- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784621089323
感想・レビュー・書評
-
海から陸へ、生物の進化の謎を解く鍵として注目される、陸上生物の四肢への変化の元になったような、根本が太いヒレを持ち、今も存在し続けているシーラカンスや肺魚。
本書は、シーラカンスや肺魚のDNA解析をきっかけとしながらも、本質的にはDNA・ゲノムDNAにもとづいて生物35億年の進化の歴史をたどる壮大な一冊です。
科学者である著者が、その専門知識に基づきながらも、一般の我々にとても分かりやすい文章で、進化の要因・しくみ・歴史について、教えてくれます。
本書の最終章(5章)では、「恐竜滅亡後の世界」と題して哺乳類、特に我々ヒトの進化の歴史について触れていますが、科学者である著者の本章での言葉が印象的でしたので、以下にご紹介させて頂きます。
【本書抜粋 大石道夫】
現在の地球上にいるさまざまな人種は、たかだか約20万年のあいだに生じてきたとすると、我々ヒトの祖先がこの20万年のあいだに、一世代を30年とするとせいぜい数千世代のあいだに、ゲノムDNA上に変化が起き、現在地球上にいる多くの人種の顔つき、肌や髪の色の違いを示すようになったと考えられる。
いっぽう、わずか20万年のあいだにゲノムDNA上に起こる変化は非常に少ないために、見かけ上はともかく地球上の人種間の生物的な違いは小さい。DNAからみると我々ヒトは生物としてほぼ均一に近い。
もちろん、人種、民族間の宗教の違いなどあるが、これはDNAとはまったく関係ないものである。すなわち、我々のさまざまな人種は、基本的には同じ知的、身体的能力を持った生命体と考えてよい。
(中略)このように現在の人種が確立するのにわずか20万年しか時がたたず、ネアンデルタール人などの旧人との遭遇も比較的最近で、人種間のゲノムDNAの違いがきわめてわずかであることは、我々にとって人種間の調和という点だけみても大変幸運なことであったと言える。
---詳細をみるコメント0件をすべて表示