すごいトシヨリBOOK トシをとると楽しみがふえる

著者 :
  • 毎日新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784620324586

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  • 有り F/イ/17 棚:29〜30
    音羽

  • ドイツ文学者の著者による、老いについてのエッセイ。

  •  著者はカフカやゲーテの翻訳者としても知られるドイツ文学者。生まれが母親と同じ昭和15年ということで、自分の親の「老い」に関する認識はいかがなものかを確かめようかなと読んでみた。
     が、ある意味、自分がこれから行く道の準備を進める上でも、ほどよい指南書にもなっているかなという気がして、己の「老い」も認識したりして(笑)

     書籍紹介サイトに担当編集者の言葉として
    「読者の半数が女性なんです。驚きました。昔の肩書きや人脈から離れられない、自立できない男性たちへの先生の厳しい視線が、共感を呼んでいるのかもしれませんね」
     と、著者と同年代でもなく、あるいは同性でない読者が興味を示しているというのも面白い。

     著者が70歳を迎えるにあたり「自分の観察」にとつけ始めたメモが元になっていて、著者なりの「老い」を楽しむ秘訣のようなものが披露されている。
     とはいえ、それほど新しいこともなく、要は無理して抗わないというのが、老いを楽しんでいる人の共通項かなというところ。著者も、

    ”老いに「抗う」のではなく、老いに対して誠実に付き合うこと。”

     と記し、

    ”自分の老いに関して、自分以上のスペシャリストはいない”

     と意気揚々。

     70歳以降のメモとのことだが、今の自分でも役立つ指摘もある;

    「一度、一方的に流されてくる情報を遮断してみる。自分が本当に興味があるものは、遮断しないとわかりません。テレビの持つあの非常に安っぽい情報、安っぽい娯楽、安っぽい教養、そういうものは一度、拒否してみていいんじゃないか。」

    「元同僚、元同窓といった「元」が付く人たちとの縁も遮断する。懐かしいとは思うけれど、昔話からは何も始まらない。いったん、過去に見切りをつけることです。」

     役立つもなにも実践しているし、ほどほどにと心がけていることでもある。

     読み終わったら著者と同じ歳生まれの母親に回そうと思っている。著者が病身の母親を自宅に呼び戻して看取った時のエピソードなども、心温まって良い。

    ”そろそろ危ないんじゃないかって医者が言うから、横に蒲団を敷いて、親孝行のつもりでね、でも退屈だから電気をつけて本を読んでいたら、
    「オサム、そんなので読むと目が悪くなるよ」
    「うるさいな、もう!」
    受験生の頃と同じになっちゃってね。”

     ドイツ文学者だけに、ドイツ語にまつわるこんな引用も面白かった。

    ”ドイツ語に「眠りは短い死、死は長い眠り」という言い方があります。死は長い眠りですから、短い死を経験しておくと、長い眠りのコツがわかっていいかもしれませんね。”

  • 池内氏がNHKラジオでの「著者からの手紙」コーナーに出ていて(2017年11月)、この本の内容について77歳の今の生活を語っていた。それがなんだかおもしろく、あったかくて楽しそうだった。

    現在77歳の池内氏。老いは70歳を境に急速に現実化したが、目を背けず、現実を楽しむことだという。
    人生に行きと帰りがあれば50歳あたりで下り坂。しかしリタイア後のこの下り坂が楽しくないと、せっかく生きてることもとてもつまらなくなるという。しかし季節は冬が来たら次は春が来るが、人生の残念な点は、春はもう来ない、というのが老いの無慈悲なところだとのたまう。

    本はラジオの語りがずっと続く感じ。「二列目の人生」 や「世紀末と楽園幻想 」 などを読んだことがあり、ドイツ文学者として多数の著作があり、仕事も十分にやったとはた目には見えるが、それでもなお、楽しみを見つけて老いの人生を楽しんでいる池内氏。

    老人になると体力的にも記憶力的にも劣ってきて、「深海魚」だという。「深海魚」は水圧のために目玉が飛び出たり、口がカーッと開いてたりするが、歳月も深い海と似て、長生きをしてくると過去の重荷で体が曲がったり、顔が歪んだりしてきたりする、と。新しい言葉や考え方に馴染めない、考えや判断の基準が古い、「ああ、これが老いなんだ」と見極めればいいのです、という。

    自分に対しての心得、としても読めるが、配偶者に対しての心得としても役に立つ。心得てれば一緒にいる時間の長くなった分目立つ気になる点も、やり過ごせる。

  • 著者は1940年生まれだから私より7歳年長。
    その方が書かれた生き方実践本。
    あまり印象に残るような記述は残念ながらなかった…。

著者プロフィール

1940年、兵庫県姫路市生まれ。
ドイツ文学者・エッセイスト。
主な著書に
『ゲーテさんこんばんは』(桑原武夫学芸賞)、
『海山のあいだ』(講談社エッセイ賞)、
『恩地孝四郎 一つの伝記』(読売文学賞)など。
訳書に
『カフカ小説全集』(全6巻、日本翻訳文化賞)、
『ファウスト』(毎日出版文化賞)など。

「2019年 『ことば事始め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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