劉邦(下)

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  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108131

感想・レビュー・書評

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  • 面白かったです。久しぶりに貪るように最終巻まで読みました。やっぱり宮城谷さんの書かれる英雄は人間的で好きだな。劉邦の家臣達も、悪女と言われる呂皇后も、敵には冷酷だったという項羽も、それぞれに魅力的でした。若い頃の項羽なんてかわいい所あるな、と思ってしまいました。
    この小説は劉邦が大陸を統一して、一番輝かしい場面で終わります。良いところで終わったので読後感も爽やかでした。
    その後の行く末を知っている身としては未来を思って少々しょっぱい気持ちもわくのですが、それはまた別の話。

  • 司馬遼太郎の項羽と劉邦とはまた違った面白さでした。
    わりとあっさりした印象の作品です。

    統一後のドロドロした権力闘争を誰か書かないかな。
    あまりに幻滅なので、読む人は少ないかもしれないけど。

  • いよいよ下巻の戦いは、項羽軍と劉邦軍の戦いに集約されてくる。

    中巻で、章邯の圧倒的な大軍に少数で挑んだ項羽の、まさかの勝利が電撃的に伝えられる。奇跡的と思える勝利だが、項羽自身はこの勝利に自信があったのだろう。

    項羽軍の印象は、彼自身もその武将達も一騎当千の強者ぞろいという感じだ。相手が大軍であろうと、必ず一点を突き崩して、全体を壊滅に持ち込むというそういう印象だ。

    彼の軍の機動力は、常に「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」の精神に裏付けられている。負けることへの恐怖心が、闘争心を掻き立てているかのようだ。そしてまた彼らの勝利は、敗者の惨殺を意味する。まさに戦闘マシーンと化している。

    一方の劉邦の戦いには、喜怒哀楽がある。敗北には、全員の悲しみ、苦しみがあり、勝利には全員の喜びが伴う。彼らの勝利は、敗者をも味方とする。全く、項羽と対象的だ。

    しかしながら、戦闘能力では圧倒的に項羽が勝る。大敗して悲惨な姿で劉邦が敗走するシーンが何度も登場する。

    ついに広武山で、西の劉邦軍、東の項羽軍が対峙する。
    疲弊している項羽軍に、劉邦のほうから講和を持ち出す。項羽はその講和を受け入れる。(・・・アレ?こんな結末だっただろうか?と一瞬)。

    劉邦は、張良や陳平の言を取り入れ、講和の約束を破り、項羽を追撃する。これまで一度も包囲されたことのなかった項羽が、劉邦の漢軍、韓信の斉軍、彭越の魏軍、周殷軍、黥布軍に包囲される。敵陣から楚の歌が聞こえる。

    項羽は詠んだ。
    「漢兵すでに地を略し 四方楚歌の声 大王意気尽く 賤妾なんぞ生を聊わん」

    戦いを制し、劉邦は詠んだ。
    「大風起こりて 雲飛揚す 威海内に加わりて 故郷に帰る 安にか猛士を得て 四方を守らしめん」
    皇帝になった劉邦が、その7年後に故郷の沛県に帰った時に詠んだという。崩御の6ヵ月前のことだそうだ。

    宮城谷氏は、無味乾燥とも感じられる司馬遷の「史記」などを、こうして読者のために感情を移入して楽しめる小説に変えてくれたようだ。面白かったです。感謝。

  • 久しぶりに宮城谷さんの小説を読みました。いつ読んでも、何を読んでも面白い!

    後書きで宮城谷さんが書いていたこと、項羽には親近感があったけど劉邦は鋤になれなかった、というのはまさに私もそれで、どちらかというと項羽の方が好きでした。
    今もそれは変わらないのですが、この小説を読んだら劉邦への見方も少し変わりました。劉邦が天下を取れて、項羽が取れなかったというのはやはり項羽に足りないものがあった、ということなのだろうと改めて考えました。

  • 前に読んだので感想は特になし。あまり印象に残っていない。

  • 七十余戦負けたことがなかった項羽が、初めて敗れた時が命を落とすことになったのに比べ、劉邦は幾度となく楚軍に敗れながらも最後は天下を取る。運と人間力の違いをまざまざと感じる物語である。

  • あとがきをよんで納得
    筆者の「香乱記」を読んで劉邦が嫌いだ、と思った。この本の後書きで筆者は「筋が通らない劉邦は嫌いだった。」とあり納得した。
    しかし、司馬懿が裏切りったとき「われはあなたを裏切ったかもしれないが、国家を裏切ったわけではない」といったことから、劉邦を再評価したことに納得した。ただ、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」から育ったので神秘的な劉邦はちょっと首をかしげた。人物の過去、思考を重視するので速読には向かず、戦闘シーンは北方謙三と真逆でさらっとしすぎているので、星一つ減らして星4つとしました。個人的にはこの本の醍醐味は「香乱記」を読んだ後、本書を読み、後書きを読むことでさいこうのあじがでるということです。では。

  • 最後になって〝先生〟っぽくなちゃった。史記にはこう書いてあり,漢書にはこうかいてあるが,どういうことか判断つかないってね~楚は趙を救いに秦の1/10の兵で向かいこれを撃破し,碭に留まっていた劉邦にも征西の要請が届く。劉邦は,まっすぐ北へ向かわず,北の昌邑を攻めるが果たせず,酈食其の手引きで陳留に招かれる。開封から白馬へ進み,潁川郡と張良と再会を果たし,兵数は2万に,南陽で3万に,宛で7万5千に達する。南に迂回し,胡陵から武関に進み,

  • 劉邦という自分を著者なりに分析し、理解し、消化している。劉邦はある意味で、単純であるように見えて、理解しにくい点がある。漢帝国の建設という偉業を達成できたのは、国家に平和と安定を求める才能ある人々が劉邦と言う乗り物をうまく利用したのかもしれない。

著者プロフィール

宮城谷昌光
1945(昭和20)年、愛知県蒲郡市生れ。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。91(平成3)年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞。94年、『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、2000年、第三回司馬遼太郎賞、01年『子産』で吉川英治文学賞、04年菊池寛賞を受賞。同年『宮城谷昌光全集』全21巻(文藝春秋)が完結した。他の著書に『奇貨居くべし』『三国志』『草原の風』『劉邦』『呉越春秋 湖底の城』など多数。

「2022年 『馬上の星 小説・馬援伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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