ロストハウス (白泉社文庫 お 1-16)

著者 :
  • 白泉社 (2001年6月1日発売)
3.94
  • (71)
  • (33)
  • (74)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 558
感想 : 41
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・マンガ (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784592887096

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 大島弓子作品は、打ちのめされるのがわかっているのでなかなか手を出せない。
    今回も表題作と「8月に生まれる子供」で頭撃ち抜かれた気持ち。
    とても酷で、それでいて温かい。
    痛みの余韻をいつまでも味わっていたい。

  • まわりに流されない大島弓子ワールド変わらず。
    最近の猫漫画では本来の大島弓子はたのしめない。
    あれはあれでいいけれど、このロストハウスを見て、自分は自分でいいと思える瞬間を感ぜられて、それが私が大島弓子を愛する訳の一つなのだ。
    バナナブレッドのプディングの衣良ちゃんから続く、この世にあいにくい子たち。
    生物としてほんとに愛おしい。

  • 大島弓子は何を読んでも素晴らしい。
    素晴らしいのだが、それを百も承知で言うとすれば、今回初めて読んだこの短編集は最高傑作(のひとつ)だと思う。
    平成になってからの作品ばかりだが、とにかくどれもこれも恐ろしいほどクオリティが高い。そして、彼女らしい幻想と哲学が全開だ。
    そこで描かれるのは、世界の終りと向き合う田舎の女子高生、都会から田舎へ移住した若いカップル、若年性痴呆症にかかった女子大生などなど、なにかしら欠落を抱えた、あるいは欠落に向き合おうとする人々だ。
    残酷な現実とそれを乗り越えるための幻想。
    そして、跳躍はいつも意図せずふいにやってくる。
    欠落はなにも変わらない。
    だが世界の全てが突然輝きだす瞬間。

    それらの作品のあまりの説得力に、本を閉じ、そんな奇跡にひょっとしたら自分も出会えるのかもしれない、と思う。
    例えば、表題作の主人公の女の子が思うように。

    「わたしは/わたしの前で/世界のドアが/とつぜん/開け放たれて/いくのを/感じていた/この世界の/どこでも/どろまみれになっても/思い切りこの世界で/あそんでもいいのだ」

    そう、思い切りこの世界であそんでもいいのだった。
    それをたった今思い出した。

  • 大島弓子の良さがやっとわかったかも。(大島弓子3冊目)
     
    『8月に生まれる子供』良かったなぁ。
    最近amazonプライムで『愛を読むひと』という映画を観て感動したけど、私も30代後半になったし女の人が歳をとっていって(あんまり希望のない人でも)優しくされる話を見たいのかなぁ…。

  • 「鬱の本」つながりで。表題作は、ルー大柴みたくいうと、ハウスをロストしたけど、ワールドをゲットしたということなのかな。子供の頃、隣家の新聞記者の忙しくていつも片付かない、けれど扉の開いた部屋であそぶことに心からのやすらぎを覚えていた主人公が、長じて、片付かない部屋でしかやすらげなくなってしまい、行方のわからなくなった彼を探すうちにホームレスになったと知り。「ああ彼はついに全世界を部屋にしてそしてそのドアを開け放ったのだ」と。他に、世界がもうすぐ終わると知らされた高校生グラフィティ、唐突な田舎暮らしを始めた夫婦の顛末、18歳にして急速に老人化していく女子高校生、文通相手が家出して転がり込んできてはじまるドタバタ、などなど。

  • 初大島弓子

    大人になることの挫折や、生きづらさを
    少女という無垢であり反抗的な視線から描いているなと感じた。そういう意味では絵本風でもある。

    洒脱なタッチの作風であり、
    気を張らなくて読むことができるが、
    時折ハッとするコマや流し読みでは気が付きにくいテーマがあるので、読み応えが充分ある。
    現実世界をベースにしているものや、
    少しファンタジックな作品まであり、良いスパイスで飽きる事がなかった。

    個人的には表題作よりも、
    頭と末の短編が好きだった。

  • 名作は色褪せない

  • 不思議な「キュン」でした!

  • 最初の話が夢オチだったので、読む気がなくなった。

  • まんが

  • ハッピーエンドを見ると
    となりの人が
    すごくいい人にみえてくる

    愛すべき
    男の子に
    みえてくるのだ

    でもほんとうは
    こういう気持ちは
    まがいものなのだ
    ということを
    わたしは知っている

    映画が終って
    しばらくたてば
    すっかり冷静に
    なるものだ

    (中略)

    線一は
    自分の生まれた
    この田舎町を
    すみずみまで
    みて歩こうと
    提案した

    床屋さんの
    ネオン

    旧式の
    ポスト

    木造の役場

    たおれた自転車

    しげる夏草

    とうもろこし畑

    きれい
    じゃん

    映画に負けないくらい
    きれいだよ
    木も
    空も
    草も

    線一も

    『ジィジィ』

    「ああ彼はついに全世界を部屋にしてそしてそのドアを開け放ったのだ」

    『ロストハウス』

  • ラジオドラマで聴いていたけれど、絵になるとやはり格別の風味。
    とにかくモノローグが絶妙なんだ。
    少女や少年に入り込めてしまうのだ。
    そして作者の優しい眼差しと、ホラーな視線。

    ちなみに。
    女の子の怒った顔ってかわいくていいなぁ、
    と読書中思っていたが、読後、現実に帰ってはたと気づく。
    あ、かわいい女の子の起こった顔がいい、と混同していた。

