女信長

著者 :
  • 毎日新聞出版
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感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (501ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620107028

感想・レビュー・書評

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  • あの織田信長が実は女だった!という発想が大胆だけど面白い、かつ信長ならあってもおかしくないから面白く始まった。要所要所で、実は信長が本当に女だったから上手く事が進んだのか!とすら思ってしまう。
    ただ、この独特な文体(話された言葉なのか独白なのかわからない鍵カッコの使い方とか)、女は所詮そんな物だ的な発言の多さ、同じような内容の繰り返し(信長の苛々)など、受け入れにくい部分が多かったのも事実。
    そして、信長の日記か?と思えるくらい長い!実際には普通の量なのかもしれないけど、途中から支離滅裂になる信長に付き合っていられず飽きて来る。
    信長を主人公として書かれたというよりは、明智光秀を持ち上げる本と言ってもいいと思う。

  • 歴史小説の面白さは、「こんなことが実際にあったんだ」「こんな人が生きてたんだ」と、フィクションでありながら一応は史実や資料を踏まえたものとして、そんな実感を得ることができるところにあります。
    今ここにいる自分と、時間や地面が繋がっている出来事として感動したり。

    そしてそこに、大胆な仮説、というスパイスが加わるとがぜんエキサイティングになっていく。
    たとえば、「織田信長は女だった」というような。

    旧弊を打破し、新たな時代を築こうとした、織田信長という人物自体がエキサイティングであることは確か。
    その常識破りなところ、合理的なところ、時に、ヒステリックなところを、「実は女だった」とすることで妙に説得力があったりする。
    設定の勝利とも言える、面白い小説。

    女ゆえの賢さと女ゆえの愚かさで、自分を信じ、ときに疑い、天下布武に向けてまい進するお長(信長)。
    物語と読者をぐいぐいとひっぱっていきます。
    信長が女である、としたことで、周りの武将達との関係もまた違って見えてきます。
    斎藤道三、浅井長政、そして明智光秀。
    お長の女心が揺れ動くさまは恋愛ものとしても読めなくもない。
    相手が女と知らずに信長に嫁いできたお濃の方との友情。
    浅井長政をめぐる妹お市とのライバル関係。
    そして、御長と光秀の関係における「本能寺の変」の意味。
    結構、見所(読みどころ)満載です。

    普段歴史小説を読まない人も読めそうだし、
    歴史好きな人も型破りな解釈に楽しんで読めそうです。

  • 織田信長に対して今まで自分が抱いていたイメージ(歴史に詳しいわけではないけれど)=====南蛮が好きで、残虐で、繊細なんだれどもとても男性的

    そのイメージが覆ってしまう内容でした。

    天下統一を図ったのも、諸々の新しいことに取り組んだことも
    全ては「女」であるが故。

    しかも、信長が「女」であることを武器として柴田勝家と関係を持ったり、
    浅井長政に激しく恋をしたりもする。

    そして何よりも、明智光秀が信長=御長(作中では女の姿に戻っているときは御長と名乗っている)の恋人であり、一番の理解者であり、
    御長の「女性」としての求めにこたえるが故に本能寺の変がおこったという展開に引き込まれた。

    終盤、信長が「女」であると気付いた木下藤吉郎に凌辱されそうになる場面に御濃があらわれて危機一髪のところで御長を救うところなど、
    この作品では二人は「夫婦」ではなく、10代の頃からの「よき友」として
    描かれている。

    ただ、「男」はこう、「女」だからこう、というところが余りに多くて気になる。

  • 佐藤さんの良作、駄作の判断基準は、主人公が独白に走らずに物語が展開するか否かであるようと思う、個人的に。
    本作はページ数が多い割に主人公と登場人物の絡みが多くなく、主人公が独白に走ってしまっている。故に佐藤作品のなかでは微妙な位置づけかな。
    信長を「女」として描くファンタジー性もなんだかね。宇月原清明の『信長あるいは戴冠せらるアンドロギュヌス』における「両性具有者」としての信長の方がインパクトがある。

  • 織田信長があんなにも破天荒で、古いものを壊し新しい世界を想像できたのは実は彼が「女性」だったからだった。
    男の世界では、権力闘争のための戦そのものが目的化されていたため、女性が求める平和な天下統一の実現はできるはずもなかった。
    女信長は過去の歴史に捕われない発想、南蛮式の最新技術を取り入れる柔軟性と天命ともいえる運の強さによって、権力の頂点へと突き進む。最後には天皇に譲位を突きつけ、正面対決を図ろうと本能寺で腹心明智光秀の動きを待つ。一方、明智光秀は信長の天下統一を信じ支えつつも、秀吉が毛利義昭と結んで謀反を起こそうとしている最中に天皇譲位の実現は不可能と判断。自らが逆賊となることで、信長の地位を傷つけることなく2人が歴史の舞台から消えるという最期の戦いを完璧に実行する。
    信長が女性だったというスキャンダル性よりも、明智光秀は裏切り者ではなく、信長の一番の理解者であり、公けには南蛮流の最新戦術とすべてを見透す明晰な頭脳で、プライベートではすべてを許し受け止める大きな愛をもって信長に尽くしたという視点が新鮮。

  • 信長が実は女性、ということで歴史的な信長の行動が裏付けられていくのは痛快で読み物として楽しく読めました。もし男性だったら面白くないかもしれないのです。

  • 12/13/09図書館
    読み終わらないまま返却

  • 男だ女だ、というのがちょっとしつこかった。しかも終わり方それ?
    でも逐一発想は面白かった本。

  • 信長は実は女だった
    彼の偉業は男による既成概念に捕らわれない女目線の発想によるものだった、というお話。

    読みやすい文章で一気にさくっと読めました。
    ただ読了後の充実感は分厚さに比べてやや薄め。
    同じ信長を扱った一冊なら宇津木原さんの『信長――戴冠せるアンドロギュヌス』方が好き。
    信長というカリスマの疾走感と言い換えておきましょうか。
    この方の書く本は面白いのに、いつも広がりが薄いなと感じてしまうのが残念です。

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著者プロフィール

佐藤賢一
1968年山形県鶴岡市生まれ。93年「ジャガーになった男」で第6回小説すばる新人賞を受賞。98年東北大学大学院文学研究科を満期単位取得し、作家業に専念。99年『王妃の離婚』(集英社)で第121回直木賞を、14年『小説フランス革命』(集英社/全12巻)で第68回毎日出版文化賞特別賞を、2020年『ナポレオン』(集英社/全3巻)で第24回司馬遼太郎賞を受賞。他の著書に『カエサルを撃て』『剣闘士スパルタクス』『ハンニバル戦争』のローマ三部作、モハメド・アリの生涯を描いた『ファイト』(以上、中央公論新社)、『傭兵ピエール』『カルチェ・ラタン』(集英社)、『二人のガスコン』『ジャンヌ・ダルクまたはロメ』『黒王妃』(講談社)、『黒い悪魔』『褐色の文豪』『象牙色の賢者』『ラ・ミッション』(文藝春秋)、『カポネ』『ペリー』(角川書店)、『女信長』(新潮社)、『かの名はポンパドール』(世界文化社)などがある。

「2023年 『チャンバラ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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