エミリー

  • ほるぷ出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784593503032

感想・レビュー・書評

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  • 1830年、アメリカ・マサチューセッツ州のアマーストで生まれ、1886年に同じ土地で亡くなった詩人・エミリー・ディキンソン。
    自分の意志で発表した作品は一篇もないという実に凛々しい芸術家であり、また大変な隠遁家でもあったらしい。
    その「エミリー」の住む家の向かい側に引っ越してきた家族の、小さな女の子の眼を通して語る「エミリー」との出会い。
    淡いけれども鮮烈な印象を残すその交流を描いた一冊で、この上なく美しい作品。
    図書館に返却する日まで毎日必ず一度は読んで、読むたびに発見があり読むたびに涙がにじんだ。

    今で言う「引きこもり」の状態でも、エミリーの内面がどれほど充実して幸せだったか、主人公の女の子の語りでそれが描かれている。
    ある日突然、ブルーベルの花(この花、とても好きです)とともに手紙が届く。
    近隣から「謎の女性」呼ばわりされているエミリーからの手紙で、その手紙に託されたメッセージをきちんと受け取った女の子の母親が素晴らしい。
    そこから、なんとも不思議な交流が始まっていく。
    詩人は、見えないものを見、聞こえないものを聞き、丁寧に言葉を紡ぐ。
    後書きによれば、庭仕事の達人でもあり自然のするどい観察者でもあったという。
    お話の最後にエミリーが女の子に手渡したとされる一篇の詩が原文とともに載せてある。
    読んで、思わず胸が震えるのは私だけではないだろう。

    表紙をめくった次のページからもうバーバラ・クーニーの世界が広がる。
    イラストボードにシルクを張り、下地に石膏を二度塗った上にアクリル絵の具と色鉛筆・パステルなどを使って描いたという。
    アマーストの風景やエミリーの生家の様子など、精密なスケッチが見ごたえがある。
    冬の精のように描かれたエミリーも登場する。
    クーニーがどれほどこの詩人に敬意をはらい、心を寄せて描いたかがダイレクトに伝わってくる。

    掛川恭子さんの翻訳もとても味わい深く素敵だ。
    詩人との出会いにふさわしい表現の数々に、思わずアンダーラインを引きそうになるほどだった。
    絵とテキストと翻訳の三位一体で、美しい音楽を奏でているような魅力あふれる作品。
    一生の宝物になるような一冊で、読後すぐにエミリー・ディキンソンの詩集まで入手した。

    1993年度コールデコット賞受賞。
    読み聞かせに使えそうもないのが、唯一の困った点。

    • nejidonさん
      5552さん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      とっても嬉しいです!
      実はワタクシ、あがったばかりのレビューを読んで...
      5552さん、こんばんは(^^♪
      コメントありがとうございます。
      とっても嬉しいです!
      実はワタクシ、あがったばかりのレビューを読んでおりました。
      さてゆっくりコメントしようかと思って再度開いたら???
      そうでしたかー。私もそういうことはよくありますので、残念ですが仕方がないです。
      でも律儀にコメントまでくださって、思わず涙が出ましたよ、ええ。
      読んでくださるだけでもありがたいのに、感想まで書きこんでもらえて、私は幸せ者です。
      素敵な本ですよねぇ。エミリーも、この家族も。
      どうせ生きていくなら、このお父さん・お母さんのように生きていきたいものです。
      エミリーにはとうていなれませんので(笑)。
      5552さん、本当にありがとうございました!

