- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784620327501
感想・レビュー・書評
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戦争で一番最初に犠牲になるのは真実である。
中々痺れるこの一文から始まる。いやしかし、戦争で奪い合うものが「支配権」である以上、真実は領土と共に収穫の一つとなる。WGIP、勝てば官軍。我々は勝者の歴史観を生きている。
オシントとは公開情報に基づくインテリジェンスのこと。例えば、世界中にメンバーが散らばる調査集団ベリングキャットは、オシントの新しい地平を切り拓いた象徴的な存在。オープンソース調査の基本動作であるジオロケーション。動画が撮影された場所を手探りで検証する。ディスインフォーメーション、いわゆる偽情報による人心操作が盛んになる中、自衛の必要性も高まる。
陰謀論。そうした動きが最近の分断にも繋がる。ウクライナ侵攻を巡る親ロシア的な主張と反ワクチンを拡散する層が重なるらしい。それより私が気になるのは、反ワクチンと一括りにし、高度な反論と低質な反論をごちゃ混ぜにして、同じレッテルを貼り異端扱いしてしまう事。賛否両論に情報操作が働く。まるでスノーデンの時と同じだ。
公開情報を活用する、とは、それを分析して自らの判断に活かす事のみならず、撹乱して相手の判断を乱す事も含む。何が正しいかはいつの時代も作為的だ。だからこそ、刹那に通り過ぎる情報以上に古典として残る書物による基軸を観察眼としてもっておく事が重要なのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
東2法経図・6F開架:007.3A/Ma31o//K
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「オシント」とは、公開情報に基づく情報収集・分析のこと(OSINT: Open Source Intelligence)。戦争犯罪やフェイクニュースなどを暴く上で、今注目されている分析手法だ。この最前線を、毎日新聞記者がレポートする。
序章 ウクライナ侵攻とSNS時代の「情報戦」
第1章 べリングキャットの衝撃
第2章 「隠れ株主」中国を探せ
第3章 市民もオシント
第4章 ワクチンめぐるデマも拡散
第5章 迫る「ディープフェイク」の脅威
第6章 公開情報を分析せよ 動き出した政府 -
2021年末から22年初の新聞連載が元。べリングキャットが手掛けた伝統的安全保障。中国政府に繋がる隠れた株主を探る。ビジネス上のサプライチェーンや環境、人権監視、自然災害の被災状況把握のためのネット、AI、衛星画像情報活用。ロマンス詐欺や反ワクチン、Qアノン等のネット偽情報拡散。ディープフェイク技術。発展途上の日本政府情報部門の取り組み。「オシント」の語から一般に連想されるよりも幅広い内容だ。
本書の終わりでは国の情報機関に情報公開を求めている。情報収集と自由や人権のトレードオフ関係や、情報機関の民主的コントロールは一般に指摘されることだ。一方で、現在の報道機関の機能や役割といった自省的視点がないのが気になった。本書では、普段の取材では少なからずドラマ性を探す、ドラマ性のなさを残念に思った、との記述がある。このようなドラマ性重視の報道が真実を歪めることはないのだろうか。 -
2022年11月号
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オシント、近い将来手法が標準化され、企業のESG評価などのセルフチェック、外部機関による客観チェックに活用されていくのだろうか。