マチネの終わりに

著者 :
  • 毎日新聞出版
3.93
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本棚登録 : 6816
感想 : 819
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620108193

感想・レビュー・書評

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  • 久々に世界観が好きな本でした。
    20歳の時に読んでたらまた、少し違った印象だったなと思ったり。でも、いろいろ勉強になったかなと思ったり。
    今30歳の自分は、共感できる部分も沢山あった。
    でも、大人になったからって、いろいろ偏見もどきを思い込んでたけど、
    年齢関係なく心が動く。いつの時代もどんなに変わっても一緒なんだなって思いました。
    いろんな人間関係、家族があって、
    少しは捉え方が変わった。
    過去の後悔も、今も未来も変わっていくのが
    しみじみと心に沁みた。
    過去の自分なら早苗のした事に勘付いて
    恐れてしまってた。
    私にはできない。
    そして、これが運命でないと言い聞かせてた。
    この小説の2人はお互いの気持ちが繋がった。
    洋子さんは努力家のスマートな人なんだよって早苗に言いたくなった。
    早苗の罪悪感を自己で消化してるところが、
    世間はこんな女の人の方が多いんだろうかって、
    自分の欲が優先なんだろうかって思った。
    知的な女性は凄く魅力的だった。

  • 『感想』
    〇大人の恋愛小説。すれ違いが続くある意味定番な話なのだが、この小説は心に落ちた。

    〇過去は変えることができる。もちろん事実は変えられないが、その理由付けは未来からも変えられるのだ。つらいことは時間をかけてでも美化していかないと自分の精神が持たない。それが人間の脳の力なのだろう。

    〇進むことができる道がいくつもあるとき、意を決してどれかに進むしかないが、途中誰も正解の道ではないと教えてはくれず、後戻りもできない。だから進んでいる道を、選んだ人が正解にしなければならない。言い換えれば間違いだと感じるわけにはいかない。

    〇自分が進んでいる道は、自由意志で決めているのか、それとも運命として誰かに導かれているのか。自分で決めているのなら自分で責任を取らなければならない。運命として誰かが決めていてくれるのなら、責任もその誰かに押し付け、自分は楽になることができる。

    〇自分の意志で決めているつもりでも、運命を感じる瞬間はある。特に人との出会いは自分以外の誰かに必然として与えられているのかもしれない。だから喜びも苦しみも大きい。

    『フレーズ』
    ・人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?(p.29)

    ・陽子は自分が、出口が幾つもある迷宮の中を彷徨っているような感じがした。そして、誤った道は必ず行き止まり、正しい道へと引き返さざるを得ない迷宮よりも、むしろ、どの道を選ぼうとも行き止まりはなく、それはそれとして異なる出口が準備されている迷宮の方が、はるかに残酷なのだと思った。(p.182)

    ・その偶然を、まるで必然であるかのように繋ぎ止めておくために、人間には、愛という手段が与えられているのではないか。(p.302)

    ・相手のことを心から愛せないという以上に、相手と一緒にいる時の自分を愛せないというのは、互いにとっての大きな不幸だった。(p.309)

    ・自由意志というのは、未来に対してはなくてはならない希望だ。自分には、何かができるはずだと、人間は信じる必要がある。そうだね?しかし洋子、だからこそ、過去に対しては悔恨となる。何か出来たはずではなかったか、と。運命論の方が、慰めになることもある。(p.368)

  • お洒落な表現の連続で、日本語が美しい。いろいろな愛の形が美しい。大人な魅力の詰まった本。

  • 読後の感想をうまくまとめることができません。
    丁寧な人物描写や十分に下調べや聞き取りから書かれた時代背景、そして哲学、音楽、芸術を織り交ぜた作品であること。
    一度の読書では理解が足りないため、読み返す必要が生じています。
    そして誰かと語りたい。

