笹の舟で海をわたる

著者 :
  • 毎日新聞社
3.52
  • (62)
  • (192)
  • (207)
  • (43)
  • (4)
本棚登録 : 1400
感想 : 211
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (408ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108070

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2020.08.05.読了

    何かが起こりそうで起こらない作品(笑)
    でも何故か惹かれてしまって先が読みたくなる。
    この作品はおもしろかった。よかった。と言えるほどではないにしても星をつけるとなると3.75くらいいってしまう。
    疎開先で何が起こったのか?本当のところはどうだったのか?風美子の本心は?

  • 2020.07.30読了。
    今年5冊目。

  • もしかしたら、誰でもが持ってる話。

  • 敗戦からの復興、高度成長期真っ只中の日本。
    めまぐるしく変わっていく激動の時代を生きた二人の女性の話。

    時代の変化に対応できず、
    疎開先でのつらく寂しい記憶にいつまでも心を囚われ、いろんなことを他人のせいにして自分の人生をうまく歩けない左織。
    自分の力で運命を切り開く風美子。
    疎開先で一緒だった二人の対照的な人生。
    それが左織の目線のみで語られている。

    二人は大人になり、銀座で偶然再会する。
    疎開先でいじめられていた自分に、とてもやさしくしてくれた恩を忘れないという風美子のことを、左織はまったく思い出せない。思い出せないどころか、疎開先で風美子を執拗に虐めていたのは自分ではないか。その復讐のため、自分の人生すべてを奪おうとしているのではないかと勘繰る。
    勘繰り続けて約40年。
    そんな気持ちと常に隣り合わせの人生なんて、わたしには耐えられない。

    感想はうまく書けないが、とにかく大作。
    文章がとても滑らかで、テンポがよく、やさしいので、読みやすかった。ひとつの人生を終えたような気持ちにもなった。自分自身の人生の行く先が気になって、背伸びをして前を見たりしてみた。

    笹の舟で海を渡ることは多分できないだろう。
    それでもそれしかないのであれば、わたしたちは乗るしかないのだ。
    人生という海はゴールも見当たらないまま、日々常に変化し続ける。
    この世に生まれてきたわたしたちは怯えながら、ときに笑いながら、怒りながら、泣きながら、戦いながら、身を任せるしかない。

  • 昭和の激動を生きた凡庸な女性・佐織と友人・風美子の物語。「感動大作」と銘打たれていたから読んだのですが…恐らく私には佐織と自分が重なるようなバックグラウンドが少ないからか、感動する場面がどこなのか分からないまま読了。最初1/4くらいで本当にやめようかと思った…けど読み終わった。えらい。

    うーんと、一言で感想を述べると、ありのままの~、ってエルサが声高らかに歌い上げてたことを、60年余りかけて気づいたってっていうお話。どなたかが先に書かれていた『更年期障害の女性の話を延々聞かされた感じ』がものすごくしっくりくる。

    佐織がとにかく暗い!!基本的に佐織の20歳過ぎから60歳過ぎまでを(戦時中の幼少期の回想を差しはさみながら)描いた作品なのだけど、本人の人となりも明るくないし、葬儀のシーンが多いので、物語全体が陰鬱な雰囲気を纏っている。何でこんな1冊まるごとジメジメできるのか、ほんとすごいなと感服しきり。

    ただ、佐織のような思考パターンや物事の受け止め方、感情の振れ方をする女性、ものすごくたくさんいるんですよ。私自身も佐織に対してイライラしたり、いやいやいや無理無理って思うんですけど、それでも身近にいる祖母や母や、あるいは友人や同僚のことを考えてみると、やっぱり多かれ少なかれ佐織のような部分ってあるなとも感じます。(それが他者にとって分かりやすく発露しているか否かはってことはまた別の問題だけど…)
    おそらく女性には大なり小なり彼女に近しい部分があって、場合によってはそれすら無自覚なまま同族嫌悪を表明してるケースもあるんですよね。“自称”サバサバ系のように。「誰の心にも佐織はいる」と言っても過言ではないのでは(本当?)と思うと、結構なホラー作品だなぁと思います。そういう女性の根っこみたいなところの描き方は上手いんだろうなと思いました。

