- Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620108094
作品紹介・あらすじ
「連続切断魔」の正体は?「悲嘆の門」とは何か?圧巻の終章に向けて物語は加速する!最高傑作誕生。このめくるめく結末に震撼せよ。
感想・レビュー・書評
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サイバーパトロール会社でアルバイトをしている大学一年生の孝太郎。ビルの屋上にあるガーゴイル像が毎日少しづつ動いているという話を調べ始める元刑事の都築。ホームレス失踪事件を調べていた孝太郎の同僚が姿を消し、調べを進めるうちに孝太郎はガーゴイル像に辿り着く。孝太郎と都築が出会い、そこから物語が始まっていく。
『言葉』と『人生のエピソードという物語』が生まれている世界があるという。言葉という見えないものが、けれど確実に積もり積もって人の心を侵食し、強すぎる渇望が人を飲み込もうとする時、とんでもない魔物が生まれる。
インターネットが普及して、これまで人類が使ってきた『言葉』が大量に溢れて制御がきかなくなっている。SNSに書きこむだけだから、匿名だから、垂れ流してるだけだからと。だけどそれは確実に書き込んだ本人の心に降り積もっていき、心を侵食するのだ。言葉という「想い」の重なりである、人の業。
かなり壮大なファンタジーで、途中から付いていくのが必死でした。そして、最後の方は複雑かつ難解で、私の中でたくさんの??が飛んでいました。ファンタジーは苦手じゃないけど、宮部みゆきのファンタジーは難しいなぁ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冒頭───
「お兄ちゃん、元気?」
だらしなく足を投げ出してテレビの前に座り、一美が問いかけてきた。
孝太郎はキッチンのテーブルにつき、天板の上に自分の両手を置いていた。指を動かしたり、握ったり開いたりする。その動きを目で追って、左目の状態を確かめていたのだ。
瞬きは普通にできる。すぐ目が潤むとか、逆に目玉が乾きやすいとか、痛みがあるとか、そんな問題は一切ない、ただ見えない。それも、瞳の奥に真っ黒な紙を貼り付けられたかのように、のっぺりと、暗いというよりはまさに黒いのだった。
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上巻の勢いにつられて、下巻に突入したのだが───。
うーむ。どうなのだろう。
物語が進むにつれてファンタジーの度合いが大きくなり、現実の事件との整合性を頭の中で理解するのが難しくなっていったというか。
基本的にファンタジーは得意な分野ではないので、実際の人間世界とSF的な不可視の世界を融合させるのに抵抗があるのですな、私の場合。
後半は、まさに「指輪物語」とか、そういう世界観になってくるので、読みにくくなってしまった、私の場合。
もちろんファンタジーが好きな人は、こういった展開になっても付いてゆけるのだろうが。
そんなわけで、孝太郎が「生きてゆくよ」と呟いても、あまり感動が湧いてこなかったです、はい。
やはり、宮部さんの作品では、リアルな人間世界の問題を奥深く追及した作品のほうが、私にはあってるなと思った次第です。
ではでは、さようなら。 -
火車的なミステリーかと思ったらファンタジーで拍子抜け。さきが気になる展開ではあったが、ファンタジーの世界観によく入り込めなかった、、、
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私がお腹に子を宿していた時のこと。ある日、造園業者さんが、周囲の5-6軒のお宅の植木の消毒をしにやって来ました。予約してあったことを知らなかった私は、当日、驚きはしましたが、家の中で過ごしていれば問題ありませんでした。ところが、隣家の奥さんが怒り出したのです。「Pさん(私のこと)は妊娠してるのに、事前に連絡もなく消毒薬を撒くなんて、常識がなさすぎる‼︎」と。そして業者に直接そう言って、苦情を申し立てたのです。私は別に何とも思ってないのに。業者さんもご近所の方だったので、それ以降なんかギクシャクしちゃって…正義感って、怖いですね。
昔の話はさておき、この本を読んで、正しい社会のために自分にできることは何だろう…と改めて考えるきっかけになりました。不穏な世の中ですが、出来るだけ穏やかに、真っ直ぐに、正しく過ごしたいです。 -
孝太郎の変化が心配で、痛ましくて。
優しくて、真面目だからこそだもの。
人の中には、いろんな自分がいるものだけれど。
終盤に向け、だんだん読むのが辛くなっていって。
言葉とか、概念とかについても、いろいろ考えてしまう。
でも、それでも、みんな、生きていくしかない。
ううん。
生きていくことができるのは、ありがたいこと。 -
連続切断魔「指ビル」の事件と、女戦士ガラとのダークファンタジーとの両軸で物語は回っていきます。
この部分は、「言葉の残滓」にあてられて辟易しました。
言葉は残る。言葉は消えない。そして溜まっていく。
山科鮎子の言う、単なる憂さ晴らしでも書き手の中に残って、溜まって、発言者を変えていく、誰も自分自身から逃れられない、というのは真理だと思う。
悲嘆の門への下りはすごいバッドエンドな予感で、えーってなりましたが、そこは戻って来れてよかったし美香が無事で良かった。
すべてが解決、万事OKってとはならないけど、それが現実的な落としどころだと思います。
ちょっと物足りない感じはしたけど。
真菜ちゃんの母親の言葉の残滓が温かく美しい光輪であることが、この物語の最も美しく優しいところです。
ここで全てが救われた気がする。
「英雄の書」の続編だということを読み終えてから知り、知っていればもっとファンタジー脳で読めたかも。
「英雄の書」の内容をもはや覚えてないのでどうしようもないけど、現実の物語にした方が読みごたえあったかも?