- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620107431
作品紹介・あらすじ
なんにもなかった。だけどなんだか楽しかった。懐かしい時間。愛しい人々。吉田修一が描く、風薫る80年代青春群像。
感想・レビュー・書評
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上京して大学生活を送る世之介の1年の物語。
あの頃、バブルで、「サラダ記念日」がヒットして、映画は「ハチ公物語」に「トップガン」、パソコンや携帯電話はまだ普及してない頃でテレホンカードとか使ってたなって・・
そうそう学生時代そんな奴いたよねって回想するなかに世之介がでてくる。当たり障りのないサブキャラなだけに憎めない存在、ある人にとっては名前ぐらいしか思いだせなかったり全然記憶になかったり、
サンバサークルに成行きで入ってしまった時の仲間の倉持と阿久津唯←’この人だけいつもフルネーム)
サークルの先輩にバイト紹介してもらったり
クーラーのある加藤の部屋に入浸ったたり
車校に行ったり、
知りあったお嬢様の祥子と仲良くなったり
年上の謎の女千春に興味を持ったり
高校時代の元カノのさくら
勉学にサークル、バイトに恋愛と学生時代はイベント多くて多感な10代は長く感じるのだけど大人になってみて振り返ったら一瞬の出来事だったとか
世之介を回想するシーンが数箇所か挟まれていて、ノスタルジーが増すなかフラグがたったりして、それがより切なさを呼びました。
鉄道事故のこと知っちゃってからは読み進めるのが辛くなってしまったりでした。恋人だった祥子でさえ、初めて世之介が写した写真、最初に見せて欲しいってお願いしたの自分なのに20年も経つとそんな約束したことも忘れちゃってるし、写真見てもどこで撮ったのかわからない感じだし、そんなもんなんですよね。
世之介、馬鹿正直で、成行き任せでなんも考えてなさそうだし、目先のことに振り回されて、所々真剣に考えたり、脱力したり、何だかんだで主人公なだけに気になってたのに。
続編も借りちゃったんだけど、世之介のこと知れば知るほど愛着湧いてきて結末が解ってるだけに先が読みたいって思いになれなくって悩んでしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「永遠と横道世之介」を読む前にもう一度振り返ってみようと思い再読した。
2009年に読んでから年数は経っているから細かなところは忘れていた。
だが、一気に世之介の世界観に浸る。
長崎から東京へ出てきて大学生活が始まり、サンバサークルの倉持と阿久津との出会いや加藤のアパートに入り浸っていた頃。
バイトに明け暮れていた頃でもある。
自動車教習所で知り合った祥子と夏休みには実家で過ごしたり…と。
確かに出会いとともにいろんなものが増えていく…という感じでアパートの隣人の京子が言うように一年経つとあの頃より隙がなくなった。
ドンピシャな表現である。
飄々とこなしている世之介は妙に人を惹きつけるところがあるのかもしれない。
ますます興味がわく人物である。
ラストには、世之介の母が祥子へ宛てた手紙で終わってたことに驚く。
これはまったく覚えてなかった。
文中で時おり、「新宿アルタ前」とか「ねるとん」とか「サラダ記念日」と書いてあると一瞬にして当時のことが浮かんでくる…懐かしい
さらに続編へ… -
続編の続編が出たということで
一から再読することにしました(^^)
今回は単行本にしました
こんな表紙だったのか
久々の横道世之介ですが
やっぱり好きだなあ
まずは口調がいい。
世之介を読んでる間は
自分や子供の行動を
頭の中で世之介のナレーションの口調に
変換してる自分がいて笑えます
(ここのいるのはもちろん世之介である。みたいに)
そしてテンポもいい
読むほどに空気感が好きになる気がします(^^)
世之介はどこにでもいるような学生で
どこか抜けてて
隙だらけで頼りないイメージだけど
ふとした瞬間に
おお!と思うようなことを
気づかずにやってるところが素敵
倉持も、加藤も、
世之介に会わなくても
人生変わらなかったかもしれないけど
会ったことで少し救われた気がします
そしてやっぱり祥子さん最高だよなー笑-
特に原作が気に入って好きな時、裏切られるのが怖くて観れないのです。
今まで何度かそんな目に合ってきたから・・・。
世之介を高良健吾さんが...特に原作が気に入って好きな時、裏切られるのが怖くて観れないのです。
今まで何度かそんな目に合ってきたから・・・。
世之介を高良健吾さんが吉高由里子さんが祥子役で申し分のない配役、とても興味ありながら今まで我慢してました。
世之介に会いたくなったら、ちゃたさんに背中押されて観てみようかな。
どんぐりさんのように、再読も良いですね。
2023/06/24 -
しずくさん
映画版、面白かったです。
高良さん、吉高さん、最高のキ
ャスティングでした。
役者さんの再現力ってすごいなと思いました。
おす...しずくさん
映画版、面白かったです。
高良さん、吉高さん、最高のキ
ャスティングでした。
役者さんの再現力ってすごいなと思いました。
おすすめさせていただきますね。
2023/06/24 -
しずくさん
世之介にふと会いたくなるタイミングありますよね、なんかわかります!