    結局自分の人生をどう生きるかなんて気の持ちようだし、他人を自分の思うように動かすことはできないのだから、という結論で、私はちゃんとそれを60歳になる前に自覚出来ていてよかった。

    400ページ超なのに何も大きな事件は起こらないし、そういう意味でもホラーかな?という結論です。
    自分の祖父母やその周りの人々を見ても、あの時代を生きた日本人も様々だと思うし、一様に感動できるのか甚だ謎ではある。できるならその世代であるうちの祖母に読んでもらって感想聞きたいが、読まないだろうなぁ…

    --

    終戦から10年、主人公・左織(さおり)は22歳の時、銀座で女に声をかけられる。
    風美子(ふみこ)と名乗る女は、左織と疎開先が一緒だったという。
    風美子は、あの時皆でいじめた女の子?「仕返し」のために現れたのか。

    欲しいものは何でも手に入れるという風美子はやがて左織の「家族」となり、
    その存在が左織の日常をおびやかし始める。
    うしろめたい記憶に縛られたまま手に入れた「幸福な人生」の結末は――。

    激動の戦後を生き抜いた女たちの〈人生の真実〉に迫る角田文学の最新長編。
    あの時代を生きたすべての日本人に贈る感動大作!

  • 震災でふーちゃんに電話をかけたシーンが良かった。羨望と嫉妬と、人生を切り開いていく彼女へのおそれと自分の情けなさなど、ありあまる感情を投げ出しても、心配に思っている気持ちを伝えられたことが、主人公の考え方を変えるきっかけになったんじゃないかな。うまくいっているようで、掛け違えたボタンは直せないまま、誰もそばにいないと感じる寄る辺なさが心に刺さる。

  • 長いので半ば淡々とつまらなく感じたところもあったけど、この世代の昭和に生きた多くの主婦は、嫉妬・羨望・敗北感が他人や自分の子供に対しても強く、自意識過剰で他人からみっともないと思われることを怖がり、かといってコレがしたいという強い意思もなく何でも人のせい。フミコみたいに強くない普通の女性はそうならざるを得ない時代だったのかもね。

  • ふみこに惑わされた?
    小さい頃に一時そのときに身を任せて生き抜いた少女が世の変わりようを消化できないままおおきくなっていったようなことなんだろうか。
    なぜこんなにも自信がなく
    比較でしか評価できないひととなったのか

    母親と娘の関係の、解消はされないまま

    女性特有の思考回路なんだろうか?
    読了感は疲労と薄グレーの靄がかかった感じである

    最終的に左織は新しいカラへ静かにこもったようにみえる
    過去と未来を切り離されて

  • 生々しく感じた。ずっと主役の左織の心の中。時代背景があり、感情移入しやすかったからか。読後感は少し重ため

  • 冴えない主婦の、ささやかな幸せさえも常に横取りされるのではないかと懐疑する心。そして実際に指の間から抜け落ちるように、その僅かな幸せの要素一個一個が去っていく様。それは疎開という異様な原体験のせいなのか。忘れられないいじめが発端なのか。風美子という強い女性の存在感のせいなのか。

    私には、この本の根底には、疎開先だろうが戦後だろうが、時代を超えて存在する「女子」特有の心情の駆け引きが全編を通して蔦のように絡まっており、主人公がその蔦に絡まって身動きとれなくなっていくようで、読んでいて疲れ果てた。一度読み出した本を放棄したくないから読み続けたが、もうこれ以上読みたくない、あと何ページで終わってくれるのと終始思わせる本だった。女子の心情といえば「細雪」もそうだが、谷崎目線で美化された女子の心の機微とは打って変わって、女性作家の描く女性のしつこさの何と疲れることか。同じ女子を経験したからこその、この疲れ、この嫌な感じ。

    この人の魂胆は…実は陰では…と思っては打ち消しする沙織。人を疑う自分を嫌だと思いながら、うまくいかない原因を探りたい。それに対して夫温彦の無関心さは、いわゆる「男性的」、本気で気にしていない態度そのもの。家庭がうまくいかないのはこういう無害に見えて自分中心の男のせいもあるのではないかと、彼の煮え切らない傍観ぶりに腹がたつが、逆に男性がこの本を読んだら「ハテナ」の連続だろうなあ。

全211件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

角田光代の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×