- Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620108070
感想・レビュー・書評
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2020.08.05.読了
何かが起こりそうで起こらない作品(笑)
でも何故か惹かれてしまって先が読みたくなる。
この作品はおもしろかった。よかった。と言えるほどではないにしても星をつけるとなると3.75くらいいってしまう。
疎開先で何が起こったのか?本当のところはどうだったのか?風美子の本心は?
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2020.07.30読了。
今年5冊目。 -
もしかしたら、誰でもが持ってる話。
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敗戦からの復興、高度成長期真っ只中の日本。
めまぐるしく変わっていく激動の時代を生きた二人の女性の話。
時代の変化に対応できず、
疎開先でのつらく寂しい記憶にいつまでも心を囚われ、いろんなことを他人のせいにして自分の人生をうまく歩けない左織。
自分の力で運命を切り開く風美子。
疎開先で一緒だった二人の対照的な人生。
それが左織の目線のみで語られている。
二人は大人になり、銀座で偶然再会する。
疎開先でいじめられていた自分に、とてもやさしくしてくれた恩を忘れないという風美子のことを、左織はまったく思い出せない。思い出せないどころか、疎開先で風美子を執拗に虐めていたのは自分ではないか。その復讐のため、自分の人生すべてを奪おうとしているのではないかと勘繰る。
勘繰り続けて約40年。
そんな気持ちと常に隣り合わせの人生なんて、わたしには耐えられない。
感想はうまく書けないが、とにかく大作。
文章がとても滑らかで、テンポがよく、やさしいので、読みやすかった。ひとつの人生を終えたような気持ちにもなった。自分自身の人生の行く先が気になって、背伸びをして前を見たりしてみた。
笹の舟で海を渡ることは多分できないだろう。
それでもそれしかないのであれば、わたしたちは乗るしかないのだ。
人生という海はゴールも見当たらないまま、日々常に変化し続ける。
この世に生まれてきたわたしたちは怯えながら、ときに笑いながら、怒りながら、泣きながら、戦いながら、身を任せるしかない。
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震災でふーちゃんに電話をかけたシーンが良かった。羨望と嫉妬と、人生を切り開いていく彼女へのおそれと自分の情けなさなど、ありあまる感情を投げ出しても、心配に思っている気持ちを伝えられたことが、主人公の考え方を変えるきっかけになったんじゃないかな。うまくいっているようで、掛け違えたボタンは直せないまま、誰もそばにいないと感じる寄る辺なさが心に刺さる。
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長いので半ば淡々とつまらなく感じたところもあったけど、この世代の昭和に生きた多くの主婦は、嫉妬・羨望・敗北感が他人や自分の子供に対しても強く、自意識過剰で他人からみっともないと思われることを怖がり、かといってコレがしたいという強い意思もなく何でも人のせい。フミコみたいに強くない普通の女性はそうならざるを得ない時代だったのかもね。
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ふみこに惑わされた?
小さい頃に一時そのときに身を任せて生き抜いた少女が世の変わりようを消化できないままおおきくなっていったようなことなんだろうか。
なぜこんなにも自信がなく
比較でしか評価できないひととなったのか
母親と娘の関係の、解消はされないまま
女性特有の思考回路なんだろうか?
読了感は疲労と薄グレーの靄がかかった感じである
最終的に左織は新しいカラへ静かにこもったようにみえる
過去と未来を切り離されて -
冴えない主婦の、ささやかな幸せさえも常に横取りされるのではないかと懐疑する心。そして実際に指の間から抜け落ちるように、その僅かな幸せの要素一個一個が去っていく様。それは疎開という異様な原体験のせいなのか。忘れられないいじめが発端なのか。風美子という強い女性の存在感のせいなのか。
私には、この本の根底には、疎開先だろうが戦後だろうが、時代を超えて存在する「女子」特有の心情の駆け引きが全編を通して蔦のように絡まっており、主人公がその蔦に絡まって身動きとれなくなっていくようで、読んでいて疲れ果てた。一度読み出した本を放棄したくないから読み続けたが、もうこれ以上読みたくない、あと何ページで終わってくれるのと終始思わせる本だった。女子の心情といえば「細雪」もそうだが、谷崎目線で美化された女子の心の機微とは打って変わって、女性作家の描く女性のしつこさの何と疲れることか。同じ女子を経験したからこその、この疲れ、この嫌な感じ。
この人の魂胆は…実は陰では…と思っては打ち消しする沙織。人を疑う自分を嫌だと思いながら、うまくいかない原因を探りたい。それに対して夫温彦の無関心さは、いわゆる「男性的」、本気で気にしていない態度そのもの。家庭がうまくいかないのはこういう無害に見えて自分中心の男のせいもあるのではないかと、彼の煮え切らない傍観ぶりに腹がたつが、逆に男性がこの本を読んだら「ハテナ」の連続だろうなあ。