米中ソに翻弄されたアジア史 カンボジアで考えた日本の対アジア戦略

  • 扶桑社
4.33
  • (5)
  • (6)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 69
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784594086015

作品紹介・あらすじ

中国共産党による各国への〝共産主義浸透工作”は今なお続いている!
それは日本にとって決して他人事ではない

大陸に飲み込まれないために
インドシナの歴史から日本人が学ぶべきこととは?

今、気鋭の執筆陣による画期的な“真実のインドシナ史”

カンボジアに行ってみたら……
中共の酷さがわかった!!

タイやベトナムほど観光地としても市場としてもメジャーではない、しかし、東南アジアで今現在もっとも中国の植民地化が進み、中国人客があふれているカンボジアを旅した3人の論客がその歴史・政治、ひいては日本と中国について分析と議論を重ね、多角的かつコンパクトにまとめた一冊。
カンボジアを訪れるたいていの観光客が見学するキリング・フィールド、虐殺博物館。
拷問の限りを尽くされ亡くなった、罪なき人々の断末魔が聞こえるような展示に、クメール・ルージュ(カンボジア共産党)の残虐性を伺い知ることのできる場所である。
こうした残忍な「革命」は、中国とカンボジアだけでなく、当時(1970年代)、世界各地で行なわれた。カンボジアは特に、1958年の大躍進政策から文化大革命(1966年~1976年)の頃の中国とおぞましいほどに似ている。拷問のやり方までそっくりであった。
・文化レベルが高く豊かなカンボジアで、なぜポル・ポト派による大虐殺が起きたのか?
・中共の革命輸出がどのようになされたのか。
・カンボジアだけでなく東南アジアすべてにおいて、華僑・華人がどのような役割を果たしてきたのか。
私たちはこれらについてもっとよく知らなくてはいけないと、著者たちは力説する。それは、決して他人事ではなく、今、日本が直面している出来事でもあるからである。
米中新冷戦を軸にした新たな国際秩序の枠組みへの転換を伴う激動の時代が幕を開ける、第三次世界大戦前夜ともいえるような不確実性のなかで、今後、日本と日本人が何をすべきか、どんな未来を描くべきかを問う。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • h10-図書館2020-12-18 期限1/8 読了1/6 返却1/7

  • カンボジアの歴史の近現代史。カンボジアはほぼ知らないと言っても過言のない国なので、とても勉強になりました。中国と共産党に蹂躙されすぎ。そして王様がいい加減すぎて…。
    今はまた中国に間接侵略されているみたいですが、どうなってしまうのでしょうか?そして日本も傍観してはいられないな、と思うのですが、私にできることは今いる中国人に精日になってもらうようにするくらいか…?

  • カンボジアについて。
    ここまでカンボジアについて掘り下げた本は初めて。
    やっぱり日本人による本でないと、ここまでの話は出ない。
    カンボジアに旅行したときのガイドが現在の政府についてなどの意見とか、言いにくそうにしていたのが印象的だったが、これを読んでなるほどと思った。
    そして、中国人があふれるばかりにいたのも本当。なんでこんなに中国人が?と不思議だったが、これも納得。

  • 江崎さんが出される書籍は、全て読もうとAmazonで予約し、購入させていただきました。
    様々な思いがある中で、その道の専門家が想いを込めて書いた内容に、知らなかったことを知る喜びと、大きな力の波に翻弄されて、大変な思いをされた方々への同情の念と、最低限、国民のためにという意識さえあれば避けられた難癖に対する悲しみ、いろいろな思いが交錯しました。
    思いの方が先に立って、なこなか気持ちの整理がつきません。
    読み進めていくあいだに、何度となく、「なんて馬鹿なことを」という言葉が心の中で浮かびました。
    まだ消化できていませんが、一番に強く感じていることは、「国を守る力がない場合、国民は蹂躙され翻弄される」ということです。
    自分にとって一番大切な家族が、決して悲しい思いをしないために、自らができることをしっかりやっていくことしか、方法はないんだなと感じました。
    なるべく多くの人に読んでもらって、これらの思いを共有できればと感じました。

