日出処の天子 第6巻 (白泉社文庫)

著者 :
  • 白泉社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592880561

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  • 第六巻の序盤は厩戸王子の明晰さに舌を巻く展開。
    何百年誰一人音を出すことができなかった笛「火雲」を軽々と吹き鳴らして鬼や天人を魅了し、布都姫を狙って都を追放された東漢氏の駒を邪眼でてなづけ、百済の要求による大陸出兵で蘇我寄りの人間を都から大量に減らそうと企む大王の思惑を任那再興という名目にすり替え鮮やかにかわして逆に大王側の人間の数を減らし、山背王子誕生を機に額田部女王と蘇我氏の両方から金を出させて斑鳩にカラクリ仕掛けの新宮を建て、厩戸を狙う大王の刺客からなんなく身を守りきってしまう。

    そして、中盤から終盤にかけて、物語はぐんと核心に迫っていく。なんと言ってもこの巻で厩戸と毛人の関係に決定的な結末が訪れるのだ。
    女装して東国の調使いの行列に潜り込み、大王と布都姫の命を狙う厩戸は極道モノの悪役も真っ青、さながら悪の化身のようなダークヒーローに変貌する。逃げようとする大王の急所を狙いすましてほくそ笑みながら簪で突き殺し、身を挺して布都姫を庇った白髪女を躊躇うことなく刃物で斬り殺し、白髪女の死に動揺して「早くわたしも殺って」と哀願する布都姫をも一思いに手に掛けようとする。そしてついにその現場を毛人に見られ、今までの悪事も、厩戸の毛人への気持ちも、すべてが露顕してしまうのだ!
    厩戸のやってることは本当に酷いし、どう考えても悪い事なんだけれども、なぜか私は彼の恋路を応援したくなる。布都姫は何も悪くないし、寧ろ彼女は厩戸の陰謀の被害者なんだけれど、なぜか私は厩戸の方を応援してしまう。この気持ちはいったい何だろう?
    毛人…!頼むから厩戸を選んでやっくれ!と儚い願いを込めながら話を読み進めるが、物語は史実通り毛人が布都姫と結ばれるという結末にたどり着いてしまう。
    毛人と布都姫が結ばれるのははじめから分かりきったことだったけれど、「ああ毛人!これがそなたの答えなのか!では…わたしはいったい わたしはいったい何のためにここまでやって来たのか」「わたしは毛人を失った 何もかも!」厩戸は嘆き悲しみのどん底に突き落とされてしまう。なんかもう、すべてを失った厩戸が可哀想すぎるんですけど…(泣)
    「わたしを殺して下さい あなたさまがどうしても布都姫を生かしておけないとおっしゃるのならどうかこの毛人をも殺して下さいませ」…こんなこと、愛する毛人に泣きながら言われたら、いくら冷酷な厩戸でも泣きたくなるさ!自暴自棄になるさ!そして、淡水(舎人)に体を許してしまうさ!(いやいや、駄目だよ厩戸さん!いくら投げやりになったからって淡水なんかに…)

    ただ、毛人と布都姫の側からすれば、念願叶ってめでたしめでたしなハッピーエンドを迎えたのだからなんとも言えない。二人は結ばれるべくして結ばれたんだろうしなぁ。純愛の勝利か…それもまた良し。

  • うわっ、えっ、あっ、ああー……という感じ。王子が可哀想すぎる。人を好きになるって、誰かを求めるって、ここまで狂おしいものなのか。

  • 自業自得といえばそうなんだけど・・・皇子切ない。

  • 息もつかせぬ展開とはこのこと。

    なんだろう、強いて感想を言うのであれば「淡水(笑)」の巻でした。
    はー、終わってしまうなぁ。

著者プロフィール

山岸凉子(やまぎし・りょうこ)
1947年北海道生まれ。69年デビュー後に上京。作品は、東西の神話、バレエ、ホラーなど幅広く、代表作に「アラベスク」「日出処の天子」「テレプシコーラ/舞姫」など。

「2021年 『楠勝平コレクション 山岸凉子と読む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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