最終講義―分裂病私見

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  • みすず書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622039617

感想・レビュー・書評

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  • 分裂症では身体は正常なのに、その回復期には身体異常になるというのがとても印象に残った。
    まさに心身は表裏一体ということか。

  • 最終講義―分裂病私見
    (和書)2009年01月27日 23:11
    1998 みすず書房 中井 久夫


    分裂病(統合失調症)に対する姿勢がとてもよく現れていました。患者に対する医者としての姿勢などとても明確に書かれていて精神科医を目指す人には参考になると思いました。

    患者(統失患者)に対する分析又は批判(吟味)はとても詳細に(繊細に)されていて病気として成立する理論的根拠などに対する根本的批判(吟味)の姿勢が存在しています。そこが読んでいて救いになると感じました。

    この本では患者ではない人(所謂健常者)に対する姿勢に触れられていませんでした。

    自己同一性の幻想に固執するという分裂病者への指摘などありましたが、非分裂病者はどういった精神的姿勢をしているのだろうか?木村敏のアンテ・フェストゥムを指摘してしましたがそれが病気として成立するためにはどういった囲い込みがされるのだろうかなどが面白いところだろうと思います。

    柄谷行人は自己同一性の幻想が失われると深刻な病(統合失調症)になると指摘している。彼は事後の立場に立つことと事前の立場に立つことを同時に指摘している。私は自己同一性の幻想を事後の立場から立って見てしまうことが統失になる理由の一つだろうと感じている。それを事前の立場に立ってみることができればそれは反省的又は自由・倫理という言葉で表すことができる存在になるのではないかと感じました。

    木村敏のアンテ・フェストゥムによれば事前の立場に立つことは分裂病(統合失調症)の精神的姿勢と言うことになるけれどそこを分裂病者(病気として囲い込まれた者又は病気として成立する理論的根拠を適用された者)と非分裂病者との違いは何処にあるのかが追求されれば面白いところだろうと思った。分裂病(統失)親和性と言われる姿勢を持った人とそうでない人との違いなど面白い指摘が幾つもありました。

    そこら辺をこれから追求してみようと思いました。

  • 医療という名の人間との対話だなぁ。
    こういった症例を間近で見たことが無いもので何処か遠くの話に聞こえてくることは否定できないが、まぎれもない現実であり、関わる方々全ての苦闘は当方の想像もつかないものであることが良く分かる。
    それにしても本棚にあった本書を再び手に取ってみたのですが、その昔何をきっかけにしてこの本を手にしたんだろう?しかも新刊で購入している模様。
    特別この分野に関心がある訳でもなく、まさに偶然の出会いだったんだろうな、と感慨に耽っております。

  • 神戸大学医学部退官時の講義のために準備した文章が元となっている。
    94ページまでがその時の文章で、残りは図表と解説になっている。
    統合失調症に関する知識の増加を狙って読むというのではあまり期待できない。
    知識の増加という意味では、下痢などの身体症状が出るのは回復の兆しだという事を知る事ができた。
    科学が一回性の現象や一つしかないものも扱うという言及は、世間の「理系的知に対する批判」の多くと違い同意できるものだった。斎藤環の著作に「恋はこの私のこの相手に対する現象だから恋愛の科学はありえない」というような事を言っていたが、それなら、「特定の山の雪崩に関する知識は他の山の雪崩に関する知識として使えない」というような事になるのでは、というような事が思いつく。
    自らの症状をまとまった言葉で語る事ができるのは、症状を対象化している状態だから、少し症状がおさまってきた状態だというのも同意できる。

  •  分裂病専門の医師・研究者である中井久夫の、大学での最終講義という儀式の講演を一冊にまとめた本である。木村敏の現象学的分裂病論に親しい自分にとって、分裂病の様々な症状と身体の経緯などの詳述は、たいへん示唆に富むものであった。やはり実際の臨床現場においては、ハイな「理念型」だけではなく、こういう風に実際的な観察をしていかないといけないんだな、ということを身にしみて僕に自覚させる一冊であった。著者は非常に、熱心な医師であり、その一生懸命さには尊敬を覚えさせるだろう。専門的な本だから、自分にとってはけっこう窮屈であったため、星2つにしてしまった。
     2009.1.30-31.

  • 色々と逸話のある久夫さんの本。サリヴァン読まなきゃな。

  • O先生が勧めてくれた本。長いことお蔵入りだったけど、時間が出来たので取り出して読んでみた。著者は精神科領域では大変有名なDr.でして、分裂病と言う呼称こそ今では過去のものとなりましたが、この領域の疾病を持つ方々と著者の歩んできた道のりに思いを馳せました。こういう本を読むたびに「自分はなんてちっぽけなんでしょう…」と軽く凹みます(笑)

  • 絶対に読め。

  • 中井久夫先生の最終講義の逐語録。先生の研究の概略が一般の人にもそれなりにわかりやすく書いてあるので、これから中井先生の本を読むという人にお勧め。

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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