月の立つ林で (一般書)

著者 :
  • ポプラ社
4.22
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本棚登録 : 12510
感想 : 1050
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784591175354

感想・レビュー・書評

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  • やっぱり本作もとても良かったです。青山美智子さんの短編集は間違いないですね。最近この作家さんの本を読むときはどこでどう繋がるんだろうと思いながら読み進めるので、とても読みやすくなりました。(読み方が上手になった。)
    内容としては、それぞれ異なる年齢・職種の登場人物の"日常"を切り抜いて書き出している、ただそれだけです。大きな事件は起きないですし、天才や超人がいるわけでもないです。ただただ、そういうこともあるよね、というシーンが続きます。
    でもそんなありふれた生活を読んでいると、自分自身の日常への憂い、諦念、期待、希望等あらゆる感情が心の中でふつふつと沸騰してきます。現実的であるからこそ、気持ちの解像度が高く、心を揺さぶられる幅がとても大きい感覚がありました。
    今の自分をなんとなく退屈に思っている方に特にオススメです。

    最後に、、ページ数が少なめなのが少し物足りなくて残念でした。もっと先も読みたかった、、!

  • 主役が次々代わっていくが、登場人物がどこかで繋がる青山さんお得意の連作短編集。全ての短編で悩みや苦しみを持つ主人公が最後は救われるので、読んだ後は心が暖かくなる。
    全体に共通なのはタケトリ・オキナという人のポッドキャスト『ツキない話』。月に関する話しで主人公達が救われていく。このタケトリ・オキナは誰なんだろうと思っていると最後に明かされる。そっちかと思ってしまう。他の章を再度確認して見ると、ヒントが埋め込まれていた。
    『ウミガメ』の高校男女の切ない話しに涙し、最後の『針金の光』で更に優しい気持ちになった。

  • 久しぶりの青山さん、月に関する「ツキない話のポッドキャストのリスナーにまつわる短編集」どこかで繋がっていて、それぞれの新月があって、ちょっと心温まるお話でした。最後にウルっとなります。

  • 青山美智子さんの小説は、いつもスーッと物語の中に入っていける。
    共感する場面が多く、気がつくと自分の体験と絡ませながら読んでいることがしばしば。

    例えば、ポッドキャスト『ツキない話』のタケトリ・オキナの声が好きだと書いてあると、
    (いい声だなーと惹きつけられることってあるな。私は水谷加奈さんの声が好きだ。
    ポッドキャスト『スナック加奈』は、話も微笑ましいが加奈さんの声に癒されるために聴いている。)
    などと思いながら読んでいる。

    青山美智子さんの本は7冊目だ。
    私にとっては水谷加奈さんの声みたいに、裏切られることなく癒されるから読みたくなる。
    癒されると同時に、すっかり忘れてしまっている大切なことを気づかせてくれる。

    本作品では以下のセリフが心に響いた。
    「ひとりの時間を持つことと孤独は別のもの」
    「あたりまえのように与えられ続けている優しさや愛情は、よっぽど気をつけていないと無味無臭だと思うようになってしまう」
    「そのときのお互いにとっていい距離で豊かに関係し合っていくという環境が大事」

    このセリフは失敗した登場人物が、失敗しそうな登場人物に語りかけるのだが、失敗しそうな登場人物と自分とを重ね合わせていた。
    自己中心的になりがちな生活態度を修正し、もう少し感謝の気持ちを示さなくてはと思う。

  •  あぁ、この読後感…、やっぱり青山美智子さんですね。本書も連作短編形式で、五つの物語が少しずつ重なり合い、やわらかい筆致で心に染みる、とても魅力的な作品でした。
     人の優しさやつながりが丁寧に描かれ、読後の癒され感が今回も大きかったです。

     本書のテーマは「見えないつながり」でしょうか。「ポッドキャスト」から聴こえてくる『ツキない話』。この月に関する語りは、読み手にも様々考えさせます。遠いから見えないこともあるけれど、近くても見えていないことも確かにある気がします。とりわけ人間関係には…。「新月は目に見えないけれども存在する」という言葉はとても意味深いですね。
     少しスピリチュアルですが、「新月」は「朔」とも言うそうで、この新月のタイミングは、身の回り・心の浄化によいとのこと。人にはリセットの機会も大事だという発想には啓発されます(ホントかよ!)。
     悩める人々と佑樹、この月と太陽のような対比、『ツキない話』を軸にするつながり等、設定や構成も見事です。また、エンボス加工の表紙もとても素敵で、手触り感と共にオシャレでカワイイ!
     また青山美智子さんの新たな代表作が誕生した、と言っても過言ではないと思えました。本書はきっと、また本屋大賞を賑わすことになる予感がしますが、どうでしょう?

