メゾン刻の湯

著者 :
  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (276ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591156841

作品紹介・あらすじ

”正しく”なくても
”ふつう”じゃなくても
懸命に僕らは生きていく。
銭湯×シェアハウスを舞台に描く、希望の青春群像劇!

どうしても就職活動をする気になれず、内定のないまま卒業式を迎えたマヒコ。
住むところも危うくなりかけたところを、東京の下町にある築100年の銭湯「刻(とき)の湯」に住もうと幼馴染の蝶子に誘われる。
そこにはマヒコに負けず劣らず”正しい社会”からはみ出した、くせものばかりがいて――。

人気企業の内定を蹴り、気ままな愛人生活を送るマレーシアと日本のハーフ・蝶子
奇抜なファッションに身を包み、誰にも言えない秘密を持つプログラマのゴスピ
事故で片足を失ったハンサムでいつも明るい美容師の龍くん
ネットベンチャーに務める、SNSが大好きなガツガツ上昇志向のまっつん
刻の湯の持ち主である老人・戸塚さんと、両親と離れて暮らすことになった小学生の孫・リョータ
そして刻の湯を実質経営し、いつも中心にいながらも全てが謎に包まれた青年アキラさん

「生きていてもいいのだろうか」
「この社会に自分の居場所があるのか」
そんな寄る辺なさを抱きながらも、真摯に生きる人々を描く
確かな希望に満ちた傑作青春小説!


著者プロフィール
小野美由紀(おの・みゆき)
1985年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学専攻卒業。2011年、震災を描いた絵本「ひかりのりゅう」の発売のためクラウドファンディングを立ち上げ、2014年に出版。著書に『傷口から人生。』(幻冬舎文庫)、『人生に疲れたらスペイン巡礼』(光文社新書)がある。本書が初の小説。

感想・レビュー・書評

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  • 就職に失敗したマヒコは幼馴染に誘われて銭湯シェアハウスに居候することに。

    そこにはいろんなマイノリティが暮らしている。銭湯再生、落語、クラウドファウンディングなどの文化的な流行、SNS、いじめ、LGBT、障害、宗教事件などの社会問題が詰め込まれ、詰め込まれすぎてちょっとおさまりがよくない感じ。

    でも落語のパートはほっこりと暖かかったし、認知症のおじいちゃんの話もよかった。戸塚老人と孫のリョータ、幸せになっておくれよ。。

  • 近所の銭湯「みどり湯」(目黒区緑ヶ丘)の待合スペースにおいてあったサイン本。

    「パニック障害は天才がなる病気ですよ。治らないほうがいいですよ。小説を書けなくなります。病気があなたを作家にしたんですよ」

    作家宮本輝は、25歳の時から心の病と戦っていた。
    仕事ができなくなり、引きこもり、文筆業を志し、31歳で芥川賞を受賞した。
    その後も病は氏に襲い掛かった。

    その時、担当医にかけられたのがこの言葉。

    それからの氏の活躍はここに記すまでもない。


    「メゾン刻の湯」の作者も、若くして心の病と戦っている。

    苦しみ抜き、自分と向き合い続ける中でしか、見えないものがある。

    この小説は、命を削って書かれた美しい人間の生き抜くドラマがある。


    大学を卒業しても就職が決まらず、刻の湯に転がり込んだ主人公マヒコ。
    自分に自信が持てず、さげすんでばかりいる彼が、刻の湯で春夏秋冬を仲間と過ごし、大事なものに気がついていく。

    彼が変化したわけではない。
    彼は彼のままで、彼にしかできない使命を果たしていくのだ。

    抗いようのない運命に道をふさがれそうになっても、道半ばに倒れたように見えたとしても、また自分の足で歩いていけばいい。
    そして疲れたら、広い湯船につかればいい。

    読むと生きる力が湧いてくる一書。

  • テレビドラマになりそう。配役はどうなるかしら?
    他の方のレビューにも書いていましたが、ちょっと詰め込み過ぎな感じがしました。お話作りはとても上手でぐんぐん読める作家さんなので、テーマを絞って掘り下げて書いた作品を読んでみたいです。

  • 137 何やら訳ありの若者が仲間となって成長すると言うよくあるストーリー。事件的なものも描かれているが、主題が読み取れない。心に残ってこないお話しでした。

  • 小野美由紀さん、初読みです。「メゾン刻の湯」、2018.2発行。銭湯を舞台にした若者たちの人間模様を描いた作品です。生い立ち、親子、いじめ、トランスジェンダー・・・、いろんなテーマが提議されています。私にはちょっと読むのに骨が折れる感じでした。時間をかけて読んだ割には、後に何も残っていない感じです。

  • 2020年39作品目。

    世に言う「普通」から外れた若者が働く銭湯、刻(とき)の湯。
    懐の深いオーナー戸塚さんとその孫のリョータ、謎めいたリーダー格のアキラさん、フリーエンジニアのゴスピ、恋愛に自由奔放な蝶子、そして主人公の湊マヒコ。

    互いを静かに見守りながら、適度な距離感を保ちながら共同生活を送るメゾン刻の湯は居心地がよさそう。
    終盤明らかになるアキラさんの謎が何とも言えない後味。
    でも、アキラさんはとても魅力的。

  • ・《そこにあるというだけで意味のある場所》(p.213)

    ・就職先が決まらないまま大学卒業に至ったマヒコは古くからの銭湯「刻の湯」に住み込みで働くことになった。そこには数人の若者が暮らしていて・・・
    ・妙に居心地のいい刻の湯での暮らしに馴染みつつこのままでいいものかどうかマヒコは行く末をつねに探している。
    ・優柔不断なマヒコそのままにすべてが中途半端なまま時間は進んでゆく。実人生はそんなもんかもしれないが。なかなか落としどころの難しいお話っぽくてどういう終わりを迎えるのだろう?と思っていた。
    ・誰かに何らかのラベルを貼って分類できたと安心する感覚に与したくないというのがこの話の要素のひとつではあるかな?