  •  カンボジアといえばアンコールワット、それからポル・ポトの虐殺があったということを辛うじて知っていた程度だったが、かなり複雑で壮絶な歴史を歩んで来たことが分かった。タイトルの通り米中ソに翻弄された他、ベトナムとの関係、残留日本兵が与えた影響など知らない事実がたくさんあった。シハヌーク国王の行動を見ると、「私の命はどうなっても良い」とマッカーサーに仰った昭和天皇はじめ、改めて日本の天皇は誇らしいなとも感じた。
     これからの対チャイナ関係において、カンボジアはじめ東南アジアの情勢にも注視してみようと思う。

  • 共著者3名が、カンボジア訪問を機にアジア史、特にカンボジアを中心としたインドシナの歴史について書いた本。宮脇氏が、古代から英仏の植民地になるまでの歴史を概説し、江崎氏が、残留日本兵の助けを借りながらカンボジアが独立を果たす経緯を記し、福島氏が、カンボジアにおける中国の影響力について書いている。3者とも内容は深く、かつ3者がうまくマッチしていて読みやすい。とても勉強になった。最後の対談でも繰り返し述べられているが、中国が今まで国際政治や覇権争いの中で繰り広げてきた残虐な行為とそれをリードする中国人リーダーたちの人間性を、日本人はよく理解する必要があると強く感じた。