  • 太陽が明るすぎて月が見えないことと
    大勢からの賞賛が大き過ぎて身近な優しさや思いやりが当たり前になってしまうこと
    確かに似ているかも知れないと感じた。
    どちらが大事ということもなく、月も太陽も等しく地球に豊かな実りをもたらしてくれているのになぁ

    また、自分を太陽に例えているお父さんの話は涙腺にきた。
    人を思う気持ちは、なにも全てを語らなくても静かに伝わり、良い影響を与えることもあると思えた。
    父母どちらが月でも、どちらも太陽タイプなどでも、思い合えているなら素敵な関係性だろうなぁとも感じた。

  • 初の青山美智子さん。
    かなりの話題作なのであえて避けていましたが
    驚くほどに良かったです。

    ささやかに人と人が繋がっているストーリーが素敵でした。
    とても穏やかな物語。

    月は近くで見るとクレーターなのに遠くで見ると綺麗だよねってところ
    「キレイなものは遠くでみるから綺麗なの」
    という有名な歌の歌詞を思い出しました。
    けっこう沢山の物事に共通してるとおもいます。
    憧れのもの人でも近くで関わると、あれ?て思ったり、意外とそんなもんか。。。て思ったり。
    宇宙レベルの共通事項なんですね。。。

    調べてみたところ次の新月は12/23だとか。
    少し意識して生活してみます。

    離れて暮らしている祖父母に毎月メッセージカードを贈るのですが
    今月はこの本も一緒に贈ろうと思います♪

    • こっとんさん
      SHIORIさん、おはようございます。
      いつもありがとうございます♪
      毎月、お祖父様、お祖母様にメッセージカードを送るなんて!
      なんてステキ...
      SHIORIさん、おはようございます。
      いつもありがとうございます♪
      毎月、お祖父様、お祖母様にメッセージカードを送るなんて!
      なんてステキなんだろう♪と感動してしまいました。
      この本は贈られたのでしょうか?
      きっと喜んでいらっしゃると思います。
      これからもどうぞよろしくお願いします♪
      2023/03/28
    • SHIORIさん
      こっとんさん、こんばんわ。
      コメントありがとうございます♩
      そしてこちらこそいつもありがとうございます☺︎
      最近は読書から疎遠になっておりコ...
      こっとんさん、こんばんわ。
      コメントありがとうございます♩
      そしてこちらこそいつもありがとうございます☺︎
      最近は読書から疎遠になっておりコメント気づくの遅くなりました。。
      カードと本、贈りましたが毎度のこと返事は来ずなのです。。いつも私の片思いなのです(笑)
      こっとんさんの感想も読ませて頂きました。
      この本ホントに素敵ですよね。
      これからもよろしくお願いします☺︎
      2023/03/30
  • 青山さんの作品はほっこりするものが多く
    新作が出るとチェックしていたので
    こちらも手に取りました


    今回は月をテーマにしているからか
    ほっこりというより、
    しっとりといった印象です


    5つの短編からなら作品で
    少しずつリンクしあってる連作短編


    なんとなく現状がうまくいってない人たちが
    周りの人たちの言葉や
    ツキない話を聞くことで
    少し視点が変わって変化していきます


    月も同じで
    月そのものは変わってないのに
    毎日見方が違う
    月をテーマにしてるところも
    そんなところから来てるのかなと思ったり


    特に最後の章が考えさせられました
    自分の仕事に興味のなさそうな夫や姑にモヤモヤして 
    いつの間にか作品作りも楽しめなくなっていく。

    ホントは周りの理解があって
    いつでも支えられていたのに
    すっかり忘れて
    1人の時間が欲しいと言ってたところが
    ちょっと自分とリンクして、考えさせられました


