ダヤンとハロウィーンの戦い: Dayan in Wachifield5
- ほるぷ出版 (2005年5月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
- / ISBN・EAN: 9784593592302
感想・レビュー・書評
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ダヤンの長編ファンタジー第5弾ですが、
本書での主役はダヤンではないように思います。
ダヤンは、アルスにいても、わちふぃーるどに来ても、過去に来ても、
どこに行っても「今を生きること」ができる存在ですが、
本書は、ダヤンに動かせない「過去」が
どんどんと進展していっているような雰囲気です。
さらなる魔王との戦いに備えて準備を進めていくタシル、
おぼれ谷に流れ着いたニンゲンの船の救出、
そのニンゲンのひとりであるバードと大魔女セの恋、
そして、暗躍するキマイラにより、
ダークサイドのストーリーが静かに動いていきます。
ある意味小休止で、ある意味急展開なのです。
主役ではないように見えるダヤンだが、重要な役割を果たしています。
まず、ニンゲンのバードが、セを好きであるという打ち明け話を聞き、
間を取り持つような役割を果たします。
そして、100年に1度の大ハロウィーンだからと、
今まで魔族の集まりを欠席し続けていた大魔女セが、
出席しなければならないように仕組まれたときも、
ダヤンはセのお供をするという役割を果たします。
前作・『ダヤンとタシルの王子』で発覚した、魔法の力を強める力を、
セのために使うという役割もあります。
今までのストーリーのようにダヤンがお話を動かして、
活躍して、締めるというのとは、今回は少し異なるのですが、
ダヤンがおそらくこの後に果たす役割を
伏線的に埋め込んでいるストーリーのようにも見えます。
そして、今回は、ダヤンがどこにいても、
「今を生きられる」という力が、
ダヤンが普通にしているというだけで、際立って見えてきます。
というのは、この過去の時代には、
ダヤンが知っている未来の時代にも生きている存在がいるのですが、
その存在は、明らかに、「未来」よりも「過去」の方が、
より生き生きと生きているのです。
こちらの時代の話を読むと、
今まで読んだ「未来」の時代は、その登場人物にとっては、
まるで余生のようなものだったのではないかと思われるのです。
ですが、ダヤンは、その「未来」を変えるために、
「過去」に送り込まれた存在です。
いったいダヤンは、今後の状況をどう切り開いていくのでしょう。
私にとっては、『ダヤンと時の魔法』のエンディングで、
時を越えたときに起こった出来事が、まだ宙に浮いたまま残っています。詳細をみるコメント0件をすべて表示