最終講義―分裂病私見

著者 :
  • みすず書房
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本棚登録 : 276
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (159ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784622039617

作品紹介・あらすじ

「分裂病は、私の医師としての生涯を賭けた対象である」30年間を分裂病の治療と研究に尽してきた精神科医が語った最終講義。信頼と責任と知恵をつたえる。

感想・レビュー・書評

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  • 著者のエッセイで精神科医としての仕事ぶりも垣間見てはいたが、こちらはより生々しくその様子が伝わる。個々の症例にある回復までの長い道のり、または予後の悪かった患者たち

    昨日、たまたま電車で隣に意味不明の独り言を繰り返す男性と乗り合わせた。あれもこうした困難を抱えている人なのだろうか。もしそうだとして、中井のような救いの手は差し伸べられているのだろうか

  • ・色々なところで名前を聞くからすごい人なんだろうな〜と思って、なんとなく手に取ってみる。という生半可な理由からでも読んだ自分を褒めたい。後半は添付資料(図)なので、実際の文章は半分ほどの100ページくらい。だけど濃い。無駄がない。


    ・特に刺さったのは以下の文。
    ーー分裂病のどこかに「ふるえるような、いたいたしいほどのやわらかさ」を全く感じない人は治療にたずさわるべきでしょうか、どうでしょうか。実際患者であろうと医者であろうと「心の生ぶ毛がすり切れた人」は本人も不幸ではありますが、周囲の人もそういう人とつき合いたいでしょうか。ーー
    読者(受講者)に投げかけてるのはこの部分だけだけど、だからこそ筆者の強いメッセージを感じてしまう。


    ・相手のしんどさを理解するだけじゃなくて、第三者にもわかるようにするのがプロなんだと思うけど、そういう意味で中井先生は本当にすごい。分裂病のしんどさが「なんか分かるかも」ってなる。



  • みすず書房
    中井久夫 最終講義

    1997年に大学で行われた 分裂病(統合失調症)の最終講義。講義というより臨床記録であり、個別研究から得られた治療の一般モデルにも思う。治療経過図や症例比較もあり、素人でも理解できる構成


    「病気は、人生の仕切り直しの機会」は名言


    著者は「分裂病をマインドコントロールに対する防衛」と考えており
    「睡眠、夢、心身症が分裂病から人間を護っている」としているが、現代の主説はどうなのだろうか?


    「分裂病の回復は〜山を下りるときに似ている〜病いが始まった時は 患者はすでに山頂にいる。ひとりで下りられない山頂〜四方が断崖の絶頂にいる」





































  • 2023年5月
    少し前まで治らないと思われていた統合失調症(分裂病)について、治ると表明し、治るまでのイメージを示す。
    20年前、この本の「最終講義」がなされた頃、大学でわたしの受けた心理学の講義では統合失調症は予後不良であると習った。
    あの頃は過渡期だったのだろう。治ると言う人はいるが、治ったという元患者を見たことがない、みたいな。
    治るという案外地味な過程を丁寧に語り、治療者にイメージさせる。患者にとっても治療者にとっても光のような本だと思った。

  • 100分de名著より。専門的。

  • 100分で名著で説明されている本である。本文を番組では朗読しているが、それだけではなく、患者が書いた絵の説明が丁寧であり、さらに患者の状態を説明したグラフが丁寧に解説している。

  • NHK100分de名著:12月放送
    摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99694302

  • 分裂症では身体は正常なのに、その回復期には身体異常になるというのがとても印象に残った。
    まさに心身は表裏一体ということか。

  • 最終講義―分裂病私見
    (和書)2009年01月27日 23:11
    1998 みすず書房 中井 久夫


    分裂病(統合失調症)に対する姿勢がとてもよく現れていました。患者に対する医者としての姿勢などとても明確に書かれていて精神科医を目指す人には参考になると思いました。

    患者(統失患者)に対する分析又は批判(吟味)はとても詳細に(繊細に)されていて病気として成立する理論的根拠などに対する根本的批判(吟味)の姿勢が存在しています。そこが読んでいて救いになると感じました。

    この本では患者ではない人(所謂健常者)に対する姿勢に触れられていませんでした。

    自己同一性の幻想に固執するという分裂病者への指摘などありましたが、非分裂病者はどういった精神的姿勢をしているのだろうか?木村敏のアンテ・フェストゥムを指摘してしましたがそれが病気として成立するためにはどういった囲い込みがされるのだろうかなどが面白いところだろうと思います。

    柄谷行人は自己同一性の幻想が失われると深刻な病(統合失調症)になると指摘している。彼は事後の立場に立つことと事前の立場に立つことを同時に指摘している。私は自己同一性の幻想を事後の立場から立って見てしまうことが統失になる理由の一つだろうと感じている。それを事前の立場に立ってみることができればそれは反省的又は自由・倫理という言葉で表すことができる存在になるのではないかと感じました。

    木村敏のアンテ・フェストゥムによれば事前の立場に立つことは分裂病(統合失調症)の精神的姿勢と言うことになるけれどそこを分裂病者(病気として囲い込まれた者又は病気として成立する理論的根拠を適用された者)と非分裂病者との違いは何処にあるのかが追求されれば面白いところだろうと思った。分裂病(統失)親和性と言われる姿勢を持った人とそうでない人との違いなど面白い指摘が幾つもありました。

    そこら辺をこれから追求してみようと思いました。

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著者プロフィール

中井久夫(なかい・ひさお)
1934年奈良県生まれ。2022年逝去。京都大学法学部から医学部に編入後卒業。神戸大学名誉教授。甲南大学名誉教授。公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構顧問。著書に『分裂病と人類』(東京大学出版会、1982)、『中井久夫著作集----精神医学の経験』(岩崎学術出版社、1984-1992)、『中井久夫コレクション』(筑摩書房、2009-2013)、『アリアドネからの糸』(みすず書房、1997)、『樹をみつめて』(みすず書房、2006)、『「昭和」を送る』(みすず書房、2013)など。訳詩集に『現代ギリシャ詩選』(みすず書房、1985)、『ヴァレリー、若きバルク/魅惑』(みすず書房、1995)、『いじめのある世界に生きる君たちへ』(中央公論新社、2016)、『中井久夫集 全11巻』(みすず書房、2017-19)

「2022年 『戦争と平和 ある観察』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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