私も期待を裏切られるのが怖いタイプで
好きな作品ほど見...しずくさん
世之介にふと会いたくなるタイミングありますよね、なんかわかります!
私も期待を裏切られるのが怖いタイプで
好きな作品ほど見れないです(>_<)
ちゃたさん
役者さんって本当に凄いですよね!
高良健吾さんと吉高由里子さん!
イメージと違うけど
見たらイメージ通りなんでしょうね(^^)
2023/06/24
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吉田修一と言えば「横道世之介」のイメージが強く、そろそろ読んでみるかと思って、手に取った。
なんてことはない、すごく一般的な大学生の生活が1年間まとめられているという具合であった。地方から東京の大学に進学し、都会という環境の中、親元を離れて暮らす大学生が、1年後、少しだけ成長している。それを側から傍観しているような感覚である。途中、
主人公・横道世之介と関わった友人たちが、当時の世之介をふと思い出すという設定となっており、そこから今はもう世之介はいないということがわかる。
まあ、世之介がとってかっこよく、頭が良く、なんてこともなく、普通のよくいる学生の設定で、授業もさぼりがちで、友達も適当にいて、特段仲の良かった友人以外にはあまりインパクトはないような設定であるから、「ある、ある」感覚で読めたのだろう。
そんな世間一般的な大学生の生活を垣間見て、作者は『あぁ、同じだ』とか『懐かしいなぁ』とか、『こんな人いたなぁ』と思うのかをどのように感じるかは読者に委ねているようである。
私の場合は、「ある、ある」感覚で心にすんなりと入ってきた。
1カ月毎に大学生活に慣れていく世之介。1年があっという間に過ぎていく。舞台は東京。地方から出てきて、一人暮らしを始めた世之介にとって、大学生活で得る経験は豊かなものだ。友人たち、サンバサークル、ホテルのアルバイト、初めての彼女、運転免許の取得、同性愛者との遭遇(これは普通でないかも)などなど。日々を駆け抜け、成長していく様を自分の大学時代と重ねてしまう。
まだ、18から20そこそこの子供から大人の世界に足を踏み入れようとする人間が、未来に希望を持って邁進していく姿を想像する。が、これは私の空想だけで、主人公やその友人たちが取り立てて何かを目標に突き進んでいる姿が描かれているわけでもない。
ただ、自分の若かりし頃と重ねて、結局、若い時の自分も時間に流され、大人から言われることに時に反発し、時に従い、世之介と同じような感覚で毎日を過ごしていたことを懐かしく思う。
もちろん、『もっとこうしていればよかった』、『あの時、なぜこうしなかってのか?』という後悔も数多く、それすら懐かしく思う。
子供ができて、中退した倉持と阿久津唯。同じ研究室になった同級生同士が子供ができて退学したことを思い出した。近くに住んでいたので、同級生と彼らの新居に行った。ちゃんと家庭を築いていたことに感心した記憶がある。
世之介と付き合っていた祥子。世間離れしていた祥子が20年後、UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)で働いている。大学時代のバイト先の友達が、国連で働いている。友達は、男性であるが、そんなふうには見えなくて、衝撃的だったことを覚えている。
だから、世之介を取り巻く人間関係も特にびっくりするような環境でもない。
1年間なんて、人生の本当に短い期間である。でも、人はこの1年を通して、経験し、成長していくのだなぁと、この本を読んで振り返ることができる。本書の中でも「この一年で成長したか?と問われれば『いえ、それほどでも…』と肩を竦めるだろうが」とあるように、この1年での成長は、小さくても、15年後、20年後に人は確かに成長していると感じるのだ。
その時に出会った人たちは、将来、その人生の中で忘れ去る存在になるかもしれないが、それでもその時に何らかの影響を与え、人生の成長の糧になるのだろう。
そんなことを改めて感じる作品であった。
「世之介と出会った人生と出会わなかった人生で何かが変わるだろうかと、ふと思う。たぶん何も変わらない。ただ青春時代に世之介と出会わなかった人がこの世の中には大勢いるのかと思うと、なぜかとても得をした気持ちになってくる(本文より)」誰かにこんな風に思われたいものだ。
映画では次回NHK大河ドラマで主役の高良健吾が演じたようで、いつか映画を見てみよう… -
(2014年2月3日に記)
今まで吉田修一が追求して書いてきた主人公とタイプがまるっきり違っていて、彼の新境地を見る思いでした。
主人公・世之介の元恋人だった祥子は40歳になり、世之介を「いろんなことに、『YES』って言ってるような人」「いっぱい失敗するんだけど、それでも『NO』じゃなくて、『YES』って言ってるような人」と評しています。世之介は一見ふら付いていてどこにでもいるような気の良い若者なのだが、困っている人を積極的に助けようと馳せ参じる分けでもなく結果的にはほおって置けずに助けちまったとなるような人でした。そういえば「世之介を知らない人はもったいない」に近いことを言った友人も居ましたねぇ~。そう、是非会ってみたい世之介、もしかすると周囲に居そうなどこかで会っているかもしれないと思いたくなるような世之介なのです!
