亡国のハントレス (ハーパーBOOKS)

  • ハーパーコリンズ・ジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (776ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784596013125

感想・レビュー・書評

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  • 子ども6人を殺した、ナチ親衛隊将校の愛人〈ザ・ハントレス〉。
    彼女の行方を追う、ナチハンターのイアンとトニー。

    一方アメリカでは、ジョーダンが、父親の再婚相手で、オーストリア人の未亡人・アンネリーゼに、ひっかかりを覚えて……。

    ボリュームはあるが、面白くて一気読み。

    戦場カメラマンになりたい、アメリカ人娘のジョーダン。
    〈ザ・ハントレス〉の魔の手から唯一生き延びた、ロシア人のニーナ。
    元従軍記者のイギリス人。イアン。

    3人を軸に進み、物語は次第に交差していく。

    過酷な戦場と、友情、愛情。
    消えることのない、ナチ犯罪者たちを捕まえるという信念。
    家族への思い。

    ぐっと引き込む力がある、ストーリーとキャラクターで、読み応えのある作品。

  • Kate Quinn – Author of Historical Fiction
    http://www.katequinnauthor.com/

    亡国のハントレス|ハーパーコリンズ・ジャパン
    https://www.harpercollins.co.jp/hc/books/detail/14002

    「戦場のアリス」積読中、、、

  •  今年の後半は、第一次・第二次世界大戦の時代に展開した作品を、いつになく多く読んだ気がしている。しかも現在を描くものより、むしろ戦争を描く作品に良作が多いようにも思う。P・ルメートル、S・ハンターと続き、このケイト・クインがダメ押しであった。

     ケイト・クインは、前作も『戦場のアリス』で印象的な世界大戦の裏話を繰り広げてくれたが、本書はそれを上回るスケールで描かれている。簡単に言うといわゆるナチ・ハンターものである。実在のナチ・ハンターに材を取り、そこから派生した作者造形による三人の主人公の三種の異なる時代の物語が、章毎に綴られる。一瞬、躊躇われるほど分厚い、重量級の国際ミステリー。大丈夫。作品は読者の努力にしっかり応えてくれるから。

     惜しむらくは、ベストミステリーの締切にぎりぎり過ぎて、宣伝広告的には不遇をかこってしまったのではないだろうか。ぼく自身、この作品に一票を投じることができなかった悔しさに後から歯噛みする想いなのだ。

     ハンターは狩人。しかし女性名詞のハントレスとなると、日本では少し馴染みが薄い。ましてや本書でのハントレスは、戦後現在にまで及ぶというナチ・ハンターの側ではなく、戦時中ポーランドで子どもたちを殺すという残忍な行為を行ったナチ側の女殺人者を指している。

     本書の主人公の一人である英国人ナチハンター・イアン・グレアムは、相棒のアントン・ロドモフスキーとともに、一般社会に紛れ込んでのうのうと生きているハントレスに弟を殺されたことから、彼女への復讐に執念を燃やしている。

     最初は、関係がわかりにくい三つの物語で、三人の主人公がそれぞれの異なる時代を生きてゆく。女流写真家としての独立を夢見るジョーダン・マクブライドは、父と再婚したアンネリーゼとの間にある種の緊張が生まれる中、ナチハンターと知らずイアンやアントンと出会い、そして義母との愛憎や緊張を高めてゆく。物語の主人くというより、最も謎めいた揺らぎを与える役割と言うべきだろうか。

     一方で、父の暴力から逃れ、夜間攻撃のパイロットとして成長したニーナ・ボリソヴナ・マルコワという少女の存在が、本書では何よりも際立つ。このキャラクターの個性的、かつワイルドで強靭な性質が、本書に強い緊張をもたらし、何よりもバイタリティを与えてくれる。

     三人の主人公たちの物語は、時代を異としつつ展開するのだが、最後には一つの時間に収束してゆく。異なる磁極が出くわすときにはじける火花の如きクライマックスは、激しい緊張と暴力を誘発する。本書自体は並々ならぬ大作でありながら、常に張りつめた緊張感によってページを繰る手が止まらない優れもののエンターテインメント小説であると言えよう。

     人物の配置、構成、マルチな関係が、徐々に一点に収束して、最後に溜め込んだエネルギーの爆発を喚起するラストに至る。そのストーリーテリングは、『戦場のアリス』のスケールをさらに上回る出色の作品と言えよう。

     キャラクターたちの個性はいずれも素晴らしいし、読後胸に残るのは、何といってもニーナの成長の物語だ。夜間女子飛行隊の面々、個性、英雄的女性パイロットの存在感などなど、やはりニーナの章に窺われるのが過酷な戦場世界の地獄絵図であるからこそ、そこを生き抜く彼女の生命力は本書最強の魅力である。この作品によって、作家は稀に見るヒロイン像を作り出したと思う。ニーナに逢うためだけでも十分に読むべき価値のある一作と言うべきであろう。