    いつも支えてくれる夫や
    そばにいてくれる家族がいることを
    改めて思い出しました

    見方を変えるって
    ホントに大事。
    だから本を読むのって好きです


    後はツキない話をきいてみたくなりました


    気に入った言葉は
    最初の章で隣の奥さんが言ってたセリフ
    「私には何もできないわよ
    恋人とよりを戻させることも
    リストラを止めることも
    だけど私がいるよってことだけ
    知って欲しかったの」

  • とても温かく、心にじんわりと染み入る読み心地でした。ところどころ、涙がつーっとこぼれました。
    ポッドキャストというものを私は聞いたことが無いので、今度聞いてみたいなと思いました。
    また、月の満ち欠けがお話の中に出て来たので、ゆっくり月を観察してみたいなとも思いました。

    青山美智子さんの作品は読みやすく、本当にどれも素敵です。

  • 月の光を感じながら 夢中にさせられる 美しい作品。
    題名も、カバーも、カバーの中の後ろ表紙に描かれたデザインも。
    そしてなにより、語られる人と人との繋がりが美しい。

    青山美智子さんの作品って
    ひとつの物語から次の物語へと 緩やかに繋がって
    最後に、すべてが 大きな絆の円 で綴じられる感じ。
    期待を裏切ることのない 優しさに満ちていました。

    物語は5つ。
    登場する人物たちはみんな『ツキない話』という
    ポッドキャストに惹きつけられていきます。
    朝7時から10分間、毎日更新される無料のコンテンツ。
    《竹林からお送りしております。
    タケトリ・オキナです。かぐや姫は元気かな》
    しっとりと深みのある男性の声で始まるこの番組に心が癒されます。
    「ジェットストリーム」みたいな感じかな?

    《月は年に3.8センチずつ地球から遠ざかっていて
    その時のお互いに一番合った状態で関わり続けてくれているんだって
    僕は思うわけです》
    この語りは、退職して暗い心でひきこもる女性の心に寄り添います。

    《今日は満月です。月がお盆のように見えるのは、
    レゴリスという月の砂のお陰なんです》
    月面上の砂が太陽の光を四方八方に跳ね返して輝きを増すのだとか。
    「月は自分が光っているなんて知らないんじゃないかと思う」
    お笑い芸人を目指す主人公が こう漏らす感想は、ちょっと哲学的。

    《今日は新月ですね。新月がなぜ見えないかというと、
    月と太陽が同じ方向にいるタイミングだから。太陽が明るすぎるんです》
    第五話の妻と夫の物語で語られるのは、
    明る過ぎる場所で、そこにあるのに見えない大切なものについて。

    新月については、いくつかの物語で度々語られます。
    《旧暦では新月が一か月の始まりとされていました。
    月が始まる。月が立つ…つきたち。
    そこから、ついたちになったそうです。
    新月を月が立つという表現、すごく素敵だな、いいなあって、僕は思います》

    月にまつわる話のポッドキャストが人と人とを優しく繋いでいきます。
    そして最後に、いつもとは違う時間に 突然更新された『ツキない話』。
    そこで語られる衝撃の内容は…。

    そういえば、11月8日は442年ぶりの皆既月食プラス惑星食で
    見る見るうちに変化していく赤い月に日本中が魅了されました。
    442年前は1580年で、その2年後に起こったのが本能寺の変。
    (木村拓哉さんが、岐阜で信長公として行列に参加した
    というニュースが同時期だったのは偶然? あっ、話がそれた!!)
    戦乱の時代から豊臣体制を経て、徳川の安定した世へと変遷し始めた時期。

    新月ではないけれど、世にもまれなこの天体ショー。
    何かが始まるのかな?
    そうならば、どうか良い変化でありますように。

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著者プロフィール

1970年愛知県生まれ。横浜市在住。大学卒業後、シドニーの日系新聞社で記者として勤務。2年間のオーストラリア生活ののち帰国し、上京。出版社で雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。第28回「パレットノベル大賞」佳作を受賞。デビュー作『木曜日にはココアを』が、第1回「宮崎本大賞」を受賞する。『お探し物は図書室まで』で2021年「本屋大賞」2位に、『赤と青とエスキース』で2022年「本屋大賞」2位に選ばれる。他の著書に、『鎌倉うずまき案内所』『ただいま神様当番』『月曜日の抹茶カフェ』『マイ・プレゼント』(U-ku氏との共著)『月の立つ林で』『リカバリー・カバヒコ』等がある。

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