    ▼刻の湯についての簡単なメモ

    【アキラ】どこかおかしなヤツ。他者やおそらく自分自身をもステロタイプな価値の決め方をしない青年。ゆえに正直に思ったことを言ってしまう。「動じる」という機能はついていない。刻の湯の実質的な経営者。《僕、自分がいても、いなくても、どっちでもいい場所の方が、落ち着くんだ》。この台詞には共感。暗い影を落とすなんらかの過去があるらしい。
    【ゴスピ】ふだん無口だが言いたいことは言う。部屋を出ると靴を履くのは部屋以外は外だと思っているから。基本、スナック菓子しか食べない。フリーのエンジニア。
    【住人会議】二週間に一度ありいろいろ不満とか話し合う。
    【タタミ】刻の湯のきれいな看板猫。
    【蝶子】一方的コミュニケーションを取る女。いつもなにかと闘っている風情。手に入れたものはゴミのように捨て去る。手に入れる努力はとてもする。男も一度寝たらゴミ。だのに職業は「愛人」だとか。
    【トキさん】「何事も念入りに、ただし、軽やかに」という言葉を遺した、刻の湯の元店主。戸塚さんの亡妻。
    【刻の湯】薪で湯を沸かす銭湯。職住一体型で家賃ゼロ円の寮があり若者たちが集まる。
    【戸塚さん】刻の湯のオーナー。包容力があり褒めて育てるタイプ。《多くの人間たちはね、あくせく働いているように見えて、案外、何もしていません。偉人だけが、この国を作ったわけではありません。その、多くの人たちによる、何もしない時間、待っているだけの途方もない量の時間がね、きっとこの国の内側にある、数字や言葉には表れない多くの豊かなものを作ってきたように思いますよ。》
    【トミタさん】人気漫画家。「カブキホームレス魁!」。《暗闇には光を当ててはいけません。光の届かない暗闇を抱えておくことも、人間にとっては必要なことです》。
    【マサさん】コワモテで見事な刺青。元落語家志望だったらしい。
    【まっつん】ベンチャー企業に勤めている。
    【マヒコ】語り手。落ち込んでいた青年。湊マヒコ。皆はマコと呼ぶ。
    【龍くん】唯一恋人がいる。彼の作るオムライスは旨い。片足が義足。「ロハン」という美容室でアシスタントをしている。《みんな、よゆうが、せんぜん、ないんだ(中略)だからさ、ここでくらいは余裕持ちたいじゃん?(中略)せっかく、“こんな場所”に住めてるんだからさ》
    【リョータ】戸塚さんの孫。母親(戸塚さんの娘)に置いてけぼり。心を閉ざしなかなか打ち解けようとしない。

  •  歴史あるものの価値、とか、地域の資源、といった言葉の本質的な意味を、僕は実感することができない。刻の湯は僕にとっていささか年を取りすぎているし、この地域にだって成り行き任せで1年弱住んだだけの、ただの腰掛け野郎だ。けれど、そこにあるというだけで意味のある場所がこの世の中に存在することくらい、僕にだってわかる。刻の湯がなくなってしまったら、ここで暮らした月日が、僕だけじゃない、多くの人がここで過ごした途方もない量の年月が、瓦屋根や、水道管や、煙突とともに、全てごっそりと失われてしまうような気がした。(p.213)

  • なんだか今は、何を見ていても、みんな自分にも他人にも過敏になりすぎているように感じる。
    この本を読んで、もっとゆるいつながりでいいのかもしれないなぁと思った。
    もっと読みながらたくさんのことを考えたんだけど、上手く言葉になりそうにないので、少しずつ咀嚼していけたら、とおもう。

  • 初 小野美由紀著を読んだ。
    始めは、おっ、どんな話になるのか、今どきの若者の話かと思いながら読んだ。
    なかなか、全体的に捉えにくい箇所があって、残念なとこが強く残ったかな。

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著者プロフィール

●小野美由紀(おの みゆき)
 文筆家。1985年生まれ。創作文章ワークショップ「身体を使って書くクリエイティブ・ライティング講座」主宰。著書に『路地裏のウォンビン』(U-NEXT)、『傷口から人生。〜メンヘラが就活して失敗したら生きるのがおもしろくなった』(幻冬舎)、『人生に疲れたらスペイン巡礼~飲み、食べ、歩く800キロの旅~』(光文社)、『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)、『メゾン刻の湯』(ポプラ社)、『ピュア』(早川書房)ほか。

「2021年 『雨は五分後にやんで 異人と同人Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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