      2018/07/11
    • 5552さん
      nejidonさん、こんばんは。
      再びお邪魔してすみません。

      おおっ、読まれてたんですね。
      今思い返すとそんなに変なレビューでもな...
      nejidonさん、こんばんは。
      再びお邪魔してすみません。

      おおっ、読まれてたんですね。
      今思い返すとそんなに変なレビューでもなかったかもですね。
      あのレビューを投稿した後、罪悪感と後悔に苛まれていしまい(笑)消してしまいました。
      考えすぎでしょうね~。
      読んでくださったことに感謝します。

      これから暑くなりますが、お庭のお仕事などでの熱中症には気を付けてくださいね。
      2018/07/12
    • nejidonさん
      5552さん、おはようございます(^^♪
      レスが遅くなってしまってごめんなさい。

      はい、全然変だとは思いませんでしたよ。
      とても素...
      5552さん、おはようございます(^^♪
      レスが遅くなってしまってごめんなさい。

      はい、全然変だとは思いませんでしたよ。
      とても素直に感動が伝わりました。
      でも私がそう思っても、ご本人が気になるのなら仕方がないかなと諦めました。
      言いたいことが上手く言えず、というのは本当によくあることで、私なんて何度消したコメントがあることやら・笑
      ということで、もう気にしない、気にしない。

      そうそう、昨年の夏、庭で熱中症で倒れたことがあります。
      まさか自分が・・と後からだんだん怖くなりました。
      ご心配いただいてありがとうございます!
      5552さんもぜひお身体大切にね。
      2018/07/15
  • アメリカの詩人 エミリー・ディキンソンと
    そのとなりに引っ越してきた少女のと交流のお話

    詩に関しての情報に疎いので
    詩人 エミリーのことは初めて知りました。
    彼女の詩は読んだことはありませんが、
    絵と静かな文章の世界観が素敵だと感じました。
    大人が静かに楽しめる絵本です。
    5歳の子は途中で私の横からいなくなりました。(笑)

  • アメリカの詩人エミリー・ディキンソンと小さな女の子の交流を描いた絵本。

    エミリー・ディキンソンは、1830年マサチューセッツ州のアマーストで生まれ、1886年その地でなくなりました。
    ずっと独身で両親の家で妹と暮らし、内気で知らない人には会おうとせず、とくに亡くなる前の25年間は家を出なかったそうです。
    死後に1800もの詩が見つかり、発表された詩で有名になりました。
    最初にそう聞いたときには、鬱蒼とした館で鬱々と暮らしていたイメージでしたが、そんなに暗くはないようです。

    通りに面した家で、庭仕事もしていて、草花を育てる達人でした。
    近所の子供とは付き合いがあったそうで、家に来る子供と話したり、窓から籠に入れたクッキーを降ろしてあげたりしていたとか。
    きちんと髪を結って、白いドレスを着た、内気な女性。
    丁寧なタッチで、あたたかく描かれています。

    おむかいの黄色い家には、姉妹が住んでいて、お姉さんの方は外に出てきたことがない謎の女性。
    小さな女の子の家に、ある日手紙が舞い込みます。
    いつもピアノの練習をしているママにあてて、家に来てピアノを聞かせて欲しいというお誘い。
    その夜、「興味はあるんだろう」とパパがママに話しているのが聞こえました。
    次の朝、家中が音楽で溢れていました。
    「詩ってなんなの?」とパパに聞くわたし。

    新しい絹の服を着て、ママと一緒にお向かいに出向きます。
    謎の女性は、部屋の外の階段で聞いている様子。
    一曲ひき終えると「ごしんせつなおとなりさん。コマドリもあなたにはかないませんわ。もっと弾いて下さい。もう、春がそこまで来ているような気がしてきました」と小さな声がします。
    部屋の外に出て、階段にいるエミリーに会った女の子は、紙切れを見て「それ、詩なの?」と聞きます。
    「いいえ、詩はあなた。これは、詩になろうとしているだけ」と答えるエミリー。

    1993年度コルデコット賞受賞作。
    バーバラ・クーニーは3度目の受賞だそうです。

  • 姿を見せないお隣のひと。
    アメリカの著名な詩人 エミリーディキンソンと少女の出会いが描かれています。
    ディキンソンの詩 もっと読んでみたい。
    バーバラクーニーの絵が優しくて素敵。

