エミリーとはてしない国 (ポプラせかいの文学 6)

  • ポプラ社
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591166017

作品紹介・あらすじ

中学校1年生(日本の小6)になったばかりのエミリーには、15歳の姉ホリーがいたが、ホリーには障害があり、3か月前に亡くなってしまった。ホリーはクマのぬいぐるみのブルーイが大好きで、エミリーはホリーのために、想像の国スモカルーンでホリーとブルーイが冒険するお話を作っていた。ある夜、ホリーの部屋からへんな音がするので、エミリーがのぞいてみると、ベッドの上に光るテントがあり、中からペンギンとクマのぬいぐるみが出てきた。想像の国スモカルーンから来たのだ。ペンギンはヒューゴ、クマはスミッフィーという名前で、エミリーに話しかけてきた。ブルーイもスモカルーンにいて、ホリーと遊んでいるという。

身近な愛する人を失った悲しみを、おもちゃたちとの交流と想像力の力で乗り越えていく感涙の物語。

もくじ
1ブルーイの思い出ノート
2ちがうドア
3合唱の練習
4黒いヒキガエル
5不思議の国
6トッタン村の大事件
7調査
8寝室のいざこざ
9実験
10プラタナス荘へようこそ
11火事
12牢屋のウェンディ
13新しいお客さま
14読書クラブの大騒ぎ
15エデンの園のヘビ
16ピッパの休暇
17まじないの主
18花火
19要求
20金のブーツ
21ペンギン共同体のピクニック
22不思議の国のコーラス隊
23メッセージ
24おもちゃ博物館
25重要な仕事
26ダンスパーティーへの招待
27だれもが勝者
28何もかもうまくいく
あとがき

感想・レビュー・書評

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  • 誰かが忘れなければ、魂は死なない……のかな。空想が好きな人には、ハマリそうな世界観。

  • 子どもたちの想像力が彼らの世界を作る。
    彼らの世界が幸福であるには、子どもたちが幸福である必要があるということで。
    それでも、子どもたちの身にも不幸は降りかかる。
    親しい人物の死、友人との行き違い、親とのすれ違い。
    でも、そんな時こそ彼らの存在は救いとなる。
    想像の翼を広げて、楽しい世界に。

  •  姉を3か月前に亡くしたエミリー。
     エミリーは、スモカルーンという魔法の国でブルーイとホリーが冒険する物語を作り、ホリーに話して聞かせていた。くまのぬいぐるみブルーイは、障がいのあった姉ホリーが亡くなった時に棺に入れられた。
     エミリーは、秘密のノートにブルーイの物語を思い出したら書きつけることにした。

  • ガーナのおすすめ本商会(14)


     今回紹介する本は「エミリーとはてしない国」です。

    作者のケイト・ソーンダズさんをこの本ではじめて知りました。よく知っている作者なら「この人ならこんな物語かな?」とイメージしやすいですが、知らない作者の本を読むのは、まったく想像もしない展開になるので、読書そのものが冒険なんだと思った一冊です。

     物語は300ページくらいしかないので数時間で読み終わります。しかし、もっと長い期間が経ってしまったと錯覚し、主人公と同じように1週間を過ごしているような、それはとても不思議な感覚でした。中身の濃い、本気で物語に入りこめる一冊なんだと思います。

     

     主人公のエミリーは、障害を持つ姉のホリーが死んでしまい、さらに友達関係もうまくいかないなど、いろいろと辛いことが重なります。中学校にも行きたくないと思うようになったころ、姉ホリーが生きていたころによく遊んでいた人形遊びを思い出します。お気に入りのくまのぬいぐるみ“ブルーイ”を、姉もエミリーも大好きだったのですが、姉が死んでしまった時に、棺にブルーイも入れてしまったので、エミリーは大事な二人を同時になくしてしまっていました。ある夜、ふいに姉の部屋が気になり行ってみると部屋から光がもれていて、中では、見たことのないぬいぐるみたちが話をしていました。姉は小説を書くのが好きで、そのお話に出てくる人形たちでした。その日から、たびたび人形たちが現れては、好き勝手なことをするようになります。さらに、その人形たちから、姉ホリーとブルーイは別世界にいると教えられて、エミリーは二人に会いにいくことを決めるのですが…。



     この物語にはふたつの側面があると思いました。ひとつは、エミリーが明るくなって日常を取り戻す話。もうひとつは現実と別世界が入り混じり、日常に歪みがあって何かが狂っていく物語という部分です。どんどん話は解決に向かうのですが、別の視点で冷静に読んでいると、普通の生活に人形が現れることなど、すべてがごっちゃになって話が進みます。エミリー自身の頭がへんになっているような、ホラーな部分を感じるところがおもしろいです。怖くておもしろい、ミステリーとファンタジーがまざったような感じです。

     たくさんの伏線らしき出来事があって、これはあれかな、あれはこれから…と気にしながら読んでいると、ラストはどうなっていくのが、読みすすめながら「あと何ページあるんだろう?」と何度も残りページを確認してしまいます。「あとこれしかないのに終わるの?」というドキドキ感がたまらないです。

     わけのわからないことが多すぎて、どれも重要そうでどれも重要じゃない。ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』のような「それはまた別の話…」ということの連続で、読んでいる自分の心の中こそがはてしなくなる感じでした。

     もちろんラストはこれだったのか!と納得できたのと、やっと無事に終わったという安心感もありました。



     何度も読み返すと、その混乱の中で新しい発見があったり、読み方を変えれば感じ方も変わる本です。これはおかしいな、などと決めつけず、先入観なしで読むことをおすすめします。

     現実世界ではない場所に行って冒険するお話はよくありますが、いま暮らしているこの世界に、異世界がまざってくるから混乱するのだと思います。

     死んだお姉ちゃんの“死”を受けいれられない、それを自分でもよくわからない、悲しみの感じ方もよくわからない。そこにお姉ちゃんが作ったお話の世界の住人が現れて、やはり大好きな人に会いたいと思う――。狂いながらも日常の中で明るい自分を取り戻し、歪んだ世界で主人公は悲しみを乗り越える、本当の意味で感動的な話だと思いました。



    ひさひざに本の中で冒険したなぁと思う、11歳の誕生日を迎えたガーナでした。

    2020/09/03

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著者プロフィール

5歳から物語を書き始め、300冊以上を執筆。主な著作に『まほうの森のプニュル』(2012年、小学館刊)、『Dr Xargle’s Book of Earthlets(未訳)』(1988年)など。2003年第21回スマーティーズ賞、2007年第27回チルドレンズ・ブック賞受賞。2003年第33回ウィットブレッド賞候補。ほか、受賞歴多数。

「2018年 『世界一のクマのお話 クマのプー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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