- Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620106670
感想・レビュー・書評
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なかなか面白かった。
●2023年3月1日、追記。
本作の内容は、次のとおり。
---引用開始
本格推理から学園ミステリー、パロディー小説や絵本など、さまざまな作風で読者を魅了しつづける著者が、本書でテーマに据えたのは、犯罪加害者の家族。犯罪が、被害者や加害者だけではなく、その家族にまで及ぼす悲しい現実を見据えた意欲作である。殺人犯の弟という運命を背負った高校生が成人し、やがて自分の家族を持つにいたるまでの軌跡を、大げさなトリックやサスペンスの要素を用いることなく、真正面から描ききっている。
武島直貴の兄・剛志は、弟を大学に入れてやりたいという一心から、盗みに入った屋敷で、思いもかけず人を殺めてしまう。判決は、懲役15年。それ以来、直貴のもとへ月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方で、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、剛志からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…。
---引用終了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東野圭吾の世界に踏み入れた最初の作品、先日のTVドラマを観て再度 読んでみたけど やっぱり書物に勝るものは無いと再認識しました。半ば過ぎまでは こんなに緩いカンジだったかなぁ?などと感じながら読み進みましたけど、いやいや終盤にかけての盛り上がりは そうそう こうだった!と蘇って来ました❗
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遠い親戚なら、知らんぷりで我関せずでもいられるのかも知れないが、実の兄が、自分の為に起こした、しかも殺人であるならば、それからの人生がどのようなものになるのかは、想像に難くない。
本人の心の中でさえ、嵐が吹き荒れているのに、周りの対応がまた、人生を生きづらくさせてゆく。殺人にどんな理由があろうと、殺人は殺人であり、近しくなればその理由も知る事が出来るだろうが、少し近しい程度では、その心中まで考える余裕もないし、考える必要も感じず、ただ距離をとって近づかないようにする事が、一番楽な方法なのかもしれない。
ただそれは、差別にほかならない。
差別のない世の中は美しいだろうか。差別のない世の中になる事は可能だろうか。自分が差別している事に気づかなければ、差別などなくならないのではないだろうか。きっと気付かずに差別している人がたくさんいるから、差別はなくならないのではないだろうか。
弟の為に殺人を犯した兄への気持ちが変化してゆくのはしょうがない。塀の中にいる兄には、弟の状況は想像するしか出来ないものであるから、弟が苦労しているかも知れないという事は想像できたとしても、その辛さを実際に知る事はできない。たった一人の肉親とのつながりは手紙しかない訳で、兄にとって手紙を書き続ける事が塀の中で十数年を過ごすためのモチベーションになっていたのかもしれない。弟がその手紙で苦しめられていることなど想像もせずに。
運が悪かっただけなのかもしれないが、運が悪かったというそれだけで、人は良いのに苦労ばかりしているような人はいる。どういう生き方が正しいのかなんてことは、死ぬ時になっても分からないのかもしれない。
兄が出所した後、この兄弟に何か変化は起きるのか、何も変わらないのか、どんな人生になってゆくのか、知りたい気がする。 -
とっても切ないお話だった。
兄弟の絆、きっても切れない血縁関係に翻弄させられる
そんな姿を思い浮かべては、涙がながれた。
本人がこんなにも頑張っていても、不条理にも夢が壊されていく。
こちらまで、苦しく、い居た堪れない思いでいながら 次へ次へとあっと 言う間に読了していた。
社会とはそうしたものなのだ。・・と色々考えさせられた一冊でもあった。
ただ、白石由美子さんの存在が唯一救いに思えた。 -
分かりやすいマンガのように、あからさまに直貴を差別する人はいない。
が、みな一様に、まるではれものに触るかのように直貴に気を遣う。
それが犯罪者の家族に対する差別と気づかずに。
電器店の社長がシビアな現実を直貴にガツンと言うことで、直貴を目覚めさせるシーンはハラハラしたが、なんだかシビれた。 -
犯罪を犯した事によって、自分はもちろん家族の人生も狂わされてしまう。
犯罪を犯された方の被害者、その家族の人生も狂ってしまう。
加害者の弟が、幸せになりかけるが諦めなければならない場面が続き、苦しくなる。
そんな中でも差別なく関わりをもつ、寺尾と由美子の存在はかけがえのないものだ。
彼等の人柄に、強く惹かれた。
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すごすぎて圧倒される!
兄、弟共に必死に生きてるが世間的に受け入れなくて、、かといって自分も近くに犯罪者がいたらぎょっとするし。差別しんとこと気を遣いすぎるのも逆差別みたいなのも納得した。 -
映画を先に見てしまい弟が漫才師になってる話で結構お気楽な話になってしまっていたので読む気が起こらず積読にしていたが、今度TVドラマ化されるのを知って読んでみることにした。すると映画とは大違いで兄の罪を背負いあらゆる罪過に苦しめられる弟の姿が描かれており、重罪犯罪は起こした本人だけの罪だけでは済まないことを提起した小説であった。やっぱり殺人罪は死刑にしてあげないと被害者家族、加害者家族とも救われず、犯人が刑期を終えて出所したところで社会的制裁は一生続くものであり、死刑廃止論者は偽善に過ぎないのだと感じた。
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弟の学費を稼ぐために強盗を働き、結果殺人まで犯してしまった兄。そんな服役中の兄を持つがために、周りから色眼鏡で見られることが続いている弟。
犯罪者家族と、それを取り巻く残酷な運命の物語。
何とも言えない話でした。
実際に、こういうことは起こっているだろうと思います。弟の立場になれば、気の毒だと思うし、同情もしますが、公園ママたちの立場になれば、自分の子ともを守るために、同じことをしてしまうだろうなとも思うし。
兄から弟への手紙に、のんびり服役しているかのような、そんな姿を想像してしまい、ずっと違和感を感じていましたが、被害者遺族への手紙のところで、それだけではなかったという事実が分かり、始めて納得しました。
加害者と、その家族を、決して美化しないストーリーが、リアルでしっくりきます。
弟の兄への複雑な気持ちや愛情、兄の弟への贖罪の情が、最後のシーンで痛いほど伝わり、グッときました。
感動とは違いますが、心に残る本でした。 -
東野圭吾ばかりが何故売れる?
娘の大学の学園祭でミステリ研の機関誌を買ったら、オマケに古本を一冊どうぞということで、これをもらった。読んでなお謎は深まる。