  • 歴史物はやっぱ面白いし、想像力豊かやなーって思う。

  • 第二次世界大戦中に存在した「ザ・ハントレス」を追う英国人イアン。父の再婚相手に不信感を持つ米国人ジョーダン。シベリアバイカル湖で育ったロシア人ニーナ。それぞれの視点で描かれる物語は絡み合い1人の女へと辿り着く。……最高に面白い→

    歴史ミステリー、というにはミステリー弱めやけど、私は読んで良かった!!もう、すごい。ニーナ最強。ジョーダンかっこいいし、イアンとトニーは言わずもがな。各章の引きが凄くて後半一気読み!!分厚さに尻込みせずに是非読んでほしい(750ページ以上あるので、腕は疲れる笑)

  • イアン、ニーナ、ジョーダン各章の構成が巧み。特にニーナが秀逸だが、ミステリ感が薄いのは否めない。

  • ジョーダン、ニーナ、アンネリーゼ。国籍も年代も異なる女性の1945年を挟んだ約750ページの物語。各章ごとに主要人物の名があるので読み易かったが、さすがにまじめな750ページを軽く読める筈はなく、途中何度か心折れた。が、やはり完読して良かったとつくづく思うし、その厚みに相応しい骨太の作品だった。

  • 第二次世界大戦でハントレスと呼ばれた殺人者を追う。戦闘機に乗る女性飛行士のニーナ、ハントレスに弟を殺害されたイアン、戦争から五年後にいるジョーダン。戦時から戦後へと時間を行き来しながらハントレスを追う物語。ニーナの戦闘機に乗る描写の迫力は読み応えがあるし、イアンのゲット立てる計画やジョーダンの恋や義母たちとの生活とどの人物を読んでも面白いしそのひとつひとつの根底にハントレスの不気味さが感じられる。700ページを超える物語だけれどどんどん引き込まれていって長さを感じさせない。とても好みで今年のベストになりそう。

  • ミステリーというより、伝えたかったことは、ナチ戦争犯罪人の調査のことと、ソ連の夜の魔女と呼ばれた女性パイロットたちの描写かな?

    登場人物の中ではニーナ目線が良かったけど、日本人の私には湖の畔で生まれ育つ野生児を想像するのが難かしい。


  • めちゃくちゃ良かった。

    ところで第二次大戦を舞台にした女性同性愛者の物語を2冊続けて読むことになったんだけど、偶然?今の流行?2冊とも想定していなかったからびっくりした。いい意味で。同性愛者の方は嬉しかったと思う。恋愛の一つとして、普通に描かれるのは素晴らしい。これまではなかったことにされてきたわけだから。

    視点がコロコロ変わる。そこがいい。

    ハントレスが誰かはすぐにわかる。隠しきれないものがある、という描写なのだろう。

    イアンたちがナチ戦犯を見つけると、みんな怯え、命令されただけ、知らなかった…と言う。本気なのだろう。そう自分で信じ込んでいるのだろう。
    イアンが言っている通り、戦争で起きたことは明確にしておかないと、また繰り返す。

    ニーナの恋人が生きていたのはびっくり。てっきりハントレスに殺されたのかと。それで復讐したかったのかと。

    ニーナが女性兵士たちに迎えられる場面、友情のシーン、すごく良かった。チーム。

    ニーナとイアンはそのうち離婚するだろうけれど、「同志」として友情が続くのか、くっついたり離れたりを繰り返すのか。ニーナは空を求めて、足を止めないだろう。ニーナについていけるのがイアンだったらいいな。

    ハントレスも時代に翻弄されたのだろうか。平和な時代だったら、彼女の残虐さは目覚めなかったのだろうか。彼女が残虐な殺戮を行ったのは、20代の頃。考えさせられる。

    アンネローゼは自分も被害者だと思ってる。十分に罰を受けていると思ってる。その罰の内容があまりに自分勝手で、こいつ本当にどうかしてる!て思った。
    でも、日本にもいる。昨日、ツイッターで、情報開示を求められた対象の人が、「裁判を起こされると心配で病みそうだからやめてくれ」とか「私が自殺したらどうするつもり?」とか言っているのを見たばかりだったので、ハントレスの論法が本気だと思った。本当に自分が被害者だと思ってる。こういう人たちにどう伝えれば、自分が加害者側だとわかってくれるのだろうか。共感性の問題なのか。

    アンネローゼが子育てできたことも怖い。身を守るためのカモフラージュのため、幼い子供を育て守ることは大変だったはず。ひょっとすると愛情があったのかもしれない。その母親を殺しておきながら。その辺りの矛盾も恐ろしい。

    一箇所、「心を割って話し合おう」と書かれていたシーンがあって、ん?て思った。

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