  • 「自分のおうち」って? そんなことを考えながら読んだマンガ。ラストの主人公の「気づき」に、とても開放感を感じました。

  • 『綿の国星』『夏の終わりのト長調』
    の独特の雰囲気で好きになった大島弓子さんです。
    夢の様な絵の中に、うっすら漂う怖さ、みたいな。

    ただ、この本ではその雰囲気がちょっと少なかったので残念。



    『青い固い渋い』
    結婚という形をとらずに、田舎暮らしを始めた二人。行ってみれば良いことや良い人だけではな。投げ出して都会に帰ろうとした電車を待つ間、顔見知りの無口の郵便局員さんが一言話しかけてくれた。
    それだけで、もうちょっとがんばれるようになった

    『8月に生まれる子供』
    凄まじい速さで老化していく大学生・びわ子。
    姉に産まれる子供の話を聞いて、自分は痴呆によって全てを忘れるのではなく、新しく産まれ変わるのだと感じる。

    『ロストハウス』
    鍵を開け放して出かけるマンションのおとなりさん。
    小学生のえりはいつでも入っても良いとのお許しをもらい、ちょくちょく出かけるようになる。
    いつのころからかお隣さんの彼女が一緒に住むようになり、最初は居場所を奪われた気持ちになったが、
    彼女からも「いつでも入って来て良い」との言葉が。
    入っていっても話はしないが、そっとお茶を出してくれる。
    彼女の死と自身の家の引越しによってその場所は失われてしまったが、
    大学生になった今も、えりはその「奇跡の関係」を求めている。

    『クレイジーガーデンPART1・2』
    実家の山を守るため、文通相手を勝手に頼って都会へ出てきた高校生テル。
    文通相手から部屋の半分を借りることになり、ついでに彼の卒論のテーマとなることになった。
    高給にひかれて電話風俗に勤務していたが、偶然芸能界にスカウトされて大人気となる。
    風俗がばれた時も、同棲(実際には同居だが)が世間にバレた時も、テルは何も隠さず悪いとは思わず、文通相手にだけはきちんと謝るさっぱりさ加減が面白かった。

  • おすすめの漫画は、と聞かれたら、大島弓子と答えるのだけど、反応は薄い。なんでだろう。季節の描写とか、セリフの一つ一つがとてもきれい。「8月に生まれる子供」は、寝る前に読むと老いるとか死とかについて考え込んでしまう。

  • 『ダリアの帯』とも共通しますが、
    登場人物がどんなにお茶目でかわいくても、
    そこに描かれているのが
    どれほどほのぼのとした日常風景だったとしても、
    どうにも拭いようのない、
    ほのかな死の匂いが漂っています。
    平凡で幸福な女子大生が、
    突然、奇病に見舞われ、急速に老化が進行してしまう
    「8月に生まれる子供」(1994年)は
    女にとって、かなりホラー。

  • 美しいモノローグに、かわいらしい絵・・・でも本当は怖い大島弓子・・・。大好きですが、体調が悪いときは読めないですね。

  • 収録されている話では、クレイジーガーデンが一番好きです。実写化したら面白ろそう(笑)

  • 大島弓子の中ではイマイチ?だけど、
    世界観自体が好きなのでまあ良かった。
    この中では、タイトルにもなってるけど
    ロストハウスが一番よかった。
    私も散らかった部屋でお留守番したいです。

  • そう、世界は既に開かれているのだ。
    様々なことに絡めとられて見えなくなってしまっているだけで。
    わたしはただそれに気づくだけでいいのだ。

  • 大島弓子は私のエバーグリーン。この作品を読むと忘れてた記憶がよみがえるような、不思議な気持ちにおそわれる。

  • 「8月に生まれる子ども」
    青春の真っ只中で、急に老化が始まる少女。
    肉体的にも、精神的にも加速度をつけて、変化していく。
    症状が進み、ついには自分が何者かということも細切れの意識のなか、ゆがんだ字で手紙を書く。
    たとえこうこうと眠るだけになっても、どんな姿になろうと、最後の最後まで生かして欲しい、という内容だったと思う。

    自分なら、そんなこと思えない。絶望すると思った、、、。
    初めてこの本を読んだときは、まだ学生だった。
    30代の今、読み返せば、生きたいというその少女の言葉に救われる思いがする。
    また、時間を置いて読み返したい。

    生をまっとうすることについて、色々思いを馳せます。

  • わたしの働いている意味がなくなってしまったのです なんのためにゆっくり眠ることをゆっくり歩くことをゆっくり考えることを失ってくらすのでしょう

  • どすこい素晴らしい。
    ロストハウスは、素晴らしい。

  • 掲載誌がイロイロ読んだことのない作品がいくつも載ってた。
    クレイジーガーデンが好き。

  • ロストハウス 好き。
    うん、この本、好き。

  • やっぱり「8月に生まれる子供」が印象的かなあ。根が暗い人の持つ切なくなるほどの明るさがすごく好き。

  • どれも読んだ後 ちょっと切なくなるのだけれど
    「8月に生まれる子供」という話を読んだ時は
    最初 とても衝撃的でした

  • この中の8月に生まれる子供という作品はすごいインパクトだった。
    実際、早老症というのは聞いたことがあるが、
    肉体の老化と精神の老化のバランスがとれないというのは
    大きな不幸だろうけれど、普通の人には見えないものが見えることが
    あるのかもしれない。

  • 何が尊いかっていうのは、この人が知ってる気がする

全41件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

栃木県生まれ。短大在学中に『ポーラの涙』でデビュー。昭和53年より「月刊ララ」に掲載された『綿の国星』は、独特の豊かな感性で描かれ、大きな反響を呼ぶ。『ミモザ館でつかまえて』『夏のおわりのト短調』『パスカルの群』など著書多数。

「2011年 『グーグーだって猫である6』 で使われていた紹介文から引用しています。」

大島弓子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×