    「インドシナは、インドとシナの中間地帯だからインドシナというわけだが、インドシナ半島の大部分は、歴史的には古代インド文明の影響を強く受けており、シナ文明の影響下にあったのは、独りベトナム、それも長い間、今のベトナム北部だけだった」p25
    「東南アジア史は、内部で書かれた史料がほとんどないため、世界史の教科書で取り上げられることが少ない」p27
    「17世紀のチャンパにはイスラム教徒の王がいた。カンボジアに住むチャム人はほとんどがイスラム教徒である。現在でもベトナム中部から南部にかけて、約10万人のチャム人が、集団としてまとまって暮らしている」p32
    「(カンボジアとラオスでは)フランス人を補佐する下級官吏や警察官として多数のベトナム人を登用した。かつて宗主国としてラオス、カンボジアに君臨したベトナムは、今度はフランスの植民地支配のもとに、新しいよそおいをまとった支配者として現れたのである。カンボジア人、ラオス人とベトナム人のあいだの民族的憎悪は増幅され、両者の不信感は一層高まった」p54
    「現在、日本から見ると、カンボジアにおける中国の存在感は増すばかりで、ほとんど属国ではないかと危惧するほどであるが、現地で話を聞くと、中国よりもベトナムのほうがもっと危険だし、ベトナム人の方が嫌いだという。それは、ベトナム戦争のはるか前からの歴史的背景と直接の経験から出たものである」p55
    「三野正洋氏は、ベトナム戦争に介入したアメリカと、カンボジア戦争に介入したベトナムは、まったく同じ立場であり、ベトナムにとってのアメリカは強大な国家であるが、カンボジアにとっての統一ベトナムも大国なのだ、と指摘している。現地を見、カンボジア人に話を聞いた私たちも同意見である」p88
    「日本の不在と、米中の進出が、アジアに混乱をもたらしている」p100
    「防衛省の防衛研究所が残留日本兵の歴史を調べ、このように記録を残そうとしてくれていることは極めて重要だ」p120
    「ベトナムの独立運動は共産党主導であったのに対して、カンボジアのソン・ゴク・タン政権は非共産・反仏・親日であり、その政治イデオロギーはまったく異なっていたが、フランスという共通の敵と戦うためにベトミンと手を組んだのだ」p121
    「日本軍による義勇軍の創設と只熊さんの活躍がカンボジアの独立に大きな影響を与えた。そしてその影響の大きさを理解していたから、独立を果たしたカンボジアは日本に対する賠償を放棄したわけだ。過去の歴史を直視し、将来に向けて語り継いでおきたいものである」p134
    「(1965年インドネシア・スカルノ大統領)「北京・ジャカルタ枢軸」という言葉が登場するようになる」p158
    「戦時中に日本軍によって指導された経験を持つスハルトらが1967年8月、反共を掲げたASEANを結成したことから、アジア共産化の危機は辛うじて回避されることになった」p160
    「どこの国でも、正義感の強い若者は美辞麗句に弱い」p171
    「(カンボジア)ポル・ポト政権下の3年8か月に、飢餓、疫病、虐殺などで100万〜200万人以上ともいわれる犠牲者を出した。この死者数は人口の13%〜29%に当たる」p177
    「シハヌーク国王が自らの権力を維持するため、民主主義を否定し、中国共産党やベトナム共産党と組んだことがその後の内戦と外国による軍事介入を生み、結果的にカンボジアをベトナム共産党の影響下に置く事態を生んでしまった。しかも近年、カンボジアは中国共産党の影響も強く受けている。その悲劇の歴史を理解している人がどれほどいるのだろうか。カンボジア復興に協力している日本側は理解しているのだろうか」p182
    「その実現のために身を粉にして働き、中共の理想を信じて忠誠を尽くしたのはカンボジア華人、そしてベトナム華人らが形成した僑党、華運であった。だが、中共はその華人たちをも見捨てるのである」p206
    「(カンボジア)日本の関係者も、あそこで命を落としているわけですから、もっと日本の足跡というか、影響力が残っていると思っていたのですが、もう、完全に中国に上塗りされていて、プノンペンを含めて、町の至る所が、チャイニーズの影響下にある」p239
    「今回カンボジアに行ってみた感想ですけど、カンボジアといえば、ポル・ポト派による大虐殺、つまり「キリング・フィールド」みたいなものと、「ストリートチルドレン」という、貧しくて、悲惨な国で、発展途上国でというイメージを持っていたのですが、実際に訪れて、少なくとも首都のプノンペンとか、アンコールワットのある地方都市のシェムリアップを見ていると、日本の地方都市より発展しています」p242
    「安倍首相が中国に軟弱なのは、ビジネスマンから圧力を受けて、そう言ってくれ、中国とうまくやってくれということだと思います」p256
    「東南アジアというのは、商売、ビジネスとメディアに対しては、中国の影響力が圧倒的に強いんですよ。特にメディアなどはスポンサー企業の意向もあって軒並み親中派。華僑メディアは中共の資金が直接入って宣伝機関化していますね」p263
    「私は、華人・華僑の特徴に、チャンスに乗る、強いものになびく、多数派に加わるという性質があると思っています」p264
    「(中国人)「相手を平らげてはじめて、紛争のない世界ができる、というのが我々の考え方なのだ」それなら、どうしたらあなた方は共存を認めるのかと尋ねると「自分たちはかなわないと思わされるなら、日本と共存ができる。それ以外の道はない」と」p271
    「日本が大好きな中国人、「精日」を増やすということが、日本にとってもっともよい防衛なのです。それは確かに、評論家の石平(せきへい)先生みたいな人が1万人ぐらいいると、日本はかなり強くなりますね。個人的な感覚ですけれど、どちらが多いかというと、在日華人には、むしろ石平さんみたいな人の方が多いですよ」p278
    「全部、習近平が悪い。習近平イコール中国共産党だから。できるだけ、中国人が悪いというふうに言わないほうがいい」p282

全6件中 1 - 6件を表示

著者プロフィール

江崎道朗(えざき みちお)
評論家・情報史学研究家、麗澤大学客員教授。1962(昭和37)年東京都生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフを務めたのち、現職。安全保障、インテリジェンス、近現代史などに幅広い知見を有する。2019年第20回正論新風賞受賞。オンラインサロン「江崎塾」主宰。
著書に、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』(以上PHP新書)、『日本は誰と戦ったのか』(KKベストセラーズ、第1回アパ日本再興大賞受賞)、編訳書に『米国共産党調書』(育鵬社)など多数。

「2023年 『ルーズヴェルト政権の米国を蝕んだソ連のスパイ工作-ー「米国共産党調書」を読み解く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江崎道朗の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×