  • 主人公2人の知性や情熱や、彼らを取り巻く環境への順応の苦慮なんかが細やかに丁寧に描かれていたように思う。
    いい小説って自分がさも登場人物でいるかのように一緒になって苦しんだり、喜んだりできるものだと信じているんだけど、この小説まさにその通りで、彼らに待ち受ける運命の残酷さに自分も一緒になってもどかしい気持ちにさせられた。

    未来の言動によって過去は簡単に変わっちゃうんだって言葉がすごく心に響いた。

    辻仁成・江國香織の「冷静と情熱のあいだ」が好きなんだけど、個人的に雰囲気が似ててそれを思い出した。

  • 余韻がすごい。読むのをやめられないけれど苦しくて苦しくて。理不尽さにこんなにもやりきれない感情が起こるのは私の心が成熟していないからだろうか。出来得る中での最大限の幸せを願う。

  • 大人の高尚な恋愛。
    この2人を通して見る世界が美しかった。

    物語のその後も気になる。

  • ギタリストの男性とジャーナリストの女性が出会ってから恋に落ち、あることがきっかけですれ違い別れを迎えるという一見ありふれたストーリーですが、物語の本質はここではない気がします。

    正直難解で、芸術の話や、戦争の話の部分はなかなか読み進めることができず時間はかかりましたがとても贅沢な読書ができたような気がします。
    二人が過ごした時間はほんの少しなのですが、無理なく恋情が読者に伝わってくるのは描写がとても丁寧だから。心に深く感じる言葉がいくつもありました。
    この物語の二人の恋は芸術として考えれば昇華されたんじゃないかな。

    個人的には、婚約者がありながら偶然出会った人と激しい恋に落ちた経験(一緒にするなんておこがましいけれど)があるので、なんか救われた気がしました。自分が昔から思っていることを理解してくれる人、自分が思っているような答えを返してくれる人って思っちゃったら、恋に落ちるのなんてあっという間でしょ。過ごした時間なんて関係ないんですね。


    未来は常に過去を変えている。結婚して子どもも生まれた私ですが、今でもあのとき彼を選んでいたらどうなってたんだろうって考えてしまう。この先どんな生き方をすればこの思いを変えられるんだろう。

  • 2017年5冊目。

    蒔野聡史と小峰洋子の5年半(2006年~12年)を美しい言葉で紡いだ物語。

    阿諛する、醇化、無音など、語彙の乏しい私はこちらの作品で初めて知りました。
    畢竟も出てきて、夏目漱石を思い出し、夏目漱石といえば「こころ」
    三谷の暗躍するさまは「こころ」の先生のようでした。

    バグダッド、パリ、ジュネーヴ、ニューヨーク、東京と、世界をまたにかけて活躍する蒔野と洋子。
    洋子の目を通して語られるバグダッドの様子は、音もにおいもまとわりついてきそうなほどリアル。

    所々登場する小物の固有名詞(リーン・ロゼのトーゴ、Green & Springのバスオイルなど)が気になり、インターネットで探しました。
    好きな作品に出てきたものは使ってみたくなります(^^)
    だから、CDはとてもありがたかった。
    文庫本を手元に置いておきたいので、ぜひ文庫化してください(毎日新聞出版の単行本はどちらから文庫化されるのだろう?)

    互いに、相手と過ごしているときの自分を心地よく感じていた蒔野と洋子。
    そういう相手の手は決して離してはいけない。

    • まきとさん
      小峰洋子ですよ。小物の固有名詞を検索されましたか。没頭されてましたね。
      小峰洋子ですよ。小物の固有名詞を検索されましたか。没頭されてましたね。
      2020/06/30
    • ちゃばさん
      まきとさん、はじめまして。

      あっ、そうでした。小峰……
      固有名詞を間違えるとは(><)
      御指摘ありがとうございます。
      修正いたします。
      まきとさん、はじめまして。

      あっ、そうでした。小峰……
      固有名詞を間違えるとは(><)
      御指摘ありがとうございます。
      修正いたします。
      2020/06/30
  • 前半は淡々と読み進めていたが、後半からの急展開、胸が締め付けられるような感覚、苦しい。
    この気持ち、誰かと分かち合いたい。

著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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