  • 久しぶりに読み返しました。

    エミリー・ディキンソンの詩が、
    亡くなってから妹の手によって世に発表された事を初めて知りました。

    素晴らしい絵本でした。

    向かいの黄色いお家にひっそりと暮らし、家から出ようとしない夫人、エミリー。
    近所の人たちから不思議がられている。

    ある日、少女の家に夫人から手紙が届き、
    ママが黄色い家にピアノを弾きにいくことになる。

    顔を出さないエミリー、階段に椅子を置いて、詩をしたためながらピアノを聴いていた。

    二人は心を交わしたみたい。

    「それ、詩なの?」
    「いいえ、詩はあなた。
    これは、詩になろうとしているだけ」

    そんなふうに。。

  • ◆©1992 by Michael Bedard 訳:掛川恭子 ◆ディキンソンの詩集を2冊読了後に。◆彼女の詩情が、バーバラ・クーニーさんの絵で。可憐な草花や生き物たちが各所できいています。設定や文章も、作者がエミリーとその詩を愛していることがストレートに伝わってきます。〈詩はどこに宿るのか。〉〈言葉はどのように詩に変わるのか。〉… 私がエミリーを好きな理由が、素敵なエピソードを添えてまさに絵本化されている、作者と私はエミリーに同じ魅力を感じている…そういう高揚感を抱きました。この絵本大好きです。□

  • 詩人エミリー・ディキンソンの謎に満ちた人生を一人の女の子の視線で描いた美しい文章をクーニーが神秘的な色合いの穏やかな絵で彩ります。
    「詩」がどうやって生まれるのか、その意味をこどもたちに語りかける絵本です。

    • Michiruさん
      「詩」が生まれる瞬間。
      私も見てみたい。
      手に取ります。
      「詩」が生まれる瞬間。
      私も見てみたい。
      手に取ります。
      2009/06/04
    • lovefigaroさん
      MakiYさん
      「詩」って強いのですね。
      MakiYさん
      「詩」って強いのですね。
      2009/06/05
  • 「いいえ、詩はあなた」こんなにもうつくしい。ことばも、慈しみのこころも、ふたりの雪色のドレスも。エミリーは孤高の星でありながら、生きとし生けるものすべてを深く愛したのではないか。遠い星が、地球に挨拶の瞬きを送るように。

  • 多分バーバラ・クーニ―の絵が好きで、読みたいと思ったのだと思います。
    表紙の、青いケープコートとマフの女の子のことをエミリーと言うのだと思っていました。
    エミリーとは表紙の、2階の左端の部屋から外を見ている女性のことです。

    語り手の私はまだ本の少女で、新しい家に引っ越してきたばかり。
    その家の向かいにある黄色い家には、町の人たちから”なぞの女性”と呼ばれている、20年近くも家の外に出たことのない人が、妹とふたりですんでいました。

    少女のお母さんはピアノが得意で、ある日”なぞの女性”から、「家に来てピアノを弾いてくれ」と正体を受けます。
    少女もついていきますが、”なぞの女性”は姿を現わしません。
    でも、部屋の外に出ると、階段の踊り場で小さな椅子に座ってピアノを聞いていた女性がいたのでした。
    少女はポケットからユリの球根をふたつ取り出し、「春を持ってきてあげたの」と言います。

    少女と女性の小さな交流。
    それだけの絵本ですが、とても温かい気持ちになれる絵本です。

    途中で、エミリーの正体はわかりました。
    生涯を屋敷の中で隠遁して過ごし、死後になって大量の詩が発見され、アメリカの人たちに愛されている詩人、エミリー・ディキンソンのことですね。

    私ちょっとエミリー・ディキンソンって、宮沢賢治に似ているような気がしていました。
    死後に作品が発見されたこと、その作品を多くの人が知っていて国民的詩人であること、子ども好きなこと、自然に対する観察の鋭さなどなど。
    だけど日本語に訳された彼女の詩を読んでも、あんまりピンとこなかったんですよね。
    国民性の違いなのか、私の感受性の問題なのか。

  • 美しいものを愛したエミリーの、透けるような人生が、クーニーの絵で残されていくことに、うれしく思いました。

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