カメラマンとなった世之介が、いずれ韓国人と2人で線路に転落した女性を助けようとして亡くなるとほのめかされている件が、何箇所か出てくるたびに、えっそんな結末は止してと願ったのですが、祥子に宛てた世之介の母の手紙を読んですとんと落ちるものがありました。
「世之介は充分間に合うと思ったから助けたのでしょう。そんな息子を誇らしく思います」と、さりげなく結ばれた手紙にうるうる来ました。自らの危険を顧みないで人を助ける現実に存在する人たちはきっとこんな感じなのでしょう。切ないラストはカモフラージュされていて人を信じれる温かさと世之介が残した爽やかさが伝わって来ます。
祥子は深窓のご令嬢育ちというユニークな背景。何故か途中で世之介と別れる設定になっていますが、彼女が子育て中の友人に会って助言した言葉が確かな人柄を表していると感じられました。「大切に育てるということは『大切なもの』を与えてやるのではなく、その『大切なもの』を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることなのではないかと思う」。そうだよねぇ~。
2人が長崎の海岸で遭遇する難民の事件は実際にあったことです。
デビュー当時のカタカナタイトルの「パレード」「パーク・ライフ」から読み続け、最近では「長崎乱楽坂」「悪人」「さよなら渓谷」などずっとずっと好きになってきています。
吉田さん、長崎出身の清しい世之介を送り出してくれてありがとう!
映画化されていてDVDも出ている・・・。すぐ観るのかそれともしばらくは浸ってからにするのか躊躇っています-
吉田修一、好きで「ほとんど病気吉田病」
ほとんど全部読んでます。
世之介だけは全く感じが違います。素敵です。
続は読まれましたか?吉田修一、好きで「ほとんど病気吉田病」
ほとんど全部読んでます。
世之介だけは全く感じが違います。素敵です。
続は読まれましたか?2020/02/18 -
トミーさん、コメンントをありがとうございました!
続は勿論読みましたよ。どちらかといえば、続よりも、こちらの方が好きでした。
国宝も変わ...トミーさん、コメンントをありがとうございました!
続は勿論読みましたよ。どちらかといえば、続よりも、こちらの方が好きでした。
国宝も変わり種っぽいですよね。2020/02/19
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色々な方のレビューを読んで、市民図書館に単行本があったので借りてみた。
あ~懐かしきバブル期。
おそらく私と世之介は、ほぼ同学年。
私自身は地味な学生だったので、世之介のようにバイトなどでバブルを実感したことはなかったが、通学経路にボディコンやジュリ扇を売っている店があったのを覚えている。
浮かれた世の中の流れに上手く乗っかりながらも、自分を変えずマイペースで「いい感じ」なままのところが世之介の魅力。
そんな世之介が、どこに接点が?というようなお嬢様の祥子と付き合うようになるのだが、彼女もまた天然な強引さが面白い。夏休みに世之介の実家である長崎の港町へ押しかけ、そこで出くわしたの事件が祥子を大きく変えることとなる。
後年40代になった祥子が、学生時代の友人で娘を持つ睦美に対して抱く思いが綴られた箇所にぐっと来た。
↓
大切に育てるということは「大切なもの」を与えてやるのではなく、その「大切なもの」を失った時にどうやってそれを乗り越えるか、その強さを教えてやることなのではないかと思う。p364祥子の言葉
母親として、自分がまだ学べていない…。
子どもの友人に、世之介に似た子がいるのだが、その「いい感じ」変わらないでほしいなぁ…と思う。
2020.9.5 -
世之介君という大学1年生の日常。多分舞台は1980年代。派手な子じゃないから、登場する友人の数は多くないけど、一人一人と大事に付き合ってるのがよく分かる。世之介の視点を借りて、大学生のラフな日常を追体験してるようで、すっごく面白かった。
突然、一瞬だけ、話が未来に飛ぶことがあるんだけど、世之介の未来に不穏な影がよぎって、すごくドキドキしてる。
続編読まなきゃ。 -
どこにでもいるような大学生「横道世之介」くん。
大学入学とともに上京してきてからの1年間が書かれている。
とくにこれといった出来事もなく、何気ない日常が書かれているのだけど、ほのぼのとしていて、まだまだ続きが読みたいな~と思った。
世之介くん、少し鈍感で、でも優しくて。何年か経っても友達から思い出してもらえるってことは それだけ世之介くんには魅力があったのだろう。
出てくる人たちも個性的で なかでも祥子ちゃんよかった。
子供を大切に育てることは「大切なもの」を与えるのではなく、その「大切なもの」を失ったときにどうやってそれを乗り越えるか、その強さをおしえてやること・・祥子ちゃんの生き方、考え方素敵だな・・ -
バブル期に大学生として上京してきた横道世之介の一年間。と世之介の周りの人達の20数年後。
真面目なんだか抜けてるんだかフワフワしてるのに一途でおもいやりがある。こんな友達が欲しいなと思わされる。
まさかな展開に「えっ!」て声が出てしまった。
祥子の変貌振りが1番びっくりだった。