”らしいし。
    何より、ブクログのお友達のレビューが素敵だったので、読んでみました。

    良い本でした!
    心にしみました。

    タイトルの「ビオレタ」って何だろうと思っていたら、スペイン語で「すみれ」のことでした。
    読み始めるとタイトルの意味がわかります。
    素敵なタイトル。

    そして、本の装丁が可愛いんです。
    文庫も素敵ですが、単行本の装丁がとても素敵です。

    私は文庫本を購入しましたが…
    紀伊国屋さんに単行本があれば、そちらを購入したかも…

    寺地はるなさん、ご本人がまだブレイク前とおっしゃっているので~
    今のうちにたくさん読んでおきたいです(笑)

    実はもう2冊目も読了~!

  • 2015年と少し前の作品。
    本作でポプラ社の新人賞を獲得との事。

    ほんわかとした日常を描きながら、時々ドキッとするエピソードが散りばめられていました。

    人生を生き抜く上で大切そうないくつかの事に出会う事ができました^^

    ・「とりあえずあなたは、相手の返答をいちいち予想するその鬱陶しいクセを直した方が良い」「こう言ったらこういう返事が来るに違いない、だから言うのを止めておこう、なんて先回りして黙り込んでいたらねえ、何も伝わらないよ」
    →仰るとおり!この事に最近になってやっと気づくことができた40代半ば(笑)

    ・「あんまり、自分だダメだ、なんて言わない方が良い」「そういう奴らは委縮している相手を見て満足するんだ」「人を見下して喜ぶようなくだらない奴にサービスしてやる必要は無い」
    →自信が無い時にそれにつけこんでくる奴らがいるのが現実。そうそう、サービスしてやる必要はないっ。

    ・「人がさびしいのは標準仕様」「さびしいって普通のこと、当たり前のこと」「だからほんの一瞬でも誰かと気持ちが通じ合うと嬉しんじゃないか」「その一瞬のために声や目や手を駆使して伝えるんじゃないか」
    →そう思えると、人とのコミュニケーションって奇跡の瞬間のような気がする。誰かとちょっとでも心が通じたら儲けものっていう感覚。

    ・「おまえ、人の言動を深読みして利口になっているつもりか」「でもその利口さが一体何の役に立つ」「自分で自分の心を暗くしているだけじゃないか」
    →そんな風に「卑屈」になっちゃう時も実際あるんだよなあ~、そういう時にズバリこう言ってもらうと、「容赦ないなあ~」と沈みつつ、早くに心を切り替えられるかもしれない。

    ・「どうってことがないよ」
    →『誰が』が言ってくれるかで随分変わるけど、本当に自分の事を心配してくれている人が言ってくれると、救われてる事があるような。どうってことないよ。シンプルな言葉だけだ覚